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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-165 スターチス親子の登城のその後と、年の瀬最後(?)の大騒動。 scene.4

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


「彼女はフロラシオンさん。かつて、ロッツヴェルデ王国でフォーリア=スヴィルカーチ男爵令嬢として第一王子を籠絡していた転生者さんだよ。前世の名前は蕗谷澪さん、マリエッタに転生していると思われる八嶋奈穂子の親友……ってことでいいんだっけ? 今は名前と姿を変え、諜報部隊フルール・ド・アンブラル所属の諜報員として動いてもらっている。主な仕事は彼女の知る別世界の『スターチス・レコード』シリーズの乙女ゲームの解析だ」


「兄上から話は聞いているぜ。親友の知っている『スターチス・レコード』と関連するいくつかの作品が存在し、その調査をフレイに任せているって。そのフロラシオンが情報源ってことか?」


「その通りですわ、バルトロメオ殿下。今はフレイ様と共同で圓様達にとっては別タイプとなる『スターチス・レコード』の情報の整理をさせて頂いております。……マリエッタの話は聞き及んでおります。私もヴァルムト宮中伯子息様に対して行った非常識な行動の話を聞き、危うく卒倒しそうになりました。……優等生のあの子ならもっと上手い方法で距離を詰めていくと思っていましたから、あのような悪手を打ったと聞いて別人なのではないかと疑ったくらいです。……その後、エルヴィーラ様とお話しする機会に恵まれ、マリエッタに関する話を聞き、ますます意味が分からなくなりました」


「……まあ、その委員長タイプの優等生もそう演じていただけなのかもしれないしねぇ。今だって、世間知らずの平民の少女を演じているのかもしれない。阿呆な手を打つからといって彼女が八嶋奈穂子の転生体である可能性を切り捨てるのは間違いだと思うよ。あっ、今更だけど彼女も同席させてもらっていいかな? 現時点で最も八嶋奈穂子とマリエッタのことを知っているのはフロラシオンさんだからねぇ」


「勿論、構わないぜ。それでどうする? ヴァルムト家に申し入れもないままにあの嬢ちゃん、なんと初めての礼儀評価の場で統括侍女の婆さんにさっきの話をしたらしいんだが」


「ノクト先輩には後でバルトロメオ殿下が婆さんって呼んでいたって報告しておくよ」


「しまった、後で睨まれるッ!」


「当然、お断りします」


「ヴァルムト家当主としても息子の判断を支持します」


「まあそりゃそうだな」


「……別に受ければいいのにねぇ。確かに、非常識ではあるけど」


「うわぁ、好きな奴から好きでもない奴の誘いに乗れって言われるのは確かに精神的に来るよなぁ。言動がドS過ぎるッ! まあ、お前の気持ちも分かるけどなぁ。つまり、圓の気持ちを完全に射止め切れていないアルベルトの自業自得ってことだな」


「圓殿、絶対にお断りしますからッ!!!」


「そんなに力強く言わなくたっていいって。……しかし、なんだろうねぇ。このクソ忙しい師走に次々と畳み掛ける面倒ごとの山」


「ん? 何かあったのか?」


「ついさっき、アスカリッドから連続があった。魔王が黒百合聖女神聖法神聖教会のブライトネス統括教会を襲撃しているらしい……」


「魔王が襲撃!? 今すぐ騎士団を――」


「いらんよ、王女宮の仕事終わったら三千世界使ってボクが対処するから問題ない。結果は見えているけど、それに付随する雑務――オルゴーゥン魔族王国の加盟手続きは流石に年明けにするつもりだよ。全く、こっちは新年祭に向けた準備で忙しい時期だっていうのに」


「まあ、相手には十二月だからとか関係ないしなぁ。……それで、迷宮の件はどうするんだ?」


「ああ、アスカリッドさんが幸運にもフォトロズ大山脈地帯を突破してこちら側に来ることができたあの迷宮ねぇ。あれは、年内でいいんじゃないかな? 誰か連れて行くとこのクソ忙しい時期に仕事増えるし、バルトロメオ殿下を含めて主要人物を動かす気はないよ」


「ちぇー」


 とりあえず、溜まっている仕事しろよ。来年に持ち越したって何一つ良いことないからねぇ。

 その場でアルベルト達と別れ、王女宮に戻る。アルベルトは結果的にデートを邪魔されて少しだけ不機嫌そうな顔になっていたけど、そんな顔をされてもねぇ。

 文句は非常識なマリエッタに言ってもらいたいものだよ。……ラインヴェルドじゃないけど、クソ面倒だ! って言いたくなる。



 王女宮に戻ってくると、王女宮の空気が何故かピリピリとしていた。

 オルゲルト、シェルロッタ、ソフィスはいつも通りなんだけど、それ以外のスカーレット、ジャンヌ、フィネオ、メアリー、メイナ、ヴィオリューテを筆頭に使用人達の様子が少しぎこちない。


「まさか、こちらにお越しになるとは思いませんでしたわ。一言お伝えしてくださいましたら王宮まで足を運びましたのに」


「こちらの用事で訪ねたのですから、わざわざご足労頂くのも申し訳ないですし、それに王女宮の様子を自分の目で見ておきたいとも思っていましたから。……流石は貴女の仕切る宮ですね。少し拝見させてもらっただけでも高い水準に達していることが分かります」


「そう言って頂けるのはとても嬉しいことですが、ボクが仕切っているからではなく、彼女達がそれぞれ向上心をもって職務に励んでいる故の結果です。素晴らしい方々と共に王女宮で働けることをいつも誇りに思っていますわ」


 これは、勿論紛うことなき本心だよ。普段はクソ陛下だけど人を見る目は確かというか、あの采配には舌を巻いてしまう。


「王城の侍女が全体的にこのレベルまで上がってくれれば良いのですが、まあ、愚痴を言っていても仕方がありませんね。本題に入らせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「立ち話というのは申し訳ないですし、ボクの執務室へお越しください。あまり良いおもてなしはできませんが」


 筆頭侍女の執務室に案内し、二人分の紅茶を淹れ、冷蔵庫に常備してあったショートケーキを取り出す。


「相変わらずの潔癖性……行き届き過ぎた掃除ですね。確認しましたが、塵一つ落ちていませんでした。あの侍女達やメイド達でもあそこまでの掃除はできないでしょうし、恐らく圓様が侍女達が来る前に掃除をしているのでしょう?」


「そりゃ、バレてしまいますよねぇ。とはいえ、ボクが掃除をしているのはあくまで仕上げの段階であって、メイド達の掃除が行き届いていないという訳ではありませんよ。まあ、趣味みたいなものですから。それで、ご用件は何でしょうか? ……もう正直、忙しい時期に畳み掛ける面倒ごとの連続でこれ以上の面倒ごとは来年に回したいくらいなのですが」


「珍しいですね、仕事が降ってきたら普段は速攻で片付けてしまう圓様がそのように愚痴を零すなんて」


「……実は、同時期に魔王の襲来が起きています。それについては、王女宮の仕事終わりに三千世界の烏を殺して対処する予定ではいるのですが、それに付随して想定されるオルゴーゥン魔族王国の多種族同盟加盟に関わる事務作業は既に来年に回そうと検討しています。既に朝からそれだけでお腹いっぱいだったのに、マリエッタがアルベルトとヴァルムト宮中伯家に無断でエスコート役に選んだという話をヒゲ殿下からつい先ほど聞かされ、意識が飛び掛けたというか。こっちにも色々と思惑とかあるんですけどねぇ、悉く台無しにされるというか……狙ってやっているなら相当な策士だなぁ、と寧ろ褒めたくなりますよ。なるべく、マリエッタとの接触は学園入学まで避けたいと考えていたのに……」


「……では、私の話は更に圓様を悩ませるものになるでしょうね。ヴァルムト宮中伯にスターチス家の当主が謝罪を正式に申し込みたいと教育係を通じて宰相閣下にお話が行ったようです。それをヴァルムト宮中伯家が受けるかどうかは私の預かり知らぬことですが、スターチス男爵令嬢は圓様とヴァルムト宮中伯令息に謝罪をしたいという意思を示しているようでして」


「……ただ、筋としてはオートリアスがヴァルムト宮中伯家に謝罪をするまではアルベルトに謝罪ができない。だから、そういった手続きを取らずに謝罪できる相手に……いやいや、ボクって一応公爵令嬢だよ? 知らないとはいえ、【血塗れ公爵】の娘だよ? 謝罪なら謝罪で、まずラピスラズリ公爵家に対して謝罪をすべきところじゃない? つくづく舐められているなぁ、まあ、あの【血塗れ公爵】も流石に相手が相手だから強硬な手段には出ないと思うけど。……まあ、色々なことを総合すると、マリエッタはあらゆる方向を理解した上でボクに対して挑戦状を叩きつけてきているってところなんだろうねぇ。……クソ面倒くさい。好きな相手のためなら一肌脱ぐどころか手を血に染めたって構わないと思うけど、アルベルトのためにとかさぁ、ないわぁ。色々な意味でないわぁ。でも、無視したら無視したで謝罪を申し出た右も左も分からない子供扱いのマリエッタを邪険にしたと変な噂が立つのを覚悟しなければ……ってか、今更悪い噂の一つや二つ増えても問題ないか」


「圓様は気になさらないと思いますが、私は圓様の悪評がこれ以上増えることを見過ごすことはできません。……私の立ち会いのもとで謝罪を受けるというのはどうでしょう?」


「ノクト先輩に迷惑を掛けるのは、流石に、ねぇ……」


「私が良いと言っているのですから、気にする必要はありません」


 結局、ノクトに押し切られて、ノクトの同席する形でマリエッタから謝罪を受けることになってしまった。……また、面倒ごとが増えた。

 その日の王女宮での仕事では特にそれ以上の騒動も発生せず(いや、そんなに騒動ばかり起きていたら困るんだけど)、王女宮での職務を終えた後、三千世界の烏を殺して黒百合聖女神聖法神聖教会のブライトネス統括教会に向かった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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