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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-167 王女宮とラピスラズリ公爵邸のニコラオス聖祭。 scene.1

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


 本日はニコラオス聖祭当日。各地の教会にはそれぞれの教会で催されるイベントのために必要な賞品も配送済み、当日は参加しなくてもいいように取り計らってもらったので、今日は通常業務(王女宮筆頭侍女の業務に加えてビオラ関連の仕事……今日は各領地の視察と融資の話が二、三個入っていたねぇ。後、ビオラ系列の店の聞き取り調査もいくつかしようと思っている。仕事をする中で困っていることとか確認したり、こういう本店と傘下の具な情報共有が風通しの良く働きやすい職場の構築に繋がると思っているんだよねぇ)を終えてから、アクアとネストと共に恒例のミニスカサンタのプレゼント配りをするつもりでいる。楽しみだねぇ。


 今年は王女宮筆頭侍女になってから迎える初のニコラオス聖祭ということになる。

 ミニスカサンタさんじゃないけど、日頃から勉強に、仕事に、それぞれのするべきことをしっかりと頑張っているみんなを労いたいということで王女宮で働いている全使用人と白花騎士団の皆様に宛てたプレゼントを用意してきた。明日になってしまうと意味が無くなってしまうから、王女宮の職務をこなしつつ今日中に全部配り終えてしまいたいと思っている。


 ……まあ、流石に高いものだと気を遣わせてしまうし、ビオラ系列で使える商品券とチョコレート菓子、ガラスペンや万年筆などの筆記具のセットみたいな割と味気ない感じのプレゼントにはなってしまっているんだけど。

 ただ、これはあくまで使用人全般向けで、料理人達にはまた別のプレゼントを用意したんだけどねぇ。


 例外に含まれるのは料理人達だけではない。ソフィスとメアリーには新作の短編小説(非販売品)とチョコレート菓子、ビオラ系列で使える商品券のセットを、プリムラには新作のドレスとそのドレスに似合う宝飾品のセットをプレゼントさせてもらった。


 そもそもプリムラにとっては馴染みのないニコラオス聖祭。そのプレゼントと言われても驚きなのに、その内容がドレスと宝飾品となれば、まあ、流石に驚くよねぇ。

 ボクの懐事情を気にしつつも、最終的には笑顔で受け取ってもらえたから良かった。……うん、もしプリムラに受け取ってもらえなかったら多分一日中落ち込んでしまうことになっただろうなぁ。


 ほんの僅かに嫉妬の表情を見せたヴィオリューテには今後の淑女教育で優秀な成績を残したらオーダーメイドのドレスと宝飾品をプレゼントすると約束したら俄然やる気を出してくれた。

 まあ、最終的にはどこまでの進展具合であれドレスと宝飾品ぐらいはプレゼントするつもりだけどねぇ。でも、ヴィオリューテにはやっぱり自分のために頑張って欲しいなぁ。


「オルゲルト執事長にはこちらを」


「私の分もあるのですね。ほう、良い万年筆ですな。それにお菓子も、ありがとうございます。しかし、これだけのプレゼントの準備、大変だったのではありませんか?」


「いえいえ、少し昔を思い出すことができて楽しかったですよ。前世の頃はよく得意先に季節になると手作りのお菓子を贈ったりしていましたから。まあ、ビオラでもそういったことはやっているんですけどねぇ。でも、昔に比べたらまだまだ少ないですけどねぇ。……あっ、でも教会のイベントごと用のプレゼントの用意みたいなことはしていなかったので、今年が全体数で言えば前世を含めても最大規模かもしれませんが。その分、教会の催しごとの方にはビオラで販売している既製品なども混ぜているので楽させてもらっている方ですけどねぇ」


「……お嬢様が百合薗圓様だった頃はどれくらいのプレゼントを一度に用意していたのですか?」


「そうだねぇ……友人知人、援助していた個人や企業にも配っていたから、千じゃ効かなかったねぇ。毎年二、三日くらい時間を掛けて手作りしていたから結構大変な行事だったよ。まあ、それはそれで楽しかったんだけどねぇ。あっ、そうそう、これシェルロッタさんへのプレゼント。勿論、ミニスカサンタさんのプレゼントは別で準備しているよ。……本当はシェルロッタさんにも参加して欲しいんだけどなぁ」


「そんな物欲しそうにしても絶対にやりませんよ! ……というか、これ、マーメイドラインのドレスですよね!! しかも、かなり高級なシルクを使った。それに、宝飾品もアレキサンドライトを使った高価なものですし。こんなの受け取れる筈がありませんし、仮に受け取ったとしても着る場が……」


「別に大したものじゃないよ。それと、着る場所がないだっけ? ……必ず作るよ。絶対に、このドレスを着てプリムラ様と一曲踊れる場を作る。勿論、今はまだ無理だけど……どういう形になるかは分からないけど」


「お気持ちだけでも十分嬉しいですけどね。……お気持ちだけで、と言っても納得してもらえないでしょうからありがたく受け取らせて頂きます。そうですね、私もいつか、もし許されるなら姫さまと一曲踊りたいですね」


 平民と一国の姫、その間に存在する溝は大きい。

 でも、非公式な場であったとしてもシェルロッタとプリムラ――二人が踊れる日が来るといいなぁ、と思う。プリムラもシェルロッタの正体を知っているし、案外早くその時が来るかもしれないねぇ。


 ……まあ、最悪五月蠅い貴族共は根こそぎ黙らせればいいんだけどねぇ。でも、それはやっぱり恐怖政治に繋がり兼ねないし、できれば避けたい方法だけど。

 ……うん、ラインヴェルドならナチュラルにやりそうだなぁ、と思ったよ。



 今夜はネストとアクアのミニスカサンタ衣装が見れるぞ! と、その日のテンションはいつになく高かったんだよ? 高かったんだよ? それが一気に冷水浴びせられてテンションが駄々下がりする事態が発生するなんて流石に想像がつかないよねぇ。


 書類の山を優先順に分けようと思っていたのだけど、受け取った書類の中にノクトからのメモも付いていることに気が付いて、他の書類よりも先に目を通すことにした。

 魔族の件は結果待ちだし、それがノクト経由で来るとは思えない。他に今は特別急ぎの案件は無かった筈なんだけど……って思っていたんだけど、ああ、そうだった。マリエッタの件があるんだったねぇ。


 謝罪の日時は明日。向こうは礼儀作法のチェックの後でそんなに時間は掛からない予定なのだそうだ。場所は内宮の応接室の一つに決まったらしい。……まあ、そりゃ、ボクやノクトの執務室っていう訳にはいかないよねぇ。相手はまだ正式に令嬢じゃない訳だから。

 もし、プリムラとマリエッタが遭遇してマリエッタがプリムラに対して無礼千万な態度を取ったらと思うとゾッとするから王女宮が謝罪の場に選ばれなかったことだけは僥倖だったねぇ。……まあ、それでも楽しいニコラオス聖祭の次の日にあの主人公と対面するのは気持ちが乗らないんだけど。


 そのメモは机の引き出しに仕舞って、他の書類仕事を進める。

 そして、書類仕事を一通り終え、その書類束を各部署に持って行こうとしたのだけど……。


「ローザ様、今よろしいかしら?」


「ヴィオリューテ、何かボクに用事かな?」


「こちら書類をまとめ終わりましたのでお持ちいたしましたの。他に御用はございますか?」


「そうだねぇ……少し運動がてら届けてこようかな? と思っていたけど、お願いしようかな? えっと、これが内宮の財務官で、こっちはメルトランに。後はノクト先輩……統括侍女様にこの手紙と書類を。まだまだあるけど、後のものに関してはボクの方で持って行くよ」


「畏まりましたわ! 拝見してもよろしくて?」


「ああ、見ても構わないよ」


 しかし、ヴィオリューテの成長速度には目を見張るものがあるねぇ。出会ったのは秋頃だからまだ数ヶ月しか経っていないのに。

 少し前まではボクから渡された書類の内容を勝手に見て分別を求められてはムクれて……なんてこともあったんだけど、今ではちゃんと確認するとかできるようになったし。侍女に相応しい言葉遣いを心掛けることはまだまだ難しいみたいだけど、それはおいおいかな。


「それではワタクシはこれで。……ああ、そういえば」


「どうかしましたか? ヴィオリューテ」


 書類を一通り眺めて満足したのか、ヴィオリューテがスカートの裾を摘まんでお辞儀お一つ。

 そしてドアを開いて、ボクの方を振り向いた彼女は純粋に思い出しただけという風に瞬きをして、ボクに言った。


「急ぎではないとのことでしたので失念しておりました。先程、プリムラ様がお呼びでしたわ」


「……おい、ちょっと待とうや」


 ボクの口から出た声が思った以上に低く冷たくてちょっとびっくり。……ボクって令嬢パターンと侍女パターンを使い分け、それ以外に心を許した相手に使う素の言葉遣いがあるんだけど、感情が悪い意味で揺さぶられた時にはその素のパターンから外れた話し方をする時がある。ほぼ無意識で後から気づくんだけど。

 基本的にブチ切れている時にこういう口調が出ちゃうんだよねぇ、気をつけないといけないとは思っているんだけど。


「いや、ごめんねぇ。……ちょっと阿呆共を叱るトーンで声を掛けちゃった。ヴィオリューテさん、失敗は誰にもあるものだから今後気を付けていけばいいんだけど、そうだねぇ。主人の意向を察して行動できることは、侍女にとってはとても大事なことなんだ。確かにプリムラ様は急ぎではないと言ったかもしれない。きっと、ボク達の仕事を邪魔してはならないと気を遣ってくださったのだと思う。だけど、この宮において誰よりも優先されるべきなのはプリムラ姫殿下だ。主人が呼んでいるのであれば、何よりも優先して駆けつけるのが従者の務めだよ。それに、ヴィオリューテも自分の呼びつけた従者がいつまでも来なかったら気分が悪いんじゃないかな? なんで来ないの! って内心腑が煮え繰り返るところまでいきそうだよねぇ、君の場合。そういうことだよ」


「……確かに、そうですわね。以後、気をつけますわ」


「そう、それでいいよ。それじゃあ、ボクはプリムラ様のところに行ってくるんで、頼んだ書類を届けてきてねぇ」


「畏まりましたわ!」


 まあ、ヴィオリューテは間違っているところ、足りていないところを指摘すればきっちりと次の時には訂正してくる……口調以外は。真面目で熱意もあるし、ズレているところを矯正していけば立派な侍女に、淑女になってくれるとボクは信じているよ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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