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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-191 武闘大会、開幕! 暴風雨のバトルロイヤル。 scene.6

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


「おいおい、そんな負け犬よりも勧誘するべき相手がいるんじゃないかぁ?」


「ベンヤミン=ノイジズさんですか? 勿論、後ほど勧誘するつもりですが」


「お、俺ですか!?」


「違うだろッ! 全く目が節穴だなぁ。見た目は美人だが、人を見る目はねぇようだな。まあ、こんな弱そうな女が冒険者の上位になっている時点でブライトネス王国のレベルは相当低いんだろうなぁ。そもそも、冒険者なんてものはただの傭兵、二軍三軍だ。エリートの中のエリートである近衛騎士には何一つ及ばない。俺はブルーマリーン王国所属の近衛騎士のポートマス=シトギーザだ。強い奴に時空騎士(クロノス・マスター)を与えるんだろ? だったらその資格を俺に寄越せ。そうしたら俺が非力なお前達を守ってやるからな! まあ、守ってもらうからにはそれ相当の対価は払ってもらうけどなぁ!」


 ポートマス=シトギーザ、別名『武闘大会荒らしの騎士擬き(ポートマス)』――毎年、使節団の一人として赴いては武闘大会に参加して武闘大会を荒らし回っているという厄介者だねぇ。

 近衛騎士は彼の言う通りエリートが多いし、そもそも騎士は冒険者よりも強い場合が多い。選抜試験を経て、更に訓練を受けているからねぇ。


 そういった手厚さは冒険者にはなく、実力は実戦で磨かれていく。まあ、その実戦の内容次第では騎士よりもレベルアップできる可能性もあるけど。自由度も高いから成果を上げるためのハードルも基本的に少ないしねぇ。まあ、成果を上げられるかどうかは結局その人の実力に依存するんだけど。


 ポートマスは騎士とは思えないほど悪辣な性格で有名らしい。弱い相手をまるで甚振るように戦い、強い相手と分かると戦う前に呆気なく降伏する。

 何故、この人が毎年使節団に選ばれているのかは疑問だけど、毎年こうしてブライトネス王国にやってきては武闘大会で暴れ回ってストレスを発散しているらしい。……外交問題にもなるレベルの話じゃないし、ちゃんとルールに則って参加しているから冒険者ギルド側も彼を武闘大会に参加させない措置を取ることができない。


 幸い、ボクのことを雑魚だと見ているようだし(というか、男尊女卑が強過ぎるだけなのかな? カリエンテとかとぶつかったら普通に丸焼きにされてジ・エンドになりそうだねぇ)、ここでしっかりお灸を据えておくとしよう。

 今のところブルーマリーン王国と敵対する理由はないし、国際問題にならない程度にボコしますか。


 『銀星ツインシルヴァー』の左の太刀を鞘に戻し、右の太刀に薄らと武装闘気を纏わせて構える。


「どうぞお好きなタイミングで掛かってきてください」


「――ッ! 舐めやがって!」


 やはり近衛騎士に選ばれるだけあってそこそこ腕はあるらしい。剣術は正統派の騎士らしい王道の騎士剣術――まあ、それ故に太刀筋が読みやすくて対処も容易いんだけど。


「――ッ! なんだこの重さ! 女の細腕から放たれたとはとても思えない! この強さ、ブルーマリーン王国近衛騎士団長の『海鳴り』バルバロッサ様と互角……いや、そんなただの冒険者風情、それも女如きに……」


「驚いているところ大変申し訳ませんが……まだまだ序の口、序の序の口ですわよ。少しステージを上げましょう。――圓式独創秘剣術 六ノ型 狂咲-Kuruisaki-」


 ポートマスの利き手を狙い、斬撃を浴びせる。

 この塩梅がまた難しい。かなり複雑な剣捌きをしているから、圓式との両立は今の所不可能なんだよねぇ。


「やはりそうだ! さっきの剣を受け止められたのだってまぐれに決まっている! 見ろ! 俺の腕を! あれほど斬撃を浴びたのに傷一つついていない! これで終わりにしてやる!」


「ああ、そんなに動くと……残念、もう手遅れでしたねぇ」


「なんで……俺の手が崩れて……どうなっていやがる!」


「見たくないものは見えない、聞きたくないことは聞こえない、勝手に決めつけてレッテルを貼り付けて、そういう方を御するのは簡単です。あれだけ斬撃を浴びたのに傷一つついていないという異常事態、貴方は不思議に思わなかったのですか? 説明されても分からないとは思いますが、特別に教えて差し上げましょう。先程の『狂咲-Kuruisaki-』は相手が気づかないほどの速度で傷をつける技です。切られたことに細胞が気づかないほどの鋭い切れ味故に、相手が一定以上の運動を起こしたタイミングで傷口が一斉に開き、自壊します。……さて、そろそろお遊びは終わりにしましょうか?」


「お遊び、だと?」


「当たり前ではありませんか。貴方程度に私が本気を出すとでも? ここまではただの戯れです。ただ、もう利き手を失って騎士として十全に戦えそうにないですからねぇ。なので、貴方の名誉のためにも次の一撃で退場して頂こうかと」


「――舐めやがって! まだ俺は負けた訳じゃねぇ! まだ左手が残っている! 女如きに、冒険者風情にこの俺が、近衛騎士である俺が負けるとでも! 俺はエリートなんだ! こんなところで、負けてたまるか!」


「……貴方が馬鹿にしたザックスさんも元は同じ近衛騎士――エリートなんですけどねぇ。貴方は井の中の蛙、世界を知らないからそんな寝言を言っていられるのですよ。貴方に残されたのは時空騎士(クロノス・マスター)と直接戦ってその地位を奪うことですが、まあ、無理でしょうね。流石に貴方程度に負けるような人間が時空騎士(クロノス・マスター)に、多種族同盟を守る騎士になれる筈がない。鍛え直すことをお勧めしますよ、根本的なところから。――圓式比翼」


「くそぉぉぉ、舐めやがぁ――」


 ボクに対する暴言はそのまま断末魔となって断ち切られた。

 鞘に戻した左の太刀を抜いてからの二刀流の圓式――その剣にポートマスは全く反応できなかった。


 ……しかし、「流石に貴方程度に負けるような人間が時空騎士(クロノス・マスター)に、多種族同盟を守る騎士になれる筈がない」とは言ってみたものの、ギルデロイ辺りになら普通に勝てそうな気がしないでもないんだよねぇ。

 時空騎士(クロノス・マスター)の中では下から数えて三番目の強さだし。……一人はまだまだ伸び代があるし、もう一人は実戦を得意としていない元論文書きの宮廷魔法師さん……少しは恥じて鍛え直した方がいいと思うんだけど、余計なお世話かな?



「さて、雑魚は片付けました。お楽しみの時間といきましょうか?」


「闘気だけでなく霸気まで……あの、俺って先程のブルーマリーン王国の近衛騎士より弱いですから、もっとレベルを落としてくれませんか?」


「それはできませんよ。先程のブルーマリーン王国の近衛騎士より強いですから。ほら、闘気纏わせて、メアレイズ閣下から教えてもらったのではありませんか?」


「……はぁ、無様に敗北しても馬鹿にしないでくださいよ」


 ザックスは剣に武装闘気を纏わせて構える。一方、ベンヤミンと彼の従える魔物達は動く気配無しか。


「別に一対一である必要はありませんよ。そちらも構わず仕掛けてきてください、ベンヤミンさん」


「……本当にいいのですか?」


「いつも一対一ができるとは限りません。二対一、三対一……数的不利になる局面は沢山あります。それを卑怯というつもりはありません。……というか、それを卑怯というのであれば何故、わざわざ武闘大会のルールを変更したのかという話になりますよね」


「ベンヤミンさん、この人は頭数を揃えれば勝てるような相手ではありませんよ。侮って挑めばさっきの近衛騎士の二の舞です。油断せず最初から全力で仕掛けましょう」


「分かりました」


「先程と同じです。どうぞ、お好きなタイミングで掛かってきてください」


「では、お言葉に甘えて。――サザンラス!」


 死霊騎士(デスナイト)が仕掛けてくる……けど、それよりもザックスの方が早い。


「俊身×神速闘気! 刃躰×武装闘気!」


「速度を上げて接近戦に持ち込むと見せかけて、刃躰を応用した飛斬撃に武装闘気を纏わせての遠距離攻撃ですか。基本に忠実ですわねぇ」


「闘気も八技も習ったばかりですから! 先制攻撃は終わりだ、後は任せますよ! 死霊騎士(デスナイト)さん」


 ザックスが空歩で上空に飛び上がった瞬間――黒い靄を纏わせた大剣を上段に構えた死霊騎士(デスナイト)が一気に剣を振り下ろしてくる。


「――なかなか重い一撃ですね」


「サザンラスの斬撃を受け止めるのですか!?」


「そりゃ、受け止めるだろうよ。だが、双刀で受け止めたのが運の尽き、武流爆撃×神光闘気!」


 上空に飛び、そのままボクの背後に回っていたザックスが内部破壊の一撃に神光闘気を織り交ぜて放ってくる。


「おいおい、霸気を纏ってないのに耐えるのかよ!?」


「……流石に効きました。ちょっと痛いですねぇ」


「いやいや、ちょっと痛いで済む話じゃないだろ! もう一発食いやがれ! 武流爆撃×神光闘気!」


「流石にそれは芸がありませんよ。――武気衝撃」


 まずは、武気衝撃を剣先から放って死霊騎士(デスナイト)を吹き飛ばし、そのまま死霊騎士(デスナイト)に追い縋って圓式の斬撃を浴びせて絶命に追い込む。

 続いてボクを追ってきたザックスの方向に素早く切り返し、霸気を纏わせた圓式の斬撃を刃躰の技術を応用して飛ぶ斬撃に変化させて放つ。


 大気を擦過する際に生ずる白い輝きがそのままザックスに向かって飛んでいく。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ! 武装闘気×神堅闘気×鋼身!」


 ザックスは斬撃の速度を見て回避は不可能と咄嗟に判断したらしい。武装闘気と神堅闘気で防御を固め、更に身体を鋼鉄を凌駕する硬度に変える「鋼身」で身を固めた。

 しかし、込めた霸気は薄めとはいえ、圓式の斬撃を耐え切るとはねぇ。満身創痍だけど、まだ戦えるらしい。


「……流石は『世界最強の剣士』の斬撃、しかも霸気を纏った飛ぶ斬撃だから、耐えたのが奇跡なのか。だが、この折角のチャンスを不意にする訳にはいかない! 雷の牢獄(サンダー・メイデン)!」


「遅いッ! あの斬撃を耐えたのは本当に凄いと思いますが、残念ながらここまでのようですねぇ。圓式比翼」


 ボクを捕らえるように放たれた雷撃を俊身と神速闘気を組み合わせて回避し、鋼身を解除したばかりのザックスに双剣で圓式の斬撃を放って浴びせる。

 飛ぶ斬撃を浴びた時点で満身創痍だったザックスは圓式の斬撃を耐え切れずに撃破……とはいえ、霸気無しでボクの斬撃を一度でも耐え切ったのは大きな戦果だと思うよ。少なくとも、何もできないまま敗北したポートマスよりは時空騎士(クロノス・マスター)に相応しいとボクは思うんだけどねぇ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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