Act.9-194 武闘大会、開幕! 暴風雨のバトルロイヤル。 scene.9
<三人称全知視点>
『火竜帝の熔焔剣! 行くぞ! アルベルト=ヴァルムトッ!!』
灼熱の剣を構え、竜の翼を使った俊身で一気に加速して斬撃を放ってくるカリエンテに対し、アルベルトは「心無き天使の破滅の翼」と「燦く星の流星群」で攻撃を仕掛けつつ、「ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連」で迎え撃つ。
『十八連撃の隙を突かれないように二種類の魔法で同時に攻撃を仕掛けてきたか! なかなか良い作戦だ!』
「……カリエンテ殿は剣を得意としていないと思っていたのですが、扱えたのですね」
『うむ? 我は剣士ではないぞ? 剣も素人、故に力任せにしか振るえない。だが、我にとってはそれで十分! その小さな天使共も薙ぎ払い一つで容易に撃破できる! 天焦がす炎竜王の焔!』
灼熱の炎を纏った剣を一気に薙ぎ払い、アルベルトが放った小さな天使を一掃、降り注ぐ光条を器用に躱しつつ、再び剣に炎を収束する。
カリエンテが遠距離から斬撃を飛ばしてきたため「ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連」を浴びせることに失敗し、天使を狙った炎の斬撃に巻き込まれたアルベルトだったが、アルベルトがレベル99で習得する固有最上級水魔法「タイダルウェイヴ・フローズン」を放つことで自身の身を守ることに成功し、体勢を立て直すと同時に霸気を纏わせた「タイダルウェイヴ・フローズン」を放って灼熱の斬撃を無力化しつつ、今度こそカリエンテに斬撃が届く位置まで肉薄する。
「崩魂霊聖剣!」
『ほう、神聖魔法『魂霊崩壊』を剣に込めたか。我を一撃で屠るつもりだな! 良いだろう! 滅ぼせるというなら滅ぼしてみるがいい! 天焦がす聖炎竜王の焔!』
聖属性の魔力を込めた灼熱の炎を纏った剣に膨大な霸気を流し込んで無造作に薙ぎ払いを放つカリエンテと、「魂霊崩壊」を剣に宿し、斬撃に自身の持つ全ての霸気を流し込んだ斬り下ろしを放つアルベルト。
天を割るほどの膨大な霸気を散らし、僅かな時間互いの剣が触れ合わないほどの分厚い霸気の衝突を引き起こしたカリエンテとアルベルトだったが、カリエンテの力がアルベルトを上回り、灼熱の炎がアルベルトへと殺到する。
防御に回すほどの霸気が残っていなかったアルベルトは「タイダルウェイヴ・フローズン」で一度は「天焦がす聖炎竜王の焔」を消火することに成功するも、立て続けにカリエンテが放った二度目の「天焦がす聖炎竜王の焔」に対抗することはできず、灼熱の炎に呑まれて消滅した。
◆
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
二つのエリアを繋ぐ橋は三つ、そのうち北側の一本と最南の橋が一本、最早原型を留めていないレベルで破壊されている。
犯人は……まあ、確実にシューベルトだろうねぇ。橋を一本に絞って残った南の橋を渡った先で待つことで確実にボクと戦える環境を整える、と、そんなところかな? いや、そこまでやらなくても戦うつもり満々だよ? そのために来たんだし。
「ようやく来たか」
「お待たせして申し訳ございません。戦力になりそうな方を見繕っていて遅くなりました。……では、約束を果たしましょう。私は貴方にアクアを渡すつもりはありません。叶わぬ恋はとっとと諦めなさい、シューベルト」
「……諦めるつもりは毛頭ない。ここでお前と決着をつけ、俺はアクアに告白する」
「……まあ、仮に告白しても振られると思いますけどねぇ」
『銀星ツインシルヴァー』を抜き払うと同時に武装闘気と覇王の霸気を纏わせて加速、シューベルトも剣を抜き払い、武装闘気と覇王の霸気を纏わせて斬撃を放ってくる。
ボクとシューベルトの剣は互いに触れ合うことなくかなりの隙間を残して拮抗、膨大な分厚い霸気が衝突し、天が割れ、地面が吹き飛ばされるほどの破壊をもたらす。
「魂魄の霸気《覇壊》――《破壊神》!」「魂魄の霸気《大魔王》!」
互いにあらゆるものを破壊する破壊の概念を宿し、剣を振り続ける。ボクは圓式に切り替えて怒涛の連続攻撃を仕掛けるも、シューベルトは悉くボクの攻撃を受け止めてくる。
《血動加速》や《八百万遍く照らす神軍》派生《太陽神》の光速移動で強引に突破するという手もあると思うけど、なんかそれは逃げに走ったみたいで嫌なんだよねぇ。
ってか、いっそアクアに正面から告らせてしっかり玉砕させた方が納得したんじゃないか……いやいや、この人諦めの悪過ぎる大魔王さんだから玉砕しても諦めないストーカーになりそうだし、ここでしっかりボコボコに……とか頭の片隅で考えつつ切り結ぶこと千五百八十三合。
戦いを終えたカリエンテが欠伸をしながら観戦する中、遂に決着の時が来た。
霸気の消耗か、それとも一瞬の隙が生じたのか、シューベルトの攻撃の手が一瞬だけ緩んだ。その隙を突いて双刀から圓式の斬撃を叩き込んでシューベルトの撃破に成功する。
シューベルトは防御に割くべき霸気も最初から攻撃に使用していたからシューベルトの防御を打ち破って斬撃を浴びせるのは簡単だった。……ってか、せめて武装闘気くらいは纏おうよ、どんだけ殺意高いの!?
「……随分と待たせてしまいましたね」
『大変な戦いだったな。……だが、まだ最後の戦いが終わっておらん。獣王決定戦のリベンジ、果たさせてもらうぞ!』
「龍宿魔法! 竜暴食!」
水の古代竜の魔力を纏って降り注ぐ雨粒を全て喰らい尽くす。
そのエネルギーを全て魔力に込めると、俊身と神速闘気を使ってカリエンテに肉薄、至近距離から「水葬竜の咆哮」を浴びせる。
『――ッ! 流石は主人様だ! 火竜帝の咆哮!』
カリエンテもすぐさまブレスで相殺、生じた水蒸気爆発を互いに纏った武装闘気と覇王の霸気、求道の霸気で防ぐ。
『大地錬成・熔岩地帯! 大噴禍!』
「カリエンテの新技ですね。……熔岩帯の錬成と噴火。熔岩帯からいつ行われるかも分からない奇襲も恐ろしいですが、厄介なのはそれよりも『熔焔癒術』との組み合わせですねぇ。先程、アルベルト殿との戦いを遠視魔法で観察させて頂きましたが、あの熔岩による回復は偽装工作ですね? 実際は焔や熔岩によって傷を回復できる体質へと一時的に変化させる魔法なのではありませんか?」
『やはり主人様の目は誤魔化せんか。……指摘の通り、「熔焔癒術」は火や熔岩のダメージを治癒へと反転させる魔法だ。「大地錬成・熔岩地帯」と組み合わせることで飛び込むだけで全身を回復できる回復エリアを創り出すことができる。……奥の手の一つだったがバレてしまったのは仕方ない。バレてしまったついでにもう一つの切り札も切らせてもらおう! 火竜帝の特攻眷属!』
カリエンテが作り出したのは無数の火竜。無数の完全体カリエンテの分身を創り出す「火竜帝の分竜」とも無数のカリエンテよりも少し小さな火竜を創り出す「火竜帝の眷属」とも少し違うデザインで、大きさ自体は「火竜帝の眷属」に近いけど……正直、これが切り札というのであれば何かある気がするんだよねぇ。
とりあえず、「魔法式鑑定」で魔法の構造を読み取る。
最近完成に至った魔法の構造を読み取ることができる無属性鑑定魔法で、魔法に分類されるあらゆる技術の構造を読み取れるから便利なんだよねぇ。
しかし、「魔法式鑑定」があって本当に良かった。……カリエンテって割と直接的な魔法を得意としているんだけど、この魔法はかなり搦手寄りだねぇ。
「火竜帝の特攻眷属」で作り出された火竜は一種類に見せかけて実は四種類、つまり「火竜特攻」、「食いしん坊な火竜特攻」、「怒りの火竜特攻」、「憤怒の火竜特攻」という魔法が同時に発動している状態にある。
「火竜特攻」には噛みつき攻撃を仕掛ける度に燃え上がり、十度の攻撃の後に燃える牙で攻撃した後に自滅する「捨て身の噛み付き」を放って自滅するというギミックが、「食いしん坊な火竜特攻」には噛みつき攻撃を仕掛ける度に燃え上がり、七度の攻撃の後に巨大化して燃える牙で相手を噛み砕いた後に自滅する「喰らい尽くし」を放って自滅するというギミックが、「怒りの火竜特攻」には噛みつき攻撃を仕掛ける度に燃え上がり、五度の攻撃の後に極大ダメージ(正確には1181500の固定ダメージ)を与える噛みつき攻撃した後に自滅する「喰ワセロ、喰ワセロー」を放って自滅するというギミックが、「憤怒の火竜特攻」には噛みつき攻撃を仕掛ける度に燃え上がり、三度の攻撃の後に巨大化し、極大ダメージ(正確には1181500の固定ダメージ)を与える噛みつきを二連続で放った後、大爆発する形で自滅し(1181500の固定ダメージ)、爆発に巻き込まれた相手に「火竜の怨念が爆発した」(1181500の固定ダメージ)のスキルカードを五枚設置する「憤怒の暴走」を放って自滅するというギミックがそれぞれ搭載されているのだけど、それを見た目で判別することは不可能。
「魔法式鑑定」で判別することができるけど、なければ見た目で見分けられないから込められている魔力量で判別するしかない。仮に判別できたとしてもそこに搭載されているギミックまでは読み解けないから初見では攻略不可能なんじゃないかな、これ。
……まあ、全部攻撃を回避すれば問題ないということにはなるんだけどねぇ。基本、攻撃は躱すものだし。
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