Act.9-188 武闘大会、開幕! 暴風雨のバトルロイヤル。 scene.3
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
「「「「「「魂魄接収」」」」」」
「『「六魔修羅道』の最高幹部、六魔将の一人ゾア=モンストルが開発した魔法ですか。アイゼンがワイバーンを、サッフォスが隠姿避役を、ファルジェスが突衝犀を、ダイスンが一撃熊を、ヴェンドルが金剛猩猩を、ゼッケが大怪鳥を……それぞれの魔物の力をその身に宿したようですね」
「どうだ! 怖気付いたか!!」
「まさか? その程度の魔物、私達はいくらでも屠って進んできた。ハーフレイドのボス程度の魔物を『魂魄接収』してから粋がってください。――まあ、この程度でいいでしょう。武装闘気重掛・藍黒十二刃」
ツヴァイハンダーの《雪》、大太刀の《月》、レイピア の 《風》、フランベルジェの《花》、タルワールの《朧》、ソードブレイカーの《空》、ファルシオンの《天》、ズルフィカールの《光》、クレイモアの《泡》、パンツァーシュテッヒャーの《霧》の十本の剣に二重に重ね掛けした武装闘気を纏わせて縦横無尽に攻撃を仕掛けさせ、『銀星ツインシルヴァー』には更に覇王の霸気を纏わせる。
十の剣で甚振って少し弱ったところを双剣で仕留める……くらいのつもりだったんだけど、まさか脳波で遠隔操作する十の剣で仕留める寸前まで追い込んでしまうとは、ちょっと強く見積り過ぎていたかもねぇ。……些か拍子抜け過ぎた。
「なんだよ、この化け物じみた強さは! 俺達も強くなっている筈なのにッ!」
「そりゃ、貴方達が強くなっているように同じだけの時間が与えられているアネモネ閣下も、俺も強くなっていますよ。……しかし、これなら俺が相手してあげた方がまだマシな戦いになっていたかもしれませんね。強くなったって言っていたからはてさてどんな化け物がと少し怯えていましたが、杞憂で終わって良かった」
「終わってませんからね。彼らは前座、親玉の『六魔修羅道』には猛者が揃っていますからね。まあ、流石に元旦から戦争はしたくないですし、明日ちょっとゼゲファ=トラス大森林に足を伸ばしますねぇ」
一応、『管理者権限』を持っている可能性があるから何人か連れて行った方がいいかもしれないねぇ。とりあえず、臨時班の編成を考えて参加が可能か確認を取ってみようかな?
「さて、お遊びはここまでにしましょう。圓式比翼!」
膨大な覇王の霸気を纏わせた双剣で流れるようにアイゼン、サッフォス、ファルジェス、ダイスン、ヴェンドル、ゼッケを撃破する。
戦闘の一部始終を見ていたヴァーナムとイルワがアイゼン達を拘束するために武闘大会不参加の冒険者を動かしたようだし、捕縛については問題ないと思う。……ただ、問題なのは彼ら自身も知らないうちに仕組まれていた魔法の方かな? まあ、遠隔操作で最適のタイミングで発動してくるだろうし、戦闘が終わったところで解除すればいいや。まあ、いっそそのまま魔法を発動させてもいいんだけどねぇ。
どちらにしろ死刑囚なんだし、刑に処せられて死ぬか自爆するかの違いでしかないし。
◆
丁度十五分が経過したタイミングで、アトラマがクレスセンシアを、エドヴァルトがノイシュタインとオスクロを連れて合流、なんとかヴァケラーがだった一人でボクと戦うという事態は避けられた。まあ、それはそれで楽しいバトルを楽しめたとは思うけどねぇ。
「……エドヴァルトさん、竜舞を積んで、龍宿魔法まで発動した状態で来るなんて流石に大人気なくありませんか?」
「いや、これだけ事前準備をしても全く勝てる気がしないんだが」
「ノイシュタインさん、オスクロさん。明けましておめでとうございます。こちらにいらしていたのですね」
「ああ、武闘大会と聞いて今の我の実力を確かめたいと思って参加させてもらった。それに、もしかしたらアネモネ殿と戦えるかもしれないという期待もあってな」
「……ノイシュタインさんが参加したら普通の武闘大会では確実に優勝すると思いますけどね。掠るだけでも敗北する固有魔法なんて勝てる訳がないじゃありませんか。というか、大抵の相手は掠らせる必要すらなく穂先を向けただけで消滅してしまいますし」
「まあ、流石にこのような大会で血を流すような無粋な真似をするつもりはないがな。こちらの世界の魔法で創り出した光の槍を使ってどこまで戦えるか試すつもりだったが、アネモネ殿が相手となれば本気で挑むしかない。『聖法・天命の神槍』を全力で使わせてもらうぞ」
これだけの人数差で更に『聖法・天命の神槍』まで使われる。……流石にアネモネじゃキツイような気がしないでもないけど。本当に容赦ないよねぇ、いくら徒党を組んでいいとはいえやり過ぎじゃない? どんだけ優勝したいんだよ。
「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。クレスセンシア様、お噂は伺っておりますわ。Sランク冒険者で女性のみで構成されたパーティ『紅の華』のリーダーにして、緋剣流と呼ばれる剣術を編み出した猛者だとか。お会いできる日をとても楽しみにしておりましたわ」
「えぇ、私も各地で噂は聞いていたわ。それほどの実力なら私の率いるパーティ『紅の華』にも相応しいって。どうかしら? 男子禁制で女性ばかりだから同性同士気軽な職場だけど」
「そうですわねぇ……私、最近は忙しくてなかなか冒険者の仕事もできていないのですよ。何とか資格剥奪されないギリギリを狙って仕事を年に数回受ける程度ですし」
「冒険者ギルドの依頼になる前に元凶の迷宮を叩き潰したり、他国と戦争したり、冒険者ギルドの枠に収まらないことを商会経営などの業務と並行してやっていたら、そりゃ冒険者の仕事に割く余裕は……いや、どうなんだろう? というか、俺からしたらまだ冒険者やっていることの方が驚きですけどねぇ。……そこまで維持する必要があるならヴァーナム本部長に特例措置を敷くように要請すればいいのに」
「特別扱いはダメですよ。……まあ、正直メリットは薄れてきましたが、持っていて損はない資格ですし、折角ここまで続けてきたのですから失効するのも何だか惜しい気がしていまして。……話を戻しましょう。『紅の華』への所属ですが、今のところはそこまで利益を感じません。ですが、もし、私に勝てるほどの力をクレスセンシア様がお持ちだと証明できれば仲間に加わりましょう。しかし、こういうの久しぶりですねぇ。美空さんの勧誘を思い出します。あの時は月紫さんが暴れ回って私にターンは回ってこなかったので、こういう勧誘、一回くらいは自分の手で捻り潰してみたいんですよねぇ」
「うわぁ、思考が既にドSだ。……怖っ! 俺知ぃらない〜!」
「ただし、そちらが条件を出すならこちらも一つ条件を出させて頂きます。条件はもし私が勝てば一つ私の言うことを聞くこと。……先にそちらが条件を出したのですから、今更引くなんて無粋なことはしませんよね?」
「……分かったわ」
「うわぁ、悪魔の契約だ。こんな不平等な条件、俺なら絶対飲まないよ。……しかし、どんな要求をする気なんだろ?」
「そんなことより、とっとと始めましょう。私にもあんまり時間がありませんからね?」
「その前に一ついいか? ノイシュタイン卿、先程『聖法・天命の神槍』を使うと言っていたが、それはやめた方がいい。アネモネ閣下は光を自在に操れる……その力を使われれば、最悪ノイシュタイン卿の力を悪用されて俺達にも被害が出かねない」
「……うむ、それは困ったな」
「お望みなら光操作は使いませんよ。……ただ、召喚されたばかりの頃とは違います。ルヴェリオス帝国で対峙した時からノイシュタイン卿も私も強くなりました。それに、ヴァケラーさん、古代竜のオスクロさん、霸気は扱えないとはいえ一通りの闘気は扱えるようになったエドヴァルトさん――猛者がゴロゴロ転がっている戦場で、剣士のまま勝てるとは微塵も思っていません。――なので、他の方々には申し訳ありませんが……最初から全力で捻り潰しに行きます!」
「――ッ! 全力って……しかも、俺、強キャラみたいに一番に名前呼ばれたし、絶対にノイシュタイン卿の次くらいに目付けられている! 俺ってただの雑魚冒険者ですよ! スカウト課に所属して新人冒険者の強さを把握するだけのチンピラですって!!」
「《血動加速》、《八百万遍く照らす神軍》派生《太陽神》! 覇道の霸気――最終領域・覇王神の領域まで強化ッ! 続いて求道の霸気――最終領域・求道神まで強化ッ! 圓式の斬撃に加え、《血動加速》による加速と、《太陽神》による移動速度の基礎の光速化。これが、今出せる全力です。さあ、皆様! お好きなタイミングで掛かってきてください」
「野生のラスボスが出現した……っていうレベルじゃないですよ、それ! 絶対、対神用の決戦モードじゃないですか! こんなのバラバラに戦ったら絶対に勝ち目がないですよ! 連携が必須です!」
「分かっておる。……プレイグの力は状態異常、対策はされておるじゃろうし、ここはネハシムの力とオスクロの力で戦うのが良いか」
ノイシュタインが天使の翼を出した。条件が四つであることを除けば自由度は極めて高い。
それに、オスクロの古代竜の力もある。
しかし、エドヴァルトは末裔だから少し弱め、ノイシュタインは本人の強さに加えて総軍であることから古代竜以上の力が出せるとはいえ、闇属性の古代竜を実質三人相手にすることになるとは……どこの神話の戦いだよ。って言いたくなるねぇ。
まあ、向こうが古代竜の力を使うならボクも古代竜の力を使って迎え撃てばいいんだけど。
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