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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-158 冬の日、庭園にて――。 scene.2

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


「マリエッタちゃんは王城で知り合いの侍女とかも、身分差がーって避けられたもんだから悲しくなっちゃったみたいでさ。そこでオレの見舞いついでに相談されたから、オレの知り合いから紹介してこうかなって」


「そうか、それじゃあ挨拶も済んだろうからもういいだろう。私達も休憩時間が終わるから行かないと」


「忠告ついでにもう一つ。その馴れ馴れしい『ちゃん』付けはやめた方が良いかと。本気でモテたいというのであれば、紳士の振る舞いを心掛けるべきだと思いますわ」


「リジェルが紳士って……ふふ、面白いイメチェンだね」


「アルベルト、笑うなよ!」


「その軽薄な性格を改善して一途に女性に尽くすタイプになれば、多少は良縁にも恵まれる可能性が出てくるんじゃないかと。……実はリジェル様のことをお慕いしている方を存じているのですが、この様子だと可能性は薄そうですし、まあ、恋愛だけが全てではないですから、独り身でもきっと良い余生を送れると思いますよ。趣味を持ったり、動物を育ててみるのもいいかもしれませんね」


「もしかしなくても結婚できないって前提で進んでいない!? というか、オレのことを慕っている人がいるって話、もっと詳しく」


「……その話は忘れてください。彼女には非常に申し訳ないし、できれば状況を改善したいところですが、これがこれじゃあ、多分、というかまあ、無理ですからね。それに、彼女には彼女で問題がありますから」


「おい、アルベルト! なんで笑っていやがる! ってか、お前もしかして知っているのか!?」


「さぁ? 何のことやら。とにかく、私達はここで失礼しますよ」


「えっ、あの、あたし、まだ貴方のお名前を聞いてません!」


「……アルベルト=ヴァルムト。あまり気安く呼ばないようにお気をつけてくださいスターチス嬢」


 うわぁ、どストレートに嫌悪感出している。でも、気づいていないぽいねぇ。気づいていないっていうか、へこたれてないという方が正しい?


 まあ、そうだよね、アルベルトって基本的に人当たり良いと思うけど、結構他人との距離感難しい人だし。その上、マリエッタの内面も知っているんだから、そりゃ、好意的な態度なんて取る筈ないか。


 多分、転生体マリエッタの頭は悪くないんだと思う。ボクに注意されたことに対して、はっとしていたようだし。

 これが空気読めないタイプなら「でもぉ、あたし、そういうのって変だと思うんです!」とか言い出しちゃうだろうし。……彼女の前世だと思われる八嶋奈穂子はクラス委員長を歴任し、クラスの成績も毎回一位という才女だったみたいだし。


「そうでした、もう一つ。マリエッタさんはリジェル様とお付き合いされている訳ではないのですか?」


「ええっ、違いますよ! リジェルさんは討伐隊で辺境に来ていた際によく話しかけてくれて仲良くなっただけです。とても親しみがあったから……つい」


「そうですか、お気持ちは分からない訳でもないですが。でしたらもう一つ。男女の仲でない方のお名前を呼ぶことは気をつけた方がよろしいかと思います。リジェル様も貴族位の方ですのであまり親し気に名を呼ぶようですと、そのように受け取られてしまいますよ」


 まあ、それを注意しないリジェルが全面的に悪いんだけどねぇ。

 狙ってる女の子だから外堀を埋めてとかそんなあくどいことを考えてるかもしれないじゃないかな? って思ったけど違ったみたいだ。


「あ、あー。……うん、ほら、可愛い女の子に名前で呼ばれるって気分良かったからさ」


「……こんなんだから恋人ができないのだろうけど、本当に分かっているのかしら?」


「ローザ殿、言葉の刃でグサグサされてリジェルが死にそうです」


「そうかしら? すぐに復活すると思うのだけど。マリエッタさんもこれから大変かと思いますが、こういった事柄の一つ一つで人柄まで判断される事態になりかねませんから。ご注意くださいね」


「……やっていけるでしょうか。あたしの友人だと思っていた人が、侍女と貴族じゃ立場が違うって……」


「侍女として仕事をしている時には働き人としての立場があります。貴族の令嬢として立つ場合とそうでない場合があるように、侍女として立っている場合は貴女の友人という立場は取れません。ましてや、身分差というものは公式の場では絶対とも言えますから。私も侍女のお仕着せを着ている時は公爵令嬢ではなく、一人の侍女としての態度を心掛けておりますわ」


 ……そう、筆頭侍女として態度を取りたいんだよ。周りの連中がその境目を曖昧にしようとしてくるだけで……そういった意図での行動ではないんだけど。


「そうなんですね、ありがとうございます! 王女宮の方ってことは、当然王女様のこともご存知ですよね」


「それは、ええ、勿論。筆頭侍女としてお仕えさせて頂いておりますので」


「生誕祭のパーティでお姿を見ることができると思うんですけど、お姫様って現実にはどんな人なのかなって思って……」


「王女殿下は聡明な方です。まだ十歳ですが、大変愛らしくまたお優しい方ですから、貴女にもお声をかけてくださるかもしれません。その時の対応はきっと教育係が教えてくれると思います。……そうですね、控えめに言って天使! でしょうか!」


「ローザ殿、お気持ちは分かりますが急に大声を出されるのは……」


「申し訳ございません。貴族としての態度を取るようにと言っていた私がしてはならない失態でしたわ。しかし、天使であるのは事実ですので反省はしていません」


「まあ、確かに『天使』という表現が相応しいお方だとは私も思います」


 ボクの言葉とそれを肯定するアルベルトの言葉に、マリエッタは不思議そうにするばかり。

 そうだろうねぇ、ゲーム知識があるならボクの言葉はおかしな点ばかりなのだから。


 でもボクは嘘を一つも言っていない。……だからさぁ、初対面でプリムラに肉饅頭とか言うなよ! 絶対に打首にされるからな! あの親莫迦陛下に!!



「これは一体、何の集まりですの?」


 アルベルトが休憩時間だと明言したことだし、そろそろ解散すべきだと言おうとしたタイミングで物凄く不機嫌そうな声が入口から聞こえてきた。

 不機嫌そうでもあるけど、同時に憔悴している感じだねぇ……何があったの? ヴィオリューテ?

 不機嫌そうな猫を思わせるけど、あまり覇気がないから正直、怖い感じではないんだよねぇ。大丈夫? って声を掛けたくなる。


「ローザ様に会いたいとお客様が来ていらっしゃるのでお呼びしに来たのだけど……リジェル、貴方、休憩の邪魔をしているのかしら?」


「邪魔なんかしてないぞ! オレはマリエッタ嬢を二人に紹介していただけで……」


「ああ、例の……でも式典前に王城内の深くまで部外者を連れ込むなんてどういうつもりなのかしら? 貴族の端くれとしてのマナーすら忘れたの?」


「なんだよ、そんなにツンケンするほどのことじゃないだろう?」


「……本当に、こういうところがモテない理由なんでしょうねぇ。いつまでも恋人ができない理由がよく分かりましたわ。……それで、ヴィオリューテをそんなに憔悴させた予定外のお客様って一体誰なのかしら?」


「おい、筆頭侍女様。それってどういうことだよ! モテない理由って一体何!?」


「ヴィオリューテさん、これのことは気にせず報告お願いしてもいいかしら?」


「そうね。声が大きくて、身長が高くて、頭に全く似合っていない鬘を被った隣国の伯爵様……名前は、何て言っていたかしら? 声が大き過ぎて耳を塞いでいたから聞こえなかったわ」


「……ポラリス=ナヴィガトリア伯爵ことヅラ師団長ですね。隣国フォルトナ王国の英雄の家系出身で【漆黒騎士】オニキス閣下の自称ライバルですわ。……姫さま、被害に遭われていないといいのだけど」


「ローザ殿、本名と通称が逆になっています」


「それは大丈夫よ。直接被害に遭ったのはソフィスさんだから」


「それはそれで良くないのだけど……あの二人ってそこまで関わりが無かったわよね?」


「……どうやら、王女宮に行く前にアポ無しの登城だからと統括侍女様の許可を得に行ったそうなのよ。そこで、ソフィスさんが有給を使ったことにして仕事をしていたと話を聞いて、『休むべき時にはしっかりと休み、仕事をする時はしっかりと仕事をするべきであろう! メリハリを持って仕事をするべきだ! 体調を崩しては元も子もないのだ!』とガミガミ説教を始めてしまうし、ソフィスさんはソフィスさんで張り付いた笑みで言い返しているし、とてもカオスな状況だったわ」


「その手がありましたわ! 有給使ったことをしてここからの時間は趣味で王女宮でお仕えしています。って言えば、有給の消費もしっかりできますわね」


「……ローザ殿、それだと何も解決していませんよね?」


「まあ、私の有給問題は置いておきましょう。ヴィオリューテ、とりあえずあの師団長を黙らせないといけないわ。巻き込まれるといけないからゆっくり帰っていらっしゃい。リジェル様、マリエッタさん。申し訳ありませんが私とアルベルト様も職務に戻らねばなりませんのでこれで失礼致しますね」


「ゆっくり、ね」


「くれぐれも、騒ぎは起こさないように気をつけるのよ」


「わ、分かっているわ!」


 あらかじめリジェルに突っかからないように釘を刺してからリジェル達にも別れの挨拶だけ言い切ってお辞儀をし、アルベルトと共にその場を後にする。


「大変な目に遭いましたね」


「ボクはこれからもっと大変な目に遭うんだけどねぇ。……でも、姫さまが不在だったことと来たのがヅラ師団長だったのがまだ救いだったかな? ……総隊長殿も多分、貴族としての立ち居振る舞いができるから起爆剤さえなければ大丈夫だけど、他は問題起こしそうな人しかいないからねぇ。……はぁ。とりあえず、マリエッタに関して何かあったら遠慮なく仰ってください。……本当はこの段階で関わる気無かったんですけどね」


「本当に最悪でしたね。……折角のデートを台無しにした責任は後で取ってもらうとしましょう」


 デートを台無しにされて青筋を立てているアルベルトと別れ、王女宮に戻る。

 リジェル、明日まで生きていられるのかな?

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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