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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-164 スターチス親子の登城のその後と、年の瀬最後(?)の大騒動。 scene.3

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


 バルトロメオに連れられ、ボク達は軍務省長官の執務室に招かれた。

 今更だけど、軍務省は各騎士団に指示を出す司令塔でフォルトナ王国においては総隊長と総隊長補佐が率いる中央軍銀氷騎士団第零師団が似たような役割を果たしていると言えるかもしれない。


 軍務省に勤務する者達はいずれかの騎士団に所属していた元騎士の経歴の者が多い。……ただ、騎士団を統率して指令を出す組織のため、他の国家組織で働いていた文官も軍務省に所属する場合はある。

 高位の官僚になるためには、軍務省での勤務は必須と言われているから、軍務省経由は出世コースとして認識されているねぇ。まあ、アーネスト閣下みたいにヘッドハンティングされるパターンもあるんだけど。……あの人、ラインヴェルド陛下に「お前、宰相やれ!」と言われて宰相になった苦労人なんだよねぇ。


 軍務省の長官はバルトロメオが勤め、大将軍にはクラインリヒが就任している。

 傾向としては歴代大将軍が軍務省長官を兼ねることが多いんだけど、騎士団の頂点にあたる大将軍をクラインリヒが、軍部の頂点である軍務省長官バルトロメオが統括することで文官武官の衝突が減らして上手く回すことができるようになるのではないかとラインヴェルドが一計を案じたらしい。


 軍部に勤める予算や物資を扱う文官と現場で作業に当たる武官とでは意見の擦り合わせ一つでも大変だからねぇ。

 退役騎士が多いから現場の気持ちも分かる文官が多いとはいえ、難しいことに変わりはない。

 船頭多くても船山に登るだけだし、それぞれの意見を統括するトップ同士が擦り合わせる方が効率面を考えたら格段に良い。


 バルトロメオの執務室には、クラインリヒの姿もあった。

 直立不動の姿勢で立っているクラインリヒの前をさっさと通り過ぎて、バルトロメオは自分の椅子にどっかりと座ると顎の下に手を置いて空いている手で机の上にある書類を邪魔だと言わんばかりにどけていく。……いや、どけちゃダメな奴じゃない、それ。


「殿下、何も本人を連れてくる必要はなかったのでは? 当人には自分が身内として確認をとると申し上げた筈です。それに、圓様にまでご足労頂くようなことでもないと思いますが。……それと書類は隅にやらぬようお願い申し上げます」


「いやいや、さっき気分転換に外へ行ったら丁度いたもんだからな。こういうのは本人がいてくれた方が不都合もなかろうよ。勿論シモンとプリムラには俺の方から連絡して時間を貰ってるから大丈夫だ。書類は後でな」


「……年の瀬に今年の仕事は纏めて片付けるってお姉さんと約束したよねぇ? もしかして、忘れちゃったの? ……遺言くらいは聞いてあげるけど、何か言い残したいことはある?」


「おいおい、いきなり殺す気かよ! いいじゃねぇか、これくらい!! 息抜きくらいさせてくれよ、親友!!」


「とりあえず、大きな案件は騎士団からの賃上げ要求と、備蓄の入れ替え、軍務省が管理している砦のうち、老朽化しているいくつかの修繕、この辺りかな? ベースアップはボクの管轄外だから手伝えることはないけど、備蓄の件と砦の修繕については手伝えることがありそうだねぇ」


「まさか、あの僅かな時間で書類の情報を盗み見たのですが!?」


「まあ、親友だしなぁ。一々驚くなよ、クラインリヒのおっさん。……確かに、魔物の発生が多発して騎士団が出動する機会も増えている。でかい仕事は時空騎士(クロノス・マスター)の臨時班が動くが、そうじゃない場合は地元の冒険者か騎士団で十分だしなぁ。賃上げについては俺も異論はない。この辺りはアーネストと相談だな。……で、残る備蓄と砦の修繕の件だが、具体的にはどんな感じだ?」


「まず、砦の修繕についてだけどビオラで請け負っていいならお友達価格で少し安くさせてもらうこともできるよ。藍晶の請け負っている地下鉄敷設はまだまだ時間が掛かるプロジェクトだし、加盟国が増えているから仕事量も増加しているからこっちもガツガツ仕事が欲しいって感じじゃないんだけど、ブライトネス王国はうちのお得意様だからねぇ」


「そりゃ有難い話だな。うちは土木専門の技師を抱えてないから騎士をそっちに回すか、業者に投げるかって話になるが、当然、値段もそれなりに掛かってくる。でも、ビオラのお友達価格は大抵破格だしなぁ」


「とりあえず、ボクが半額負担するから残りを国費……か、ラインヴェルド陛下かバルトロメオ殿下のポケットマネーから出すのはどう?」


「じゃあ、兄上のポケットマネーで」


「殿下、ここは国費一択にすべきところです! 陛下に砦の修繕費を出して頂くなど!!」


「まあ、ラインヴェルドなら笑って出してくれそうだけど、後が怖そうだよねぇ。……じゃあ、その書類貸して。後でアーネスト閣下に持って行って交渉してくるから。……で、もう一件の方だけど、実は王女宮筆頭侍女に就任する際にアーネスト閣下に相談した上で王女宮に導入してもらったものなんだけど……どこに仕舞ったっけ?」


 『統合アイテムストレージ』から目当てのチラシを二部取り出してバルトロメオとクラインリヒに手渡す。今回の案件に関係ないアルベルトの分はないよ。


「へぇ、これはまた面白い商品だなぁ。毎年、期限切れが近づいた備蓄は解放して希望した王城に勤務している者達に無償で配っていたんだが」


「まず、通常通りウチから備蓄を買ってもらう。ここまでは同じだけど、期限切れが近づいた場合に残った備蓄をビオラの方で買い取らせてもらう。そして、その買い取らせてもらった費用を次の備蓄の費用に充てるというものだ。期限切れが近づいている備蓄は通常価格で引き取らせてもらうから、実質的に使用した分の費用を支払うだけで一回目と同量の新しい備蓄を得ることができる。……毎年、期限切れ間近の備蓄の解放を楽しみにしていた方々には非常に申し訳ない話だけど、これなら備蓄に掛かる予算を減らせるんじゃないかな?」


「確かに、軍務省としては有難い提案ですが、圓殿は困らないのですか?」


「買い取った備蓄を無駄にするつもりはありませんよ。料理の材料などに使うことで孤児院や教会での炊き出しに使用するつもりでいます。ビオラも教会も一応、ボクがトップみたいなものですからねぇ。まあ、ある種の社会貢献です。で、これが備蓄のカタログ。まあ、注文があればこれ以外の商品の開発も進めてみるけど」


「へぇ……缶詰類も凄いが、フリーズドライ加工食品もかなり凄いなぁ。ってか、今の軍部の備蓄よりも断然こっちの方が美味そうだぜ!」


「元々は災害用の備蓄として売り出したものなんだけどねぇ。災害時においても常時と変わらない食事を摂りたいというニーズに応えた商品。今ではビオラの売れ筋商品となっているよ」


「だろうなぁ。クラインリヒ、どう思う?」


「特に異論はありません。恐らく、軍部・騎士団共に反論は出ないでしょうし、こちらもアーネスト閣下に申請すべきでしょうね」


「じゃあ、その書類もチラシとカタログと一緒に持って行ってプレゼンしてくるよ。まあ、以前王女宮筆頭侍女として交渉して通してもらった話だし、簡単に通してくれると思うけどねぇ」


「ああ、よろしく頼むぜ。やっぱり、親友は仕事が早いなぁ」


「バルトロメオ殿下達がサボり過ぎっていうのもあるけど、ボクの場合はコネクションが割と広い分布をしていて、持っている権限も大きいことが要因だろうねぇ。名ばかりとはいえ、一応会長だから無理も通しやすいし」


「名ばかりってのはちょっと違うけどなぁ。ビオラにとっても仕事が一つ増えた訳だし、うちとしてもいい買い物をさせてもらったって気分になる。WIN-WINな関係だよなぁ、お前が損をしていること以外は」


「迷宮探索で稼いだものとか、給与とかでこれでもずっと黒字なんだよねぇ。……結構使っている筈なのに赤字にならないから実は戦々恐々していたりするんだよ。……ごめん、脱線し過ぎたねぇ、本題に戻ろうか?」


「そうだったなぁ。……備蓄と砦の修繕の話じゃなかった。で、アルベルト。どこで誰の目があるかも分からなかったから来てもらったんだが、お前とあの英雄の娘……えっと」


「マリエッタ=スターチス、名前くらい覚えなよ。現在進行形では危険人物で、今後は国の重要人物になったりならなかったりする可能性がある娘なんだし。ちなみに、前世の名前は恐らくだけど八嶋奈穂子だよ」


「……そっちは確定情報じゃないんだし、まあ、いいんじゃねえの? で、そのスターチス嬢と出会ったのは最近か?」


「はい、つい先日圓殿と共にいた所を同僚のレムラッド近衛騎士を訪ねたスターチス嬢を紹介されました」


「ボクもマリエッタの接触は学園まで控えたいと思っていたんだけどねぇ。……あのリジェルの馬鹿野郎のせいで初っ端から計画狂って困り気味だよ。全く、物事にはそれに相応しい舞台があるっていうのにさぁ、やるならやるで一網打尽にできる状況を整えたいっていうのに」


「まあ、親友が計画の狂いを心配する気持ちも分かるが、それはないと思うぜ。マリエッタとお前に今の時点での接点はない。アイツの背後にローザ=ラピスラズリが憑いていることが確認できた以上、確実に神同士の戦争は避けられないと思う。マリエッタとしても悪役令嬢に悪印象は持っているだろうし、想い人であるアルベルトが好意を抱く相手ってことならどのみち戦いは避けられないだろう。奴はお前の睨んだ通りシナリオの強制力を利用してくる筈だ。ヒロインは必ず悪役令嬢を討ち取り、幸せになる。この圧倒的優位性を使うためにローザがマリエッタを選んだのは間違いないだろうし」


「ボクも断罪カウンター作戦がポシャったとは思っていないよ。ちなみに、リジェルとマリエッタの出会いは前線に出た折、例の巨獣退治に際し怪我を負った時に英雄父娘に救助されたというもの。……余談だけど、ボクの知る『スターチス・レコード』にリジェルは出てこない。ルークディーンルートを攻略後にルートが解放され、確か、二周目の冒頭の王城でのフリー移動の際に近衛の詰所に迷い込むことでアルベルトと遭遇し……って形だった。そこでフラグを立てることで攻略が可能になり、アルベルト関連のイベントを起こせるようになる。その果てでパーバスディーク侯爵家の影がチラつくレイリアとのイベントも発生して……って流れだったんだけど。……フロラシオンさん、ちょっと降りてきてもらっていいかな?」


 実はメールを送ってバルトロメオの執務室の天井裏に呼び寄せていたフロラシオンに降りてきてもらう。

 クラインリヒは驚いていたけど、バルトロメオとアルベルトは動じず……どうやら、アルベルトもかなり慣れてきたみたいだねぇ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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