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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-177 激動の一年の終わりと新年祭 scene.1

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


 新年をどのように過ごすか、と問われた時に「職場で過ごす」と答えるのはやっぱり少数派だ。現実世界と同じようにこの世界でも仕事納めの概念はあって、新年は家族と過ごすことが一般的である。

 じゃあ、一斉に休めるかと言われるとそういう訳にはいかない。使用人がいなければ王宮の仕事が成り立たなくなってしまうからねぇ。それは、王宮に限らず貴族についても同様のことが言える。そのため、交代制で休みを取るのが一般的である。


 そう、一般的であるんだけど、今年の王女宮では別の方式を採用して、帰省組には十二月二十九日から帰省してもらい、一月四日から王女宮での仕事を再開してもらうことにしている。どうせならみんな公平に新年の休暇を満喫してもらいたいからねぇ。

 これはプリムラと相談して十二月に入った辺りから決めておいた話だ。


 「やっぱり新年は家族と一緒に過ごした方が良いのではないか」という意見にプリムラも大いに賛成してくれたけど、行儀見習いを含めた侍女だけでなく王女宮の使用人の大半が帰省してしまうとボク達居残り組に大きな負担が掛かってしまうのではないかとプリムラは危惧していた。

 この点は居残り組に加えて、各宮から何人か穴埋めの使用人を派遣してもらえないかと統括侍女のノクトに打診して良い返事をもらえたことを伝えて解決。


 しかし、使用人達に掛かる負担を心配して気遣いの言葉を掛けるなんて本当に素晴らしいお姫様だよねぇ、プリムラ。

 本当にいい子に育っていると思うよ。これも、プリムラに指針を示したペチュニアの功績とプリムラ自身の頑張りの賜物だねぇ。よく真っ直ぐ素敵なお姫様に育ってくれた。……誰だよ、こんな素敵なプリムラのことを肉饅頭なんて呼んだ奴!


 居残り組は白花騎士団の護衛騎士を除くとボク、ソフィス、シェルロッタ、オルゲルト、メルトランの五人。護衛騎士達については警備の観点から交代制での帰省をお願いしている。流石に戦力を一気に減らすのは拙いからねぇ。

 ソフィスは『三千世界の烏を殺し』を使えることに理由に、王女宮で侍女の仕事をしながら帰省するつもりだと伝え、ノクトからの許しを勝ち取ったらしい。まあ、帰省しても宰相のアーネストは王宮詰めが決定しているし、ニルヴァスも勉強のためにアーネストに同行して学ぶことになるし、ミランダも伯爵夫人として公式の場に出ないといけないし、で結局家族は誰もいないって状況になるんだけどねぇ。


 ということで十二月二十八日、帰省前最後の帰省組の関わる重要な仕事はルークディーンとプリムラのお茶会の給仕ということになる。

 ……まあ、関わると言ってもお出迎えくらいで、給仕はボクとシェルロッタとオルゲルトの三人で行うんだけどねぇ。


 シェルロッタの姿を見て少しだけ動きがぎこちなくなってしまったものの(そりゃ、シェルロッタの正体がプリムラの叔父だって知ったらビビるか)、改まった挨拶の後はもうお二人とも穏やかに会話をしていて、気づいたらルークディーンの成長に少しだけ感動していた。

 いや、だってさぁ、初めてルークディーンとプリムラの初めてのお茶会が春で……あのカッチカッチで緊張しまくって碌に喋れずプリムラにリードされて挙句に修業が趣味ですくらいの勢いだった少年がそれから一年も経たないうちに僅かに緊張しているものの、それでも柔らかく笑ってプリムラと歓談できるまでに成長を遂げているのだと思うと僅かでも心が動かされるよ。いや、プリムラと釣り合う男になりたいならそれくらい当然って思っているところが大いにあるけどねぇ。シェルロッタの方がそう言った気持ちは強いかな?


「少し前にヴァルムト宮中伯領で魔物騒ぎがあったわよね? ルークディーン様は大丈夫だったの?」


「幸い、アネモネ閣下と陛下のご尽力で無事に済みましたが、あのままいけば宮中伯の屋敷にも魔物が攻め込み、ヴァルムト宮中伯領は壊滅していたのではないかと父は仰っていました」


「お父様もヴァルムト宮中伯領に赴いたの?」


「公務を抜け出したらしくアネモネ閣下が物凄い恐ろしい形相でお怒りになっていました。……その際にアネモネ閣下に修行をつけて頂く機会に恵まれました。……あの方のように、とはいかないでしょうが、俺……じゃなかった、自分もいつか王女殿下を守ることができる立派な騎士になりたいという気持ちが強くなりました」


「お父様、ヴァルムト宮中伯領のことが心配だったのかしら?」


「……必ずしもそうとは言い切れないところがあの方の非常に残念なところですね。アネモネ閣下からヴァルムト宮中伯領で起きたことについて一部始終を聞いております。そういえば、ルークディーン様にシェルロッタの正体についてもお話ししたようです」


「シェルロッタが、叔父様だという話を? そうよね、アネモネ閣下もご存知なのよね」


「アネモネ閣下は、もし仮に王女殿下の降嫁が許されるのなら、侍女としてヴァルムト宮中伯家に同行を認めてもらえないかと頭を下げられました。父も王女殿下から大きな信頼を寄せられている侍女に来て頂けるのはとても心強いと思っていますし、アネモネ閣下が願いに自分を含めヴァルムト宮中伯家一同とても共感しています」


「姫さまにお話するのが遅れておりましたが、ルークディーン=ヴァルムト様との婚約については全て姫さまのお言葉で決まります。陛下は姫さまが良いと思った道を応援すると仰っておりました。……愚問であることを承知の上で問わせて頂きます。姫さま、どうなされたいですか?」


「私は、ルークディーン様と婚約を結びたいわ」


「承知致しました。陛下にはそのようにお伝えしておきます。……良かったですね、ルークディーン様」


 今回、王女宮にお茶会で呼ばれた時点でルークディーンが婚約者に内定したと考えるのが普通の流れではあるんだけど、実際のところこの場はプリムラの意志を問う場としてセッティングされていた。

 ラインヴェルドというある意味で大きな障害が消えた今、婚約の是非はプリムラの言葉一つで決まる。まあ、ルークディーンと親密な関係を築いているプリムラが婚約の話を無かったことにする可能性は皆無なんだけどねぇ。


 その様子をシェルロッタは穏やかな表情で見つめていた。


 まだまだルークディーンはシェルロッタの、カルロスの期待する水準に達していないのかもしれない。

 でも、ルークディーンはこの場で「自分もいつか王女殿下を守ることができる立派な騎士になりたい」と自らの願望を口にした。その言葉を胸に、成長していきたいという意思をシェルロッタもボクと同じように感じた筈だ。

 そして、その願いを抱いて精進を続けていけばきっとプリムラに相応しい存在になることができる。そう期待させるものが、春からこの冬の日までにルークディーンが示している直向きな努力の姿勢の中に確かにあったからねぇ。



 昨年まではがっつり参加していた聖夜祭も今年は開式と閉式に挨拶を述べて、最重要な儀式にリーリエとして参加し、後はほんの少し手伝うだけで終わりという簡単な関わりだけで終わった。

 その代わり白夜達の仕事ががっつり増えていたんだけどねぇ。


 王族が関わっていた時代の聖夜祭は大聖堂に移動して教皇や筆頭枢機卿(枢機卿以上の上位聖職者なんだけど、概ね教皇や筆頭枢機卿の仕事だったらしい)からの洗礼を王家揃って受けられ、貴族達の前で陛下がお言葉を述べ、儀式開始。

 その後、貴族達からの祝いの言葉があり、プレゼントの目録読み上げがあり、その後、大聖堂を出て城下を一周するパレードを行い、ぐるりと回ったら今度はバルコニーに出て王家一同が揃った姿を国民に見せて陛下がありがたいお言葉を述べられる。そして小休止という名のお色直しをしてからパーティに行く……っていう流れだったらしい。


 その後変遷を重ね、現在は厄祓いを願う百八発の除夜の花火が打ち上げられたり、蝙蝠型の提灯が街にぶら下げられたり、とどんな魔改造がされているんだよ! っていう内容になっている。しかも、リーリエ、マリーゴールド、ネメシア、ラナンキュラスを信仰する各派が毎年議論を重ねて内容を変更していくものだから、来年も同じ内容である保証はどこにもないんだよねぇ。


 肝心の儀式の内容は、現在は神に扮する(というか、一応、神なんだよねぇ? ボクって。実感ないけど)ボク……リーリエが白夜と向き合い、黒百合聖女神聖法神聖教会を代表した白夜が五穀豊穣、国家安泰などの願いを奏上し、ボクが聞き届けるという、神と人との対話を再現した形になっている。まあ、祈ってもボクに神様パワーはないから叶えられないんだけどねぇ。


 本日はラピスラズリ公爵邸で起床し、ルーティーンワークのトレーニングを終えて朝食を取った後、いつもなら王女宮に向かうところを黒百合聖女神聖法神聖教会・ブライトネス統括教会に向かったので王女宮筆頭侍女の執務は後回しになっている。この後、いつもは優先度を下げているビオラの仕事や領地の仕事を進めるつもりなので、王女宮筆頭侍女の職務は今日の最後に行うということになるねぇ。

 じゃあ、なんでそんな流れにするかというと、大晦日の夜はしっかりと王女宮で過ごしたいから。明日の早朝に用意しているサプライズのために色々と準備があるからねぇ。そのために、王女宮に仕事に行く前に仮眠を取っておくつもりだよ。


 スカーレット達は既に帰省している。「家族皆さんで食べてくださいね。今年はお疲れ様でした。新年早々出てきてもらうのは心苦しいけれど頼りにしているわ」という気持ちを込めてミッテランの贈答用チョコレート詰め合わせを持たせた。……何故か「ローザ様のお手製のチョコレートの方が良かったのに」みたいな顔を揃ってされてしまったけど(特にヴィオリューテが顕著だったねぇ)、こんな素人のチョコレートより絶対に高級菓子店ミッテランのチョコレートの方がいいに決まっているよねぇ。


 家族で本当に食べても大丈夫なのか、と恐る恐る手を伸ばしてチョコレートを食べるよりも、安心安全のチョコレートを家族で囲んで楽しい新年祭を送ってもらいたい。……この気持ち、何で通じないのかな?

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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