表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1015/1360

Act.9-163 スターチス親子の登城のその後と、年の瀬最後(?)の大騒動。 scene.2

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


「お聞きになりました? 英雄のお嬢様、大層お美しい方だそうですよ」


「聞きました聞きましたわ! 何でも頭脳明晰だとか。きっと生誕祭のパーティでは令嬢としてデビューなさるに違いありませんわね!」


 王城の中でも聞こえてくる『英雄の娘』の噂話はこんな感じ。一見、好意的な噂話だし、この話を聞いてヴィオリューテが一々苛立ちを覚えていることからも普通に受け取れば好意的では確かにあるんだけど……その裏に悪意のようなものをボクなんかは敏感に感じ取れる。


 やたら英雄の娘マリエッタのハードルを上げられている。……それってつまり、もし、その期待に満たなければ上から一気に叩きつけられること。

 作為的なものを感じるけど、一体誰が何の目的でそのようにしているんだろうねぇ。もし、パーティ中に失敗でもしようものなら貴族中の笑いものになりかねないよ?


 元々庶民出身なんだから失敗したってしょうがないよね、という雰囲気が頭脳明晰で優秀という言葉に失敗を許さないという雰囲気へと塗り替えられている。

 しかも教育係が云々じゃなくて、本人の資質が、というのを念押ししている感じが何とも狙っているような感じが凄いする。


 ラインヴェルド達中枢はマリエッタを迎えた国家体制を想定して動いている。マリエッタと第三王子ヘンリーを婚約させ、ヘンリーに国王になってもらうっていう作戦だねぇ。


 実際、残っているのは国王みたいな強権を与えたら絶対に変態な方向に権力を使いそうなブラコンとシスコンを拗らせまくっている『とっとと弟と妹離れしろよ変態第一王子』のヴェモンハルト、研究者志望で国王にはなりたくない、資質的にも国王より学者の方が向いている第二王子のルクシア(この二人に関しては国を統治する能力自体はしっかりあるんだよ。いずれも素質はラインヴェルドに劣る……っていうか、あれは化け物だからねぇ。誰がついても先代の王とは比較され続けるだろう。でも、『暴君』よりはマシだ! って好意的に捉えてもらえられるかもしれないねぇ)、音楽家志望で国王の地位に興味のないヴァンの四人。ヴァンの方は資質は未知数だし、ヘンリーがあのままダメっぷりを見せ続けるならルクシア王子に立太子してもらわないといけなくなるねぇ。


 脱線したけど、ノクトはマリエッタのことをあまり好いていない雰囲気だったっていう話だったけど、正直、この件に王城側の人間の意図が絡んでいるとは考えにくい。

 ってなると、『英雄の娘』の活躍をやっかんだ一部貴族の暴走かな? まあ、実害は出ていないし放っておいてもいいか。


 この騒ぎは新年祭の本番――来年まで続きそうだなぁ、と溜息を吐きつつ、仕事もひと段落したのでスマートフォンのメールフォルダをチェックしていると、新着のメールが一件。


「珍しいねぇ、アスカリッドさんからだ」


「アスカリッド様……って、魔王の娘よね。園遊会で天上の薔薇騎士修道会副団長様とお二人で姫さまに挨拶していた」


「あの二人ってお似合いだと思わない? じゃなくて、そのアスカリッドさんから相当緊急性の高いメールが届いていてねぇ。……魔王が黒百合聖女神聖法神聖教会のブライトネス統括教会を襲撃しているらしい」


 ちなみに、ブライトネス統括教会はボクとラインヴェルドが乗り込んだ旧総本山の現在の名称。ちなみに、黒百合聖女神聖法神聖教会の全体の総本山はクレセントムーン聖皇国にあり、黒百合聖女神聖法神聖教会の一派である黒百合聖女神聖法神聖教会・天上の薔薇吸血聖女神派の総本山はフォトロズ大山脈地帯の最高峰の山頂に存在する。……ややこしい変遷を辿っているからどこがメインかって分かりにくいよねぇ。


 また、魔王が掴んでいるのは天上光聖女教の情報だと思うから、天上光聖女教の総本山に襲撃を仕掛けたつもりなんだろうけど。

 基本、アレッサンドロス達はクレセントムーン聖皇国とフォトロズ大山脈地帯の最高峰を行き来していて、あそこを拠点にしているのって主要な宗教関係者だとジョナサン神父とエリーザベトさんくらいだと思うけど。


「なんですって!? 大事件じゃありませんか! なんで、そんなに平然としていられるのですか!?」


「想定の範囲外ではあるけど、想定の範囲内ではあるし。……アスカリッドさんを受け入れた以上、どの道いずれは向き合わないといえない問題だったけど、それが今日になるとは思わなかったって感じかな? どちらにしろ、時空魔法を使えば今行くのも後で行くのも大差ないし、王女宮の仕事が終わってから対処するつもりだよ」


 今回のあまりにも早過ぎる襲撃。アスカリッドの情報は魔族側に伝えてないし、いずれアスカリッドが自分で伝えに行く覚悟を決めるまで待つつもりだったけど、どうやらそういった考えをぶち壊しにした犯人が居たらしい。


 誰が犯人か? どうやら、ノイシュタインだったみたいだよ。オスクロにメールで確認したところ、ノイシュタインは魔法の国侵攻後にオスクロと共にオルゴーゥン魔族王国の辺境に寄り、魔王軍幹部の一人で竜人族のエドヴァルト=オークァスにオーガイルが無事にユミル自由同盟に到着したことと魔法の国との戦争の顛末を報告したらしい。その際、魔王が探していた魔王の娘のアスカリッド・ブラッドリリィ・オルゴーゥンがブライトネス王国に来ていることも伝えたようだ。

 アスカリッドとは会ったことがない。当然、家出の背景も彼女の意思も知る由もなく、子煩悩な魔王はその話を聞いて居てもたってもいられなくなって竜化したエドヴァルトの背に乗ってブライトネス王国まで飛んできたらしい。


 ……この年の瀬に面倒なことを、とは思ったよ。師走って忙しいんだけどねぇ。まあ、そんなことお構いなしなのは当然か。


「さて、ヴィオリューテさん。これが今日の課題だよ」


「ちょっと多過ぎじゃありませんか!!」


「課題っていうか、一種のテストだからねぇ。これまでの課題と違って提出は帰省までで構わないよ。来年からはステップを一つ上げて本格的に淑女教育を行っていきたいと思っている。……ボクとヴィオリューテさんの出会いは散々なものだった。ヴィオリューテさんにとっても嫌な思い出じゃないかな? ボクも正直、君を王女宮に受け入れることには否定的だった。それでも、あの日、統括侍女様――ノクト先輩の前でヴィオリューテを引き受けると宣言した時、ボクはこうなった以上は君を一人前の淑女に育て上げてみせると決めたんだ。……ピジョット侯爵家は代々、数代おき、或いは連続して傑物を輩出する家柄だそうだけねぇ。その傑物が本物の天才であるなら、君はピジョット侯爵家の傑物にはなれない。君は凡人だよ……ボクと同じでねぇ。本物の天才は努力をしなくても楽々と物事をこなしてみせる。そういう人に前世で出会った時、ボクだって彼に嫉妬した。……だけど、ヴィオリューテが努力をできる人間であることは君と一緒に過ごすうちに分かってきた。綺麗な字を書けるのは努力を重ねてきたことの裏返しだからねぇ。君が当初願っていた王子の婚約者になるって夢は仮に君が一流の淑女になっても国の思惑とかを踏まえれば不可能。その辺りはご了承しておいてもらいたいけど、ピジョット侯爵家の令嬢に相応しい淑女になることは別に不可能じゃないと思うんだ。ってことで、来年から王妃教育レベルの淑女教育を侍女の職務と並行してやっていくから、書類系は申し訳ないけど今年中にマスターしてもらいたい。後、お茶と料理……ヴィオリューテさんの弱点の方も克服するように進めていくから、来年も是非、ボクと一緒に頑張ってねぇ」


「そ、そこまで期待されているのなら、が、頑張ってあげてもいいですわ!」


 全く、素直じゃないねぇ。でも、この子はちゃんと向き合えばそれに応えてくれる。応えようと頑張ってくれる。

 だったらヴィオリューテを引き受けたものとして、しっかりと立派な淑女に……それこそ、これまでの汚名を濯ぎ、歴史に名を刻むほどの淑女まで育て上げたい。


 ……まあ、それにピジョット侯爵家生まれの傑物達。彼ら、彼女らもボクの調べた範囲じゃ、影澤さんみたいな本物の天才じゃない。侯爵家に生まれたことに甘んじず、それぞれが努力を重ねた結果、傑物を産む家と呼ばれるようになったんだと思う。……ってか、そんなにバンバン化け物みたいな天才が生まれていたら、もっと評価上がっているよねぇ、ピジョット侯爵家の。


 ヴィオリューテが努力を重ねれば、本物の淑女になりたいと願うなら、彼女がいずれピジョット侯爵家の傑物の一人として名を残すことも別段あり得ないことではないと思うんだよ。



 夕刻、休憩の時間をもらってアルベルトと夕暮れデート。アルベルトを狙う淑女達に妬まれるくらいならその立場を譲ってやりたいけど、約束しちゃったし、仕方ないよねぇ。


 いつものように庭園デートしていたんだけど(ってか、王城内でここ以外に行くとこないしねぇ)、バルトロメオに呼び止められた。

 しかし、久しぶりだねぇ。騒ぎになっていなかったし、珍しく真面目に仕事していたんだろうねぇ。


「普段からこれくらい真面目に働いてくれると臣下としては大変ありがたいのですが」


「開口一番それかよ……ってか、臣下? まあ、いいや。ちょっと聞きたいことがあって探していたんだよ。アルベルトの方に」


「私ですか?」


「ちょっと聞きたいんだが、お前あの『英雄の娘』と関係あったか?」


「いえ、同室の近衛騎士が友人関係にあるくらいですかね」


 ……うーん、まあ、大凡想定通りの流れかな。アルベルトも少し嫌そうに眉間に皺を寄せているし、バルトロメオの質問の内容をあらかた察したんじゃないかな?


「いやなに、あのお嬢ちゃんが新年祭のパーティで、自分をエスコートする相手にお前を指名してきたってんでちょっとした話題になってるんだが……その分じゃ知らないみたいだな」


 ボク、アルベルト、バルトロメオ――三人ともマリエッタ、つまり八嶋奈穂子の本性をある程度掴んでいる。伝聞レベルで、だから誤差がある可能性は多分にあるけどねぇ。

 あの様子じゃ、恐らく貴族の常識は理解していても従うつもりは更々無さそうだなぁ、と思っていたし、最初の邂逅で食い下がってきたから嫌な予感はしていたんだけど、本当に問題行動を起こしてくるとはねぇ。


 ……あっ、いや、ボクは別に困りはしないんだよ。現状、アルベルトはボクの恋人じゃない訳だし。


 でも、これには正直ボクもドン引きっていうか、エスコート? まるで意味が解らないよ。

 普通エスコートをお願いするにも互いの関係とか色々あるし、この間挨拶したばかりだよねぇ? 当人に相談なく「あの人にエスコートされたい」と一方的に宣言するのもあり得ない。


 ……ちょっとばかり、八嶋奈穂子が優等生だったっていう蕗谷澪の証言が信用できなくなってくるねぇ。大丈夫なのかな? マリエッタって……色々と。

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ