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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-204 恋色に染まる新年祭(2) scene.9

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


 アインスとのデートコースは『ホワイト・ローラーコースター』と『スプラッシュ・トレイン』――どちらも絶叫系で、人気のアトラクションなので並び時間も長くなる傾向にある。

 とはいえ、今はまだ空いている時間。問題は『スプラッシュ・トレイン』の方の行列になりそうだねぇ。……まあ、それでも二個目のタイミングで『スプラッシュ・トレイン』に乗るよりはマシなんだけどねぇ。


 途中で買ったチュロスを食べながら待つこと三十分、『ホワイト・ローラーコースター』の乗り口に到着した。

 テーマパーク「アンダーグ・ランド」の初期からあるアトラクションだけど、視察の後のブラッシュアップの際にかなり手が加えられていて、シンプルなジェットコースターの中では最もスリルがあると評判になっているらしい。

 実際、凄まじい絶叫がこの出発地点に居ても聞こえてくる。……リニューアル前の時点でもアスカリッドは意識を飛ばしていたみたいだし、リニューアル後のアトラクションなら秒で意識を飛ばすんじゃないかな?


 ボク達の番になったのでアインスと共にジェットコースターに乗り込む。出発から一分後にはジェットコースターが屋外へと飛び出し、外に出ると同時に一気に急上昇を始めた。


 パークのエリアは全て元々洞窟であったところを切り開く工事を経て巨大な吹き抜けになっている。夜は満天の星空とライトアップされたパークを楽しめるんだけど、昼間は昼間で澄んだ蒼穹とキャストやゲストが行き交うパークという絶景を味わうことができる。……まあ、意識を飛ばさなければ、だけどねぇ。


 『氷炎の大山脈〜Photoros Dragon Legend〜』との差別化の点は、この絶景にあると言っても過言ではない。……『氷炎の大山脈〜Photoros Dragon Legend〜』の場合は外も作り込まれているからあんまりパークの方に視線を向けることがないからねぇ。まあ、意識すればパーク内で最も高いエリアから絶景を一望することができるんだけど。

 この点、『ホワイト・ローラーコースター』は基本的には急上昇、急降下、縦大回転などの仕掛けが施されたレールのみとシンプル。圧倒的な疾走感とエリアの絶景を味わうという意味では『ホワイト・ローラーコースター』の方が良いかもしれない。


 ちなみに、手が加えられた『ホワイト・ローラーコースター』はエリアを丁度一周する作りになっていて、途中で一瞬だけど『氷炎の大山脈〜Photoros Dragon Legend〜』の山に掘られた洞窟を通ることになる。運がいいと『氷炎の大山脈〜Photoros Dragon Legend〜』のコースターともすれ違うことがあるんだよねぇ。

 これはエリアを一周ぐるりと回る際に少しだけショートカットしつつ、ちょっと違う味わいを出したいという要望がパーク側からあって提案したものなんだけど、この影響か『氷炎の大山脈〜Photoros Dragon Legend〜』や『ホワイト・ローラーコースター』に乗った客がそのまま逆のアトラクションに行くというケースが増えているらしい。我ながら良い改良だと思っているよ。


 最後の落下は『氷炎の大山脈〜Photoros Dragon Legend〜』に劣る設定とはいえ、『ホワイト・ローラーコースター』は総合的に見ればかなりハードなアトラクションに仕上がっている。

 「キャー!!」という絶叫がデフォルトになっているけど、ボクとアインスは平然と疾走感を満喫し、風を感じながらパークの絶景を満喫した。


「圓先生、これって夜に乗ったらどんな感じなんだろう?」


「夜景もなかなか綺麗だよ」


「パレードをレストランで見てから、もう一度ルーネスお兄様とサレムお兄様とも一緒に乗ることってできないかな?」


「時間的には大丈夫だと思うよ? ただ、『氷炎の大山脈〜Photoros Dragon Legend〜』もなかなか捨て難いからねぇ。あっちはあっちで夜だと大分雰囲気変わるし。レストランで食事をしながらルーネスさんとサレムさんとも相談して決めたらどうかな?」


「そうするよ! ちなみに先生はどっちがいいと思っているの?」


「うーん、どっちも甲乙付け難いからねぇ。こっちって決め切ることはできないかな?」


 時空魔法を使えば二つとも行けるとは思うけど、そこまでやっていると際限がないしねぇ。


 続いて、『スプラッシュ・トレイン』へ。予想通りかなり混んでいたけど、何とかレストランの予約に間に合うタイミングで乗り込むことができた。ここからパレードが始まるまでは恐らくかなり混むからねぇ、『氷炎の大山脈〜Photoros Dragon Legend〜』や『ホワイト・ローラーコースター』を先にしておいて本当に良かったねぇ。


 『スプラッシュ・トレイン』は水列車と呼ばれる電車型のライドに乗り込んで川に敷かれた線路を進んでいく。『ホワイト・ローラーコースター』みたいな縦一回転や急旋回はないものの、最後のエリアには三段の滝による連続急降下と、安心したところに追加で仕掛けてくる死角と霧による視界封じによって徹底隠蔽された最後の落下が用意されていて、総合的に見れば『氷炎の大山脈〜Photoros Dragon Legend〜』の最後の落下を超えるインパクトが用意されている。

 まあ、それ以外は急降下も急上昇もなく、洞窟の世界と外の世界を交互に繰り返す割と平和的なアトラクションなんだけどねぇ。


 冬場には流石に人気が無くなるんじゃないかと思うかもしれないけど、外のエリアには全て外気を遮断する風属性魔法のバリアが張られていて、暖房設備や風属性魔法で内部を一定温度に保つ仕掛けになっている。また、出口には風属性の乾燥魔法が用意されていて、濡れたままアトラクションを出て風邪を引く心配もない。

 そのため、一年を通して高い人気を『スプラッシュ・トレイン』は誇っている。……まあ、そのおかげで寒い冬だから客が少なくて待ち時間が短いってこともないんだけどねぇ。


 作り込まれた世界観を楽しみながら(洞窟の世界ではローレライや河童がお出迎え……うん、最初に乗った時はなんで河童? って思ったよ。水棲生物なのは間違いないけどねぇ)、洞窟と外を行ったり来たり。

 そんな風にアインスと二人で水辺から見えるテーマパーク「アンダーグ・ランド」の景色と洞窟世界を満喫していたんだけど、そうしている間に旅の終わりが近づいてきて――。


 ――ガタゴトガタゴト。


 音を立てながら水列車は山の内部を登っていき、洞窟の外へと向かっていく。

 そして、洞窟の入り口まで辿り着いた時、水列車は一度目の落下を始めた。パシャンと飛んでくる水が新鮮だったらしく、アインスは「水のジェットコースターも楽しいね!」と目を輝かせている。

 一度目の落下から十秒ほどの間を開けて二度目の落下、そしてフワッと僅かに上昇して三度目の大落下に至る。水飛沫はこの時点でかなりえげつないレベルになり、最前列にいたボクもアインスも思いっきり水を被った。……乾燥魔法がなければ風邪を覚悟しないといけないくらいのずぶ濡れだねぇ。


 購入したポンチョも貫通して服も濡れて、少し下着が透けているなぁ、なんて思っていたタイミングで四度目の落下。流石にこれはアインスも予想していなかったらしく、目を丸くしながら最後の落下で生じた大波を直撃で浴びていた。

 水列車はそのままスタート地点に戻っていく。シートベルトを外して乗り口とは反対方向に移動したところで、アインスがブルブルと身体を振って水を払った。


「先生、凄い濡れたね」


「そうだねぇ……とりあえず、乾燥魔法のエリアまで進もうか」


 濡れ度がブラが見えるほどの事故レベル……普通の女の子ならキャーって叫びそうだけど、ボクはそういうタイプの女の子じゃないからねぇ。とはいえ、あんまりこういう格好は人前に見せる訳にはいかないし、アインスと手を繋いで早足で出口付近の乾燥魔法のエリアを通過した。

 服の水気も髪の水気も一瞬で吹き飛ぶ。……こういう点は魔法が偉大だと思うよ。


 まあ、魔法がある分、水のあるアトラクションもかなりギリギリのレベルにできるっていうところもあるんだろうけどねぇ。あの大波とか最前列なら確実に浴びる設計になっていそうだし。

 アトラクションを出て、そのままレストランへと向かう。その後、ルーネスとサレムと合流し、ボク達は『レストラン・ド・ワーフ』に入った。



 美味しいコース料理をルーネス、サレム、アインスと味わいながら、特等席からパレードを眺める。

 どこぞの夢の国のようなマスコットキャラクターが存在しないテーマパーク「アンダーグ・ランド」でのパレードは空に打ち上げられる無数の花火と、各アトラクションを象徴するギミック達の乗った山車によって構成される。


 山を彷彿とさせる山車には具足蟲(グソクムシ)地底の青小鬼(アース・コバルト)を従える岩鎧の魔王アンダーグランド・キング、海賊船を彷彿とさせる山車にはクロコダイル船長とアンロッテ船長と鮫達……まあ、こんな感じで一部のエリアを除いた山車が列を成す。

 音楽は『ビックバンド・スコール』のキャスト達が演奏して……かなり豪華なパレードだよねぇ。


 今日回ったアトラクションの思い出をそのアトラクションをモチーフとした山車を見ながら語り合う。

 三人で楽しそうに語り合うルーネス、サレム、アインスの姿を微笑ましく見ながら食事を摂る時間はボクに取っては癒しだった。……しかし、新年祭のデート、完璧とは言えないけど総合的に見ればかなり癒される時間だったんじゃないかな? 明日にはまた臨時班を動かしたり、捕縛したアイゼン達の処分をしたりとやることが山積みだけど、こうしてデートを楽しんでリフレッシュできたからまた明日頑張ろうって思えてくる。本当にいい一日だったねぇ……まだ終わってはいないけど。


 その後、ディナーを終えてから三人の投票で決まった『ホワイト・ローラーコースター』に行き、ライトアップの夜景と夜空が美しいジェットコースターを四人で思う存分堪能して、新年祭のデートは幕を閉じたのだった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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