Act.9-195 武闘大会、開幕! 暴風雨のバトルロイヤル。 scene.10
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
アネモネのHPは400000、つまり「怒りの火竜特攻」の「喰ワセロ、喰ワセロー」と「憤怒の火竜特攻」の「憤怒の暴走」を喰らえば余裕でゲームオーバーになる。最早後者に至ってはアネモネが何人消し飛ぶんだよっていう超火力攻撃だよねぇ。いや、アネモネどころかどのアカウントでも耐久は不可能、従魔合神が必須となる。……本当にとんでもない技を編み出したよねぇ。
『さて、これだけの火竜相手にどう立ち回る!?』
「それは勿論、一掃一択です! 水葬竜の輪唱咆吼!!」
小さな魔法陣をボクの周囲に無数に展開、その魔法陣を口代わりにして「水葬竜の咆哮」を放つ。
『――ッ! 雷炎竜帝の咆哮!!』
カリエンテは赫雷を纏わせた溶岩流を猛烈な勢いで放つブレスで反撃し、ボクの「水葬竜の咆哮」との衝突で大量の水蒸気が発生、結果的にカリエンテに向けたブレスの水は全て気化されてしまったからこの攻撃でカリエンテを仕留めることはできなかった。
まあ、でもそもそもこの攻撃の狙いはカリエンテが作り出した厄介な竜達を纏めて撃破することだったから、カリエンテが身を守るために一つのブレスに対抗せざるを得ない状況を作り出し、カリエンテを釘付けにできた時点で勝ちなんだよねぇ。結果として火竜達に攻撃の隙を与えずに全て撃破できたからボクの望んだ展開になっている。……まあ、あわよくばこのブレスでカリエンテを撃破、とも思ったんだけど、やっぱりこの程度じゃ落とせないよねぇ。
「水葬竜の怒號!」
続いて無数の水条のようなものへと分裂し、紡錘形の輪郭をなぞるように敵に殺到するブレスをカリエンテに向けて放つ。……三つの「水葬竜の咆哮」と同時に。
『いくらなんでも滅茶苦茶だ!! 焔の槍雨! からの、撤退!!』
カリエンテの周囲に赤い魔法陣が出現して、そこから大量の炎の槍が雨のように降り注ぐ。そのどさくさに紛れてカリエンテは熔岩の海の中に撤退。……とりあえず、炎の槍は見気を駆使して回避するとして……あの溶岩帯邪魔だよねぇ。
「龍宿魔法! 白氷竜の咆哮!!」
『――ッ! やはり熔岩を潰しに来たか!!』
まあ、カリエンテも熔岩を封じて来る可能性は予測していたようで、素早く熔岩の中から脱出した。だからって氷のブレスを止める気は更々ないけどねぇ。
『――ッ! こんな時に竜巻か!?』
カリエンテの背後から竜巻が迫る。これはボクの魔法ではなく設定された天候の効果だ。
ここまでの戦いでは運がいいのか悪いのか竜巻に遭遇することが無かったけど、このタイミングで「竜巻暴風雨」が牙を剥くとは。
まあ、牙を剥いたからといって何かが変わる訳でもないんだけど。
「龍宿魔法! 竜暴食!」
カリエンテの後方まで俊身で移動し、風の古代竜の魔力を纏って竜巻を喰らう。
減った魔力も回復したことだし、大技を放とうかな?
「カリエンテさん、楽しい勝負を続けたいところですが……正直時間がそんなにありません。なので、次で仕留めに掛かります」
『大技を放つということだな……あのブレスですらも大技じゃないということか。一体何をするつもりなのか全く想像がつかん。我を倒せる方法など主人様は何通りも持っているだろうからな。……どんな殺され方をご所望ですかというある意味屈辱的を通り越して笑えて来る質問をされなくて良かった』
「……して欲しいのであれば聞きますけどねぇ? どんな殺され方をしたいですかって。魂魄の霸気、アネモネの特技、あるいは魔法、剣技、その他諸々……方法はいくらでもありますから」
『……まあ、そうなのだが。……楽しい時間だが主人様にも予定がある。それにダラダラと続ければ良いものでもない。次の攻撃に我も全力を賭すとしよう! 《情熱攻勢》! 雷炎竜帝の咆哮!!』
カリエンテが放ってきたのは赫雷を纏わせた溶岩流を猛烈な勢いで放つブレス。しかし、感情を昂らせる度に力を増し、攻撃技を放つ度に攻撃力を増していく《情熱攻勢》によって強化され、膨大な霸気が練り込まれている。……赫雷に混じって霸気の黒稲妻を纏っているブレスは最早カリエンテの放つ通常の「雷炎竜帝の咆哮」とは完全に別物になっている。
「龍宿魔法! 暴風水葬竜の咆哮!!」
『なんだと!? 琉璃とラファールの魔力の融合だと!?』
「更に、龍宿魔法! 白氷竜の咆哮!!」
『氷に、水に、風に……三属性!? そんなの、オーバーキルだァ〜〜!!』
ボクとカリエンテのブレスは僅かに拮抗するも、展開した三つの魔法陣から放たれた「白氷竜の咆哮」がカリエンテに命中し、カリエンテが満身創痍になったことでブレスが一気に弱まった。
後は弱ったところに風と水の融合ブレスの威力を上げて一気に押し切れば勝てる。
しかし、あの獣王決定戦からカリエンテは随分と強くなったよねぇ。正攻法だけでなく搦手も交えてきてかなり厄介になった。みんな成長しているなぁ。
本当に頼もしいよねぇ……ギルデロイもこれくらい頼もしくなってくれたらいいんだけどなぁ。
◆
武闘大会は大盛況で無事閉幕、冒険者ギルドと商人ギルドの連合からも「来年もよろしくお願いします」というお言葉をもらえたので、来年以降もこのスタンスで大会を開催することになった。
ボクとしてもこの大会は時空騎士の新人発掘の場としてかなり有益なものになりそうだから本当にありがたい。
さて、時刻は午後六時。そろそろ七時に予約しているディナーに行かないといけないけど、それまでに処遇を決めないといけない連中がいる。
そう、「六魔修羅道」傘下のパーティ「餓狼鬼士団」の皆々様だ。
アルベルト、ヴァーナム、イルワと共に冒険者達に捕縛されたアイゼン達が拘束された部屋に向かう。
六人の腕と脚には「触れている存在からあらゆるエネルギーを強制的に引き出し、拡散させる性質」を持つ拡流石製の枷を付けているため、何らかのエネルギーを使用する能力は全て封じられている。そして、ウルツァイト窒化ホウ素を凌駕する硬度と驚異的な耐熱性質を有するこの枷を力任せに破壊することも現実的ではない。
「冒険者ギルドとしてはどのような対応を検討しているのかな?」
「既に冒険者資格は剥奪されているので扱いは闇ギルドに所属する討伐対象ということになります。盗賊などと基本的な扱いは同じですね。懲役か、鉱山送りか、処刑か……ただ、既に必要な情報はアネモネ閣下も得ているようなので、処刑してしまうのが一番手っ取り早いかもしれませんね。懲役なら脱獄の可能性が、鉱山送りでも逃げられる可能性がないとは言い切れませんから」
「確かに可能性がないとは言い切れないですねぇ。……まあ、『六魔修羅道』が救出に来る可能性は皆無に等しいでしょうが」
「何故、そんなこと言い切れる!!」
「アイゼンさん、お気づきではないのですね。……貴方達の身体には自爆魔法が組み込まれています。どうやら特定のワードを口にした瞬間に爆発する仕様のようですね。この世界の魔法に使われる魔力とは異なるエネルギー、魔元素を使用する魔法のようなのでまず間違いありません」
「……そんな……」
「その枷が魔元素の収束も阻害しているので魔法が発動しないという状況です。……それに、どうやら遠隔操作も可能なようなので、仮にワードを口にせずとも牢獄や鉱山で爆発して死に至る可能性もゼロとは言い切れないでしょう。……その点考えると鉱山送りはもっての外ですねぇ、周りに甚大な被害が出てしまいます。牢獄でも看守や他の罪人の方々にご迷惑が掛かりますし……その腕輪を外さないというのであればまた話は変わってきますが……」
「……俺達は死にたくないッ! 分かった! この枷は絶対に外さないからッ!」
「ですが、それを『六魔修羅道』が許してくれるでしょうか? 口封じに殺害を……ということになるかもしれません。仕込んだ爆発魔法が機能しないとなれば、相手も動かざるを得なくなるでしょう。ということで、私は死刑が良いのではないかと思います。それが一番被害が少なく済みそうですからねぇ」
「そ、そんな……」
「そもそも、貴方達は私のことを殺そうとしていたのですよねぇ? それなのに、自分達は死にたくないと? おかしい理屈ではありませんか? 相手を殺すなら自分も殺される覚悟くらい持ちなさいよ。……仕方ありませんね、その爆破魔法を解除して命だけは助けてあげます」
「ほ、本当か!?」
「本当にチョロい女で助かったぜ」なんてボクを内心で馬鹿にしているアイゼン達の心の声を聞きながら内心北叟笑む。ボクは確かに「助けてあげる」とは言ったけどさぁ、「命だけは」だからねぇ。肝心なところを聞き逃しちゃダメじゃないか。
「そうですねぇ、今から所要があるので、明朝必ず解呪致しますわ。……『六魔修羅道』を壊滅させに行く前に対処しますからご安心ください。それと、先程仲間に連絡を入れましたので、私の管理する屋敷の方で夕餉と朝食はご用意させて頂きます」
「おう、そいつはありがたい」
「では、明朝お目に掛かりましょう。《蒼穹の門》!」
アイゼン達をボクの保有する屋敷の一つに転移させてから、ボクはローザの姿に戻ってアルベルトと共に予約したレストランに向かった。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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