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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-203 恋色に染まる新年祭(2) scene.8

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


「晩餐室に飾られている絵画に描かれている中で席に座っているのは十二人。席は二十四なので、十二番目の席は右側の前から数えて六つ目でしょうか?」


 死んだ魚の目になったゾンビメイドは無表情で何も言わなくなったけど、心の中からは「もう嫌だ、このゲスト達。なんでそんなにあっさり解くのよ!」という声が聞こえてくる……見気を使えるボク達にはいくら取り繕っても心を隠さなければお見通しなんだけどなぁ。

 サレムの予想は正しく、椅子をひっくり返すと椅子の裏側には謎が刻まれていた。


-----------------------------------------------

双子……①②M③④③

天秤……⑤③⑥⑦⑧

獅子……L②⑨

牡牛……⑩⑧U⑦US


①③④ の ⑩⑦⑧Y に ①⑨⑥⑤②⑩ 置け

-----------------------------------------------


「双子座はGemini、天秤座はLibra、獅子座はLeo、牡牛座はTaurus……なので、文字を当てはめれば『GINのTRAYにGOBLET置け』、つまり銀のトレーにゴブレットを置けばいいということですね?」


「早過ぎる!!」


 流れるように問題を読み解いて正解するサレム。

 まあ、石膏像に「Leo」と「Libra」って書いてあって半分くらい答え出ているし、後は当てはめるだけだからそこまで高度な謎では無いよねぇ。……寧ろ、絵の中に十二の椅子が描かれていることに気づいて、十二の謎と繋げられるかという方が難しくてなかなかショートカットルートが使えないというのが実情かな?


 机に置いてある銀のトレーにゴブレットを置くと、トレーの乗っている机の一部がゴゴゴゴと音を立てて下がっていき、入り口と反対側の壁が上昇、ショートカットルートへの道が開いた。

 外周をくるっと一周するように続く道を順路とは反対方向に進んでいくと、到達するのは蛇遣いの石膏像が置かれたエレベーターホール。ちなみに、この通路を利用すれば十三の部屋全てに入ることができたりする。……まあ、直接繋がっている蛇遣い座の部屋と先程の晩餐室以外は通路側からしか入れない構造になってあるんだけどねぇ。


 この通路を利用すれば間の謎を無視して十二個目の部屋まで行くこともできるけど、ここまで謎を解いたならそのままエレベーターホールを使って四階までショートカットをした方がいい。ということで、ボクとサレムはエレベーターに乗って一気に四階まで移動した。

 一階から三階までのエリアのダイジェスト映像が流れるモニターが左右に多数設置されている特別な廊下を進んでいくと、通常の順路とは反対側の乗り込み口に到着する。乗り口は正式な順路側とショートカット側で二つ用意されていて、それぞれの列からVRライドに乗車できるようになっているから、実はショートカットした方がライドの乗り込みの待ち時間に関しても短くて済むんだよねぇ。……まあ、あの謎を解く人がほとんどいないようで、こちら側は基本的にガラ空きなんだけど。


 ちなみに、エレベーターホールは一階の晩餐室、二階のダンスホールに併設された控室の一つ、三階の大臣の執務室にそれぞれ接続されていて、二階や三階で降りれば隠しルート経由で元の順路に戻ることができるんだけど、まあ、そんなことをする人はほとんどいないねぇ。逆に二階や三階からショートカットをして四階にというパターンは何組かやっているとは思うけど……そもそも各エリアにショートカットルートが明かされるもう一つの謎に気づいているひとってどれだけいるのかな?


 到着から二分もせずにVRライドに乗車、ゴーグルを嵌め、シートベルトを締めていよいよ出発。


 ライドの内容は呪われた王や王妃、王子や王女達、騎士達などに追いかけられながらの『ホンテッド・パレス』からの脱出。三階の玉座の間まで辿り着き、『ホンテッド・パレス』に掛けられた呪いの秘密に気づいてしまったゲスト達が城の四階から逃亡を図るというもので、呪いを与えて仲間に引き込もうとする王族や騎士達がコースの各所で襲い掛かってくる。

 その臨場感は凄まじく、まるで実際の戦場で剣で斬り掛かられてきたような感覚を味わうことができる……まあ、それだけ危険な目に遭った設定でも間一髪のところで無事に逃げ切ることができたという結末を使えるんだけどねぇ。


 追われるゾクゾク感とスピード感を味わいながら四階から一階まで急旋回しつつコースを駆け下り、あっという間に呪われた城の逃亡劇は幕を閉じた。


「どうだった?」


「臨場感があって楽しかったです。最後のライドも短さをあまり感じさせないほど濃厚な時間でしたし、やはり人気なアトラクションに数えられるだけのものはあると感じました」


「でも、サレムさん的には謎解きの方が楽しかったんじゃ無いかな?」


「……バレていましたか。魔法学園に入学したらイベントごとで謎解きのゲームをしても楽しそうだなぁ、と謎を解きながら思っていました。まあ、同志も必要ですし、必要なものも場所も必要ですから難しいかもしれませんが」


「楽しそうだねぇ、脱出ゲーム。魔法学園の部活動で脱出ゲーム部、謎解き部、こういったものを作っても面白そうだねぇ。その時になって気が変わっていないなら顧問くらいは引き受けるよ」


「本当ですか!?」


 パァッと顔を綻ばせるサレム。……別にそれくらい引き受けるよ? 元々いくつか部活の顧問を掛け持ちする予定だったし、今更一つ増えてもあんまり変わらないからねぇ。



 二箇所目に予定していた『パイレーツ・オブ・ドワルゴン』は一周目(ルーネスとのデート)の時点で予想していた通りかなりの列になっていたもののレストランの予約時刻に間に合いそうなタイミングで船型のライドに乗り込むことができた。


 『パイレーツ・オブ・ドワルゴン』は海上の船の如く揺れる船内でフリントロック式のピストル型のレーザー銃を持ち、海賊達と戦っていくという内容になっている。

 基本的には弱点が指定されていて、その部分を撃てばダメージを与えられて得点が入るけど、相手の海賊からの攻撃を浴びた場合はしばらく攻撃ができなくなる。海賊は銃撃と斬撃の二種類の攻撃方法を使うんだけど、どちらもモーションをした瞬間に確定で攻撃が命中する設定なので(銃撃は単体攻撃、斬撃は一ライド内の全員攻撃)、攻撃される前に敵を一度でも仕留めておく必要がある。逆に一度でも仕留めればその敵からは攻撃を浴びせられることがなくなるため、先手でどれだけの敵を無力化できるかに全てが掛かっていると言っても過言ではない。


「あまり銃は扱ったことがないのですが、魔法の照準を合わせるのと感覚は似ていますね」


 流石にサレムも銃の扱いに慣れていないので最初は闘気を使って身体能力を底上げし、なんとか照準を合わせて敵より先に銃撃を仕掛けていたものの使い方を少しずつ理解してきたらしく、纏う闘気の量が減ってきている。

 まあ、でも闘気でドーピングしているとはいえここまでパーフェクトなんだから随分成績はいいと思うけどねぇ。


 砂浜を彷彿とさせる第一ステージを無事ノーミスでクリアし、続く第二ステージ。

 左右に出現する小舟に乗る海賊達を協力して討ち取っていく。

 コツを掴んだサレムも危なげなくクリア。ボクも一応銃は人並み程度には使えるからこのレベルのエリアで失敗してサレムに迷惑をかけることは流石にない。


 海賊達を討伐し、たまに出現して噛みつき攻撃を仕掛けてくる鮫(攻撃速度が速い代わりに討伐得点も高い)も倒していき……いよいよ第二ステージのボスキャラのお出ましだ。


 第二ステージと最終ステージにはそれぞれボスが用意されている。第二ステージは海賊帽子を被った鰐型の魔物のクロコダイル船長(ペット)、ちなみに最終ステージのボスはクロコダイル船長と、銃の名手である女海賊のアンロッテ船長。

 クロコダイル船長は弱点が複数設定されていて、全てを撃たなければ撃破扱いにはならない、アンロッテ船長は攻撃速度が鮫の二倍と、それぞれ討ち取りにくい設定がなされているのが特徴だねぇ。


 第二ステージのクロコダイル船長はサレムとの連携プレイで弱点を同時に撃ち抜いて撃破。


 そしていよいよ第三ステージ。今まで以上に息の合った連携プレーが必要で、息が合わない相手だと連続で出てくる敵に成す術がなくなり、ほとんど点を取れないまま脱落することになる。

 定石通り厄介な鮫を中心に仕留めていき、いよいよラストのボス戦へ。ちなみにここまでノーミス……サレムのフォローに回らないといけないかと思っていたけど、どうやらその必要は無かったみたいだねぇ。


 まずはクイックドロウを仕掛けてくるアンロッテ船長にそれ以上の速度で銃撃を浴びせてアンロッテ船長を撃破、続いてクロコダイル船長の斬撃が飛んでくる前にサレムと同時に銃の引き金を引いてクロコダイル船長の急所を撃ち抜いて撃破。

 見事にノーミスクリアを達成したボク達は特典の書かれた記念カード(アンロッテ船長とクロコダイル船長が描かれた背景に得点が表示されるというもの。ちなみに、得点によっては背景がモブ海賊になったり、鮫になったりする)を受け取り、レストランに向かって歩き始めた。


「……サレムさん、あんまり楽しく無かったですか?」


「いえ、そうではなくて……楽しかったですが、実戦だったらもっと緊迫した戦いになったと思いまして」


「まあ、確かにアトラクション……つまり、一般客にも楽しめるレベルに調整されているからねぇ。詳しい設定は任せたものの、アンロッテ船長達を作ったのはボクなんだけど、あのシステムじゃどれだけ難易度を上げても限界があることは分かりきっていたし、もっと緊迫したバトルをっていうなら、株式会社ドワンドランドとド=ワンド大洞窟王国に許可を得た上でバトルアイランドのバトル・クエストで実際にアンロッテ船長達と戦えるクエストを用意してもいいかもしれないねぇ」


 バトル・クエストの新たな構想を頭の片隅で考えつつサレムとのデートを満喫し、レストラン付近でルーネスと合流したところで三千世界の烏を殺してアインスの元へと向かった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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