Act.9-160 謁見の場において――オルレアン教国使節団との交渉。 scene.1
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
そして、オルレアン神教会使節団との謁見の日当日。
ボクは王女宮での仕事を終えた後、ソフィスを伴って三千世界の烏を殺してフォルトナ=フィートランド連合王国の王宮へと向かった。
ボクの正体は末端の騎士にまで知れ渡っているから顔パスで王宮の中枢へと進むことができる。
しっかりと挨拶をしてくれるのはいいんだけどボクを見つけた瞬間に距離を取るのはやめてもらいたいよねぇ。
「あの方々は何故、圓様から距離を取るのでしょう」
「お関わりになりたくないんでしょうねぇ、トラブルと。ボクはシューベルトと相性が極めて良くないから万が一遭遇しちゃうと王宮が半壊するほどの戦闘が起きる。まあ、気持ちは分からないこともありませんよ。少なくとも敵意を向けてくる訳じゃありませんし、お互いに自分の職務を全うすればいいだけのことです」
「……あの断罪騒ぎと『怠惰』戦を経験してなお、圓様と敵対する意思を持つ者はこの国にいないと思いますけどね」
「お疲れ様です。真面枠故に振り回されている不幸系騎馬総帥様」
「……その呼び方、やめてくださいよ。謁見の準備は既に整っています。使節団一行は控え室で待機していますので、準備が完了し次第、お呼びする予定です」
「ご報告ありがとうございます、レオネイド様」
ソフィスと共に謁見の間に入る。既にオルパタータダ、アルマン、ファント、護衛役のオニキスは謁見の間の定位置に待機済みで、他の留学予定者も謁見の間に待機していた。……待たせてしまったようで申し訳ないねぇ。もう少し早い時間に時空跳躍すれば良かったなぁ、と後悔中。
一人目の留学生はリーシャリス=スドォールト。スドォールト伯爵令嬢でフォルトナ=フィートランド連合王国の統括侍女であるミナーヴァ=スドォールトの娘。
二人目の留学生はガラハッド=オーデルヘルム。エーデヴァイズ侯爵家の分家筋であるオーデルヘルム伯爵家の長兄でフレデリカの再従弟でサレムの補佐役として期待されている一方、フレデリカから剣を学んでおり、見かけによらず剣の技量も高い。
ちなみに、マリエッタの前世であると目される八嶋奈穂子の親友である蕗谷澪からもたらされた情報によれば、『フォルトナ王国の黄昏』に登場する攻略対象の一人がガラハッド、ライバルキャラの一人がリーシャリスということらしい。
『フォルトナ王国の黄昏』の攻略対象はルーネス、アインス、ガラハッド、それから、フォティゾ大教会の枢機卿の一人であるレジナルド=ホーソーンの息子のキャサバル=ホーソーンの四人。代表する悪役令嬢は登場せず、それぞれのルートにライバルキャラが出現するらしい。……悪役令嬢に相当する立ち位置にいるのは悪役のサレム、及びアルマンとシヘラザードだねぇ。
隠し攻略対象は、オニキス、シューベルト、ファイス、ヨナタン、ジョゼフ、モネ。
シューベルト、ファイス、ヨナタン、ジョゼフ、モネにはライバルキャラがいないため隠し攻略対象の攻略条件を満たす二週目以降にさえ入れば攻略できるんだけど、オニキスの場合は面倒で新規のライバルキャラが登場するそう。
名前はテレージア……特殊な毒を使ってフォルトナ王国を半壊させる任務を与えられたタンジー共和国の女スパイだったけど、オニキスと相思相愛の関係になってしまい、最期はオニキスと共にその毒で命を立つ。
……一応、その名称の国はあるし、必要なら探りを入れるべきかな? とは思っていたんだけど、国半壊させる役目は【濡羽】が担っていたし、もし仮にフォルトナ王国を崩壊させるために暗躍するとしても、『這い寄る混沌の蛇』とは無関係な気がする。まあ、とりあえず放置でいいんじゃないかな? わざわざ突いて藪蛇になったら面倒だし。
「皆様、お待たせして申し訳ございません。リーシャリス様、ガラハッド様、突然の求めに応じてくださりありがとうございます」
「いえ、私も見聞を広める良い機会を頂くこのができたと思っておりますわ。それに、母から話を聞き、圓様と共に学ぶことができるこの機会を逃すのは勿体ないと感じました。よろしくお願い致しますわ」
「フォルトナ王国を救った英雄である圓様と共に学ぶ機会を頂けたこと、とても嬉しく思います。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」
「……いや、ボク、今回教師役じゃないんだけどなぁ」
ガラハッドの方は尊敬が行き過ぎている気がする。……今回は一緒に学ぶ学友の立ち位置であって、ボクから教授することは何もないと思うけど。
「さて、揃ったことだし謁見の間にオルレアン教国のバーデルゲーゼとリズフィーナを呼んでいいぜ」
アルマンが部下に指示を出して使者を送り、数分後、バーデルゲーゼとリズフィーナ、セントピュセル島の警備を任されている警備主任のヴァルディゴ=バンドラー。まあ、流石に要人二人だけで謁見の間に入ってくる訳ないか。
「久しぶりだねぇ、リズフィーナさん。それと、他の皆様は初めましてだねぇ。ボクはローザ=ラピスラズリ。隣国ブライトネス王国のラピスラズリ公爵家の令嬢ということになる。まあ、他にも色々と肩書きだとか爵位とかあって、全部列挙すると名前長くなるし、ローザと気軽に呼んでくれても大丈夫だよ」
ちなみに、今回の案件はボクの持ち込みだから場所こそ使わせてもらっているけど話の主導権はボクが握っている。留学生はフォルトナ王国の推薦って話だからオルパタータダが主導してもいいと思ったんだけど、「面倒くせぇから、圓、お前が仕切っていいぞ」って事前に言われているから問題はない。……ってか、「面倒だから」ってなんだよ。
「しかし、リズフィーナさん。遠路遥々ここまで来るの大変だったでしょう。こんな年の瀬に申し訳ないねぇ。アフロディーテかミスシス……そっちに潜入させている暗部に一言言ってくれれば良かったのに」
「私もそう思っていたのだけど、父に相談したら是非一度直接会って確かめたいと気持ちを強めてしまったのよ。それで、こちらに来てもらうのも申し訳ないし、フォルトナ=フィートランド連合王国に来させてもらったわ」
「……正直、『聖女』様らしからぬ悪手だと思うよ。一つ、リズフィーナさんとバーデルゲーゼさん――オルレアン神教会の主要人物が二人もオルレアン教国を離れるという状況は非常に拙い。『這い寄る混沌の蛇』に今のうちに襲撃してくださいって言っているようなものだからねぇ。まあ、これが終わったらすぐに送り返すつもりだからいいんだけど。二つ、護衛として警備主任のヴァルディゴを連れてきたようだけど、随分と舐めてくれているようだねぇ。それで、自己防衛ができるつもりなのかな? フォルトナ王国はこの大陸においてボクの知る限り最強クラスの武力を持つ王国。師団長クラスでも化け物揃いだけど、ここにいるのはその中でも別格の漆黒騎士団の隊長と副隊長、そして二人に比肩する国王陛下、どいつもこいつも災害級の化け物だよ。純粋な非戦闘員はアルマンさんとリーシャリスさんくらいじゃないかな? リズフィーナさんも話を聞いて知っていると思うけど、プレゲトーン王国の一件で悪魔の三つ子司書の兄の方ことヨナタンの転生者であるジョナサン神父は、『剣聖』ギルディアズ相手に互角以上に渡り合い、プレゲトーン王国を破滅一歩手前まで追い込んだ。彼もまた、フォルトナ王国では師団長クラスに比肩する猛者だ。……それに、あの頃に比べてフォルトナ王国の面々は更に強くなっているからねぇ。……だから、君達がオルレアン神教会を特別視するのは勝手だけど、ボクら多種族同盟がそのオルレアン秩序の傘下に下るべきみたいな態度を取るのはちょっとやめておいた方がいいんじゃないかと警告しておくよ。まあ、仮にボクらと全面戦争したいならディオンさんくらいの化け物を連れてきてもらわないと張り合いなくて困るからねぇ」
「……あの、私達は全面戦争しに来たつもりはないのだけど」
「でも、ヴァルディゴさんは違うんじゃないかな? オルレアン神教会がペドレリーア大陸に及ぼす影響は大きい。統一教会ということもあって、君達にとっての敵は『這い寄る混沌の蛇』くらいだ。いかに大国の姫と雖も、リズフィーナさんの顔色を窺わないという訳にはいかない。でも、このベーシックへイム大陸はペドレリーア大陸とは異なる文化を持ち、独自に発展した歴史がある。当然、宗教や思想にも違いがある。まあ、ごちゃごちゃあって統合が行われ、多種族同盟加盟国には黒百合聖女神聖法神聖教会とフォティゾ大教会の二つがあるのみだけど、多種族同盟はそのどちらも容認し、それぞれの宗教の長にも多種族同盟の議席を与えている……まあ、黒百合聖女神聖法神聖教会は四つの宗教を合わせた組織だから、議席も白夜のものを含めて五つ与えられているんだけどねぇ。ボク達は君達の大陸の秩序に対して何かを言うつもりはない。仮に多種族同盟に加盟してもどうぞご自由に君達は君達の信仰を守ってくださいというつもりだよ。改宗を求めるつもりはないからねぇ……ってか、黒百合聖女神聖法神聖教会みたいな過激派に増えられても困るから是非是非改宗はしないで真っ当な宗教で居てもらいたいんだけど」
「アハハハ、女神様として崇められるのも大変だなぁ」
「……ってか、あいつら絶対に信仰していないよねぇ! 神様を顎で使って宗教画書かせたり宗教音楽を書かせたりしないでしょう! そもそも神として崇められる気なんて更々ないのにさぁ」
「それは無理じゃねぇか? 名実共にこの世界の原型を作った訳だし、この世界の管理を任されたハーモナイアを作るように幹部の化野學に命じたのもお前なんだしさぁ」
「それ言うなら、高槻さんも崇めないといけなくなるよ。あの人、一応ボクと同格っていう扱いだったし……ボクに関しては筆頭株主兼アルバイトって立場だったから、役職持ちの高槻さんよりは立場的に弱いんだけどねぇ」
「ポラリスの原型みたいな奴を崇めるのはなぁ。……ってか、筆頭株主って要するにゲームを作るための金を出していたってことだろ? 普通に考えてお前の方が偉いんじゃねぇ?」
「高槻さんにはそんなことお構いなしに、ガンガン没にされたけどねぇ。ボクも高槻さんの提案をガンガン没にしていたから人のこと言えないけど」
「……ってか、お前らって組まない方が大成できたんじゃねぇか?」
「今振り返るとそんな気がするよねぇ。お互い、自分の性癖を爆発させて最高な作品を数多く出せた気がする。ただ、あのチームだから作れたものが沢山あるのも確かなんだよねぇ。……って、しまった脱線し過ぎた。今後の方針だけど、ボクとしてはペドレリーア大陸の件がある程度片付いたらダイアモンド帝国、ライズムーン王国、プレゲトーン王国、騎馬連合国には少なくとも声を掛けようと思っている。ダイアモンド帝国のディオンさん、ライズムーン王国のリオンナハト王子とカラックさん、プレゲトーン王国のアモン王子、ギルディアズ殿、ヴォードラル殿、欲しい戦力がいるからねぇ」
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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