Act.9-173 次代の魔王と、大迷宮攻略。 scene.4
<一人称視点・リーリエ>
「時間もそこまである訳じゃないし、ここからもう少しだけギアを上げていくよ」
といいつつ、「龍宿魔法」はここで解除。再び「龍宿魔法」を使って戦う相手は既に決めているからねぇ。
「いい度胸だ! アスカリッド様を惑わせた貴様への恨み、今ここで直々に晴らしてやる! 淫魔喰らい」
エイレィーンは膨大な魔力を魔槍に込め、突進刺突を仕掛けてくると同時に実体あるエネルギーを無数の顔のように変化させ、その顔で噛み付き攻撃を仕掛けてくる。
噛み付いた相手から生命力を根こそぎ奪い取る淫魔の技、「淫魔喰らい」。厄介な技に違いないけど、実体あるエネルギーの正体は魔力――つまり、「術式霧散」で消滅させることができる。
「怒りで我を忘れ過ぎだよ。――雷鳴迅雷八卦・骨砕猛打衝」
双剣を鞘に戻して裏武装闘気で棍棒を創り出す。得物に聖属性の魔力と稲妻のように迸る膨大な覇王の霸気を纏わせた状態で覇王の霸気の力で強化した神速闘気で雷の如き速さで移動し、エイレィーンの突進刺突を躱しながら得物を振り抜き、エイレィーンを一撃で粉砕した。
加速した時点でエイレィーンは完全にボクの姿を見失っていたし、攻撃を躱すのは容易だった。
素の耐久力もそこまで高くないし、あれだけの威力の攻撃を直撃で浴びせられたら、そりゃ耐え切れる訳ないよねぇ。
六花に続いてエイレィーンも撃破され、三対一という数的優位が一気に打ち砕かれた。
「鳥黐ノ粘糸」
真っ向勝負では勝てないと判断したのかレイチェルは粘着力の高い糸で蜘蛛の巣を掌から無数に放ってくるけど、血動加速や光速移動を使うまでもなく俊身と神速闘気で十分対応できる。
空歩で移動すれば空中に足場が確保できるとはいえ、このまま放置していたら戦場となっている一帯が粘糸に埋められてしまうし、次の攻撃で仕留めるとしますか。さて、どの技にしようかな?
「燃え上がる蜘蛛の巣」
……なるほど、粘糸には粘着力の他に高い可燃性の性質も含まれているのか。かなり高い可燃性があるらしく、瞬く間に炎上――燃え盛る領域が戦場に現れた。
本当に糸の使い方が個性的で面白いねぇ。まあ、対処方法が無いって訳じゃないんだけど。
「圓式独創秘剣術 三ノ型 火喰-Higurai-! からの! 渡辺流奥義・颶風鬼砕!」
『漆黒魔剣ブラッドリリー』を鞘から抜き払って霊力の炎をその剣に宿し、その火を纏った剣で切り裂くことで火で火を絡め取り、その火を剣に宿した火の中に吸収し、あらゆる炎を切り裂く圓式独創秘剣術三の型で炎を切り裂き、そのままレイチェルに肉薄――炎属性を付与した『漆黒魔剣ブラッドリリー』に鋭い風の刃をイメージした霊力を纏わせ、勢いよく抜刀して横薙ぎすると同時に爆発させて周囲全てを斬り捨てる。
爆発的な破壊をもたらす灼熱の風と、鋭く切り刻む灼熱の風をその身に受けたレイチェルは耐え切ることができずにそのままポリゴン化して消滅。残るはアスカリッドとエリーザベト、エドヴァルトの三人か。
「ありゃりゃ、俺以外の幹部、全滅かよ。だから言ったのに、勝てないって」
「わざわさボクの前に来てくれるなんて有難いねぇ。追いかける手間が省けたよ」
「まあ、本気で追いかけられて逃げ切れる可能性なんて皆無だしな。光の速度まで加速できるんだろ? スピード勝負で勝てる訳がねぇじゃないか」
「……ベースが光の速度になるってだけだから更に速度を上げる方法はあるんだけどねぇ。例えば、光速移動と血動加速の組み合わせとか、神速闘気による敏捷強化とか、俊身みたいな体術との組み合わせとか」
「その上、これ以上速くなるのかよ! それに、少し戦いを見せてもらったが、戦い方のバリエーションが異常なくらい広い。……こんだけ人数揃っているのにトドメの方法が全員別系統の能力って実際にできる奴聞いたことがねぇよ。大抵一系統極めるのが限界、二系統以上極める場合も分散しちまうから精々メイン一つ、サブがいくつかってのが関の山だ。それを、複数極めるとか……ああ、戦いたくねぇ。戦う前から答えが分かりきっている。でも、挑む以上はやっぱり勝ちたい、勝てなくても爪痕を残したいんだ! 竜鱗!」
竜人族の固有能力である竜鱗。鉄壁の防御と魔法防御を有し、正攻法での突破は極めて困難。
辺境――つまり、対人類の最前線を守護する守護者ということだけあって、エドヴァルトは強い。最強の盾と、剣士としての実力――つまり、最強の矛を兼ね備えた人材。
魔王軍幹部最強の称号は伊達ではない。
だから、別に弱いってことはないんだよ……ただ、フォルトナ王国の上位勢と戦って勝てるほどの実力はないっていうだけで。
「竜舞! 竜舞!! 竜舞!!!」
まあ、当然積んでくるよねぇ、積み技。これでただでさえ強いエドヴァルトが更に強化された。
物理攻撃、魔法攻撃、敏捷の三つのステータスは「竜舞」を積んで強化し、物理防御と魔法防御は「竜鱗」があるおかげで鉄壁。隙なんでものは存在しない――そう思うじゃん。
「龍宿魔法」
そして、「龍宿魔法」。〝暗黒竜〟オスクロの血を受け継ぐ竜人族達の魔力にはオスクロの魔力が混じっていて、その魔力を使って「龍宿魔法」を使えるらしい。
といっても、直接魔力を与えられていないから使える技に制限が出るのが普通なんだけど、エドヴァルトはある種の先祖返りのようなもので、その制限がない。ただ、流石に古代竜並みの威力を出すことはできないんだけどねぇ。
「暗黒竜の咆哮!」
「初っ端から飛ばし過ぎじゃない? 龍宿魔法――岩地竜の咆哮!」
ボクが使える「龍宿魔法」は五つ。実はナトゥーフとポーチヴァからも魔力をもらっているんだよねぇ。
残念ながらオスクロとは魔力がもらえるほど親密な関係ではないから闇の古代竜の力は使えないんだけど。
「おいおい、竜舞を三つ積んだのに拮抗するのかよ! ってか、さっき氷の古代竜の力を使っていたよな? ってことは二体の古代竜の力を使えるのかよ?」
「……その様子だとボク達の声までは拾えていなかったみたいだねぇ」
拮抗したままでは勝機がないと判断したエドヴァルトはブレスを切り上げて竜化して飛翔し、再度「暗黒竜の咆哮」を放ってくる。
竜化した方が「暗黒竜の咆哮」の威力が上がるから、さっきよりも魔力を込めた方が良さそうだねぇ。……あっ、そうだ。
「暴風竜の咆哮! 火竜帝の咆哮!」
「おいおい、無茶苦茶だろ! 両掌からブレスを吐くっていうのも意味不明だし、溶岩流のブレスと暴風を融合して威力の高い灼熱のブレスに変化させるとか……無理無理無理無理! 直接戦って勝てるかよ!」
今度はブレス勝負を放り投げて全力で逃走を選んだエドヴァルト。……逃す訳がないじゃん。
空歩を駆使してエドヴァルトに接近し、「火竜帝の鐵拳」を左手に、「白氷竜の鉄拳」を右手にそれぞれ発動――極寒の拳と灼熱の拳を交互にエドヴァルトに浴びせる。
「俺の竜鱗が……」
「温度差による脆性破壊……まあ、そこまでせずとも込める武装闘気と覇王の霸気をもう一段階高めれば強引に破壊できたんだけどねぇ。それじゃあ、ご退場頂こうか? 魔龍神の咆哮」
「嘘だろ、まさか、伝説の『原初の古代竜』の力まで……勝てる訳がねぇぜ」
古代竜であるナトゥーフの己の渾身全力のブレスを収束した一撃を大気から吸収したマナで強化した強化版の模倣。まあ、つまり「龍神の怒號」の強化版なんだけど、威力はブレスを収束させずに放つにも拘らず「龍神の怒號」を凌駕する威力。……流石にナトゥーフが放つ「魔龍神の咆哮」に比べたら威力が数段落ちるんだけどねぇ。
エドヴァルトが消滅したのを確認し、アスカリッドとエリーザベトが潜伏する高層ビルを目指す。……やばい、悠長に戦い過ぎて霸気が切れてきた。これ、負けるかもしれないねぇ。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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