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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-170 次代の魔王と、大迷宮攻略。 scene.1

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


「ボクが気持ち悪いと思ったのは、内容よりも天真爛漫を装ったこのチグハグとした文章の方ですねぇ。まあ、狙ったんでしょうけど。ノクト先輩、試しにこの手紙を読んでみてください」


 『統合アイテムストレージ』から取り出したのはファイスがボクに宛てて書いた報告書。実はダメな手紙の例に使えそうだと取っておいたんだよねぇ。

 この次から次へと話題が移ろっていく感じ、報告書としては最低級の品だけど、読み物とか、失敗例と考えればかなり面白い品なんだよ。ちなみに、ボクは割と好きな方。だけど、ファイスからは二度と報告書を受け取りたくないと思った。


――――…――――…――――…――――…――――


 (以上長文)……今日は隊長ともう一人の隊長と副隊長ともう一人の副隊長とウォスカーと臨時班の任務に行った。


 アクアさんももう少し女の子らしくすれば良いと思うんだけど、絶対にその方がモテるよとアドバイスをしたら隊長に殴られた挙句、アクアさんに絞め技を掛けられた。


 本当に隊長とアクアさんって似ていないよね。本当に転生者? なのかな? 飴玉を噛むし、容赦なくぶん殴ってくる。隊長はそんなことしないような……あれ? 大体当たっているかもしれないような。どうなんだろう?


 後、アクアさん、すげぇ食う。小さいのに隊長とファントさんとディランさんと並ぶと半端ない。どこに食べ物が消えているのか、超気になるところ。本人は胃だって主張してるけど、絶対異次元に繋がるような、何か他の別器官が備わっているんだと思う!


 ピンポイントで首が絞まって、マジで昇天するかと思ったよ。だってアクアさん、女の子の癖に超容赦ないんだもん。馬車探してる時、背中にあたってた肉付きが薄いってことを思い出して口にしたら、ガッチガチに縛り上げられた。

 その台詞がなくてもそうされたと思うってファントさん言ってたけど、よく分かんない。あ、縛られたのはこれが二回目ね! ほら、さっき書いたやつ。


 そうそう、さっきも書いたけどさ。ほんと、チンピラの『スカァ・レット』もひでぇ目に遭ったんだぜ。アクアさんに地面に沈められて、揃って説教されたうえ、最後は手刀落とされるとか酷くない? 

 しかも威力が半端ないの! ガツンっていったからね! 


 あれ、なんか同じ事繰り返し書いてる感じがするけど、ま、気のせい。俺は気にしないから、読んでる人も気にしないように! ……(以下長文)


――――…――――…――――…――――…――――


 少女のような拙い字で、何度も同じことが書かれていてループしているんじゃないかと錯覚する。推敲なんて当然されていない。

 ファイスは報告書を『友人や後輩への手紙』だと思っている節があるから、お喋りと同様に、思い付いたまま文字を書く。……これが、本物の天真爛漫な文章だと思うんだよ。


「これで隣国の大臣補佐をしておられているのですから、本当に恐ろしい話ですね」


「まず、本人が大臣の手駒を自称しているくらいヤバいですからねぇ。手駒って何だよ。……これはボク宛に届いた報告書ですが、そもそも何の意図があって送られた報告書かもさっぱり分からないんですよねぇ。報告を依頼したこともないですし、多分、総隊長に送る筈だったものを間違えてボクに送ったのでしょう」


「……つまり、報告の相手をそもそも間違えているということですか」


「それに比べると形こそフランクなものの情報を整理して飛び飛びになることなく書いているこの手紙は天真爛漫と言えるのか微妙なのではないかと思うのですよ、ボクは」


「……いやいや、これほどのレベルの手紙はなかなかお目に掛かれないと思いますが」


 やったねぇ! ノクトになかなかお目に掛かれない希少種判定されたよ! まあ、それはいいとして、極端過ぎる例を出したけど、マリエッタの手紙から戦略的なものを読み取れるのは確かなんだよねぇ。

 取り出したファイスの手紙と、マリエッタの手紙を『統合アイテムストレージ』に仕舞う。そして、ノクトに面倒を掛けたことを謝罪してから王女宮に戻った。



 今年はもう流石に予定外のイベントごとは発生しないよなぁ、例の迷宮攻略するにしてももう十二月二十七日だし、本当は今年中に終わらせておきたかったけど、この様子だと新年祭後に攻略かな? なんて考えていたボクだったけど、どうやら想定通りに事は運ばないようで……。


 十二月二十七日の午前九時ごろ、恒例となった授業を始めようというタイミングで王女宮にアポイント無しの来客があった。……まあ、アポイントメント無しに関しては注意しても改善してもらえないから諦めているんだけどさぁ、ブライトネス王国の王女のプライベート空間である王女宮を訪ねてくるんだから、せめてアポイントメントだけは取ってもらいたいよねぇ。


 来客はアスカリッド、エリーザベト、エドヴァルトの三人。顔触れを見るだけで何の用事か分かる。……いや、一通メール送ればいいだけじゃない?


「久しぶりじゃな、プリムラ王女殿下」


「久しぶりね、アスカリッド様。エリーザベト様もお久しぶりね。それで、そちらの方は?」


「魔王軍幹部の一人で今代の竜人族の族長を務めております、エドヴァルト=オークァスです。本日はお二方の護衛の名目でついてきておりますので、私のことはお気になさらず」


 流石にあの長身で大柄、筋骨隆々の武人であるエドヴァルトを無視するのは難しいんじゃないかな? プリムラも困った表情をしているよ。


「秋の園遊会で初めてお会いし、友人の一人もいなかった我の友になってくれた。本当はその一番の友人に真っ先に報告したかったのじゃが……今後のことも考えて最初の報告は多種族同盟の主要国の文官達とアネモネ閣下を除く各国首脳にさせてもらった。アネモネ閣下にはローザ殿から連絡を入れてもらえないだろうか? それに付随してお願いしたいこともあるからな」


「アスカリッドさんの最初の友人はわたくしですわぁ〜!」


「いや、エリーザベトは友人ではなく恋人じゃ! 今更友人に格下げはしたくない!」


「アスカリッドさ〜ん! 愛しています〜!」


「本当にお二人は仲が良いのね! それで、どのような報告なのかしら?」


「上質な百合、堪能させて頂きました。……この顔触れから大体の内容は想定できますが、アスカリッドさん、ご説明お願いします」


「うむ。まず、数日前に父上……魔王が攻めてきたのじゃが、リーリエ様……つまり、アネモネ閣下の尽力によりオルゴーゥン魔族王国に帰国させることに成功した。父上の目的は姿を消した我をオルゴーゥン魔族王国に連れて帰ることじゃったが、あの莫迦父上は我とエリーザベトが一緒にいることを見た途端に烈火の如く怒り狂い、面倒なことになったのじゃ。父上は頑なに結婚を反対し、アネモネ閣下にボコボコにされても納得しなかった。そこで、我は一対一の対決を魔王に挑んだのじゃ。魔族は力ある者が、強き者が尊ばれる弱肉強食の価値観を持っている。野蛮と思うかもしれないが、そういう文化だと納得してもらえたらと思う」


「人間の世界も魔族の世界にも真の平等は存在しない、と私は思っています。貧しき者はその日の暮らしも満足に送ることができず、莫大な富を得た者は、財を築いた者は豪奢な生活を送ることができます。お金もそうですが、血統にも同じことが言えます。プリムラ様の場合は、ブライトネス王家の血筋を引く故に王女の地位が保証されているのであり、私もラピスラズリ公爵家の令嬢だからこそ、地位が保障されているのです。魔族の場合は、その指標が力であるというただそれだけ。……別の価値観の中で生きる者にとっては野蛮なものに映るかもしれませんが、ある意味最も分かりやすい線引きなのかもしれませんねぇ」


「私、暴力はあまり良いものではないと思うわ。でも、その考え方を押しつけてしまうのは良くないと思うの。……私が安心して生きていられるのも、日々頑張って職務に励んで下さっている騎士の皆様のおかげだわ。もし、力を持つことを否定するのなら、騎士様達のことも否定してしまうことになるのよね。……でも、やっぱり私は……」


「そうじゃな。プリムラ王女殿下は何も間違っていない。いずれは、みんなが笑って暮らせる平和な世を作りたい、我もそう思っている。無論、大きな障害が立ち塞がっている状況ではあるのじゃが。……話を戻そう。我は魔王の座を賭け父上に挑んだ。もし、我が勝利したらエリーザベトとの婚約を認めること、我が敗北したらエリーザベトとの結婚は諦める、魔王の座を賭けた戦いの裏にはこういうやり取りがあったのじゃが、結果は我の完全勝利! 父上の一撃を真正面から打ち破って膨大な霸気を纏わせた聖なる斬撃を叩き込んでやったのじゃ! ということで、我はエリーザベトとの婚約を認めさせ、魔王となった。無論、我はまだ勉強中の身、正式に魔王を継ぐのはもう暫くしてから……マグノーリエ殿とプリムヴェール殿が女王と女王妃に就任するのと同時期になり、それまでは父上が魔王代理として治世を行っていくのじゃが」


「ええっと、それってつまりアスカリッド様とエリーザベト様の婚約が正式に結ばれたということよね! 良かったわ!」


 我が事のように二人の恋の成就を祝福するプリムラ、可愛過ぎる!


「その報告をプリムラ王女殿下にしたかったのじゃ。……ここからは、アネモネ閣下への依頼なのじゃが、我がフォトロズ大山脈に辿り着く切っ掛けとなった【イストワーリ真大迷宮】の調査を閣下に依頼したい」


「いつ頃に迷宮到着をご希望ですか?」


「可能であれば昼くらいにはフォトロズ大山脈の最高峰まで来てもらいたい。それと、アネモネ閣下には是非一度オルゴーゥン魔族王国の王都に来てもらいたいという希望が父上達から出ている……嫌な予感がするが、来てはもらえないだろうか? フォトロズ大山脈の最高峰まで来てもらえれば、そこからはエドヴァルトの背に乗って入国してもらえば良い。……いや、《蒼穹の門(ディヴァイン・ゲート)》の方が良いのか?」


「そうですね、アスカリッド様も《白刃転移》のナイフをお持ちですし、そちらの方が手間が掛からないと思いますから、《白刃転移》の方が良いと思いますよ。アネモネ閣下にそのようにお伝えしておきますね」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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