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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-155 スターチス親子の登城 scene.2

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


「となると、お前の影響を受けてなさそうなのは犬猿の仲のポラリス師団長ぐらいか?」


「あー、ヅラ師団長の元ネタは高槻さんだからねぇ」


「高槻斉人というと、圓様と双璧を成すゲームクリエイターでしたよね。……犬猿の仲なのですか?」


「あの人はケモ耳しか認めない人、ボクは百合以外はBL以外は許容するけどケモ耳一辺倒は許せない人。……まあ、犬猿の仲っていうのは間違いないねぇ。ただ、同時に高い信頼を置いている相手でもある。ヅラ師団長の転生者の五反田堀尾先生(ヅラ教師)のこともあの高校の教師の中で最も信頼を置いていたけどねぇ。……高槻さんとは腐れ縁の関係でねぇ。実は瀬島奈留美と同じくらい深い繋がりがあるんだ」


「そいつは初耳だなぁ」


「言ってないからねぇ。彼の前世はベネトナシュ・グランシャリオ・ポールスタア。男性ながら魔法に秀いで、【終わりの魔女(エンド・ウィッチ)】の異名を与えられた大災害級魔法使いで、黒猫を変化させたケモミミ少女を常日頃から侍らせているケモミミ大好き男だよ。群れを嫌い、たった一人で魔女狩りから生き残った化け物であり、最強の聖騎士と言われたクリストフォロス=ゲオルギウス……ボクの前世だった聖騎士と互角以上の死闘を繰り広げた。自称クリストフォロスのライバルで、職人肌気質かつ好戦的、更には融通が効かず、変なところで四角四面過ぎるという面倒な性格で声も大きい……クリストフォロスも彼を苦手としていたらしいんだけど、一方で一定の信頼を置いていたし、ベネトナシュのことを憎み切ることができなかったそうだ。史上最悪の闇の魔術である複製霊術により自らの魂を七つに複製しており、七つの命をその身に宿していた。彼の死後、七つの魂はそれぞれ転生し、全て高槻斉人という人物に転生した。実際、神界は同じ世界に転移することになる二人の高槻斉人に関する情報を掴んでいる。結界術に長けていて、『ヌースの領域』という固有魔法を有し、この魔法によって全知全能の力を行使することができる空間の構築が可能だった。ただし、あまりにも全知全能過ぎて使用法が多岐にわたるから、ベネトナシュは『特定のルールに縛られ、条件を満たした時に脱出可能な世界の構築』……つまりはゲームのような形で作り出していたらしい。そのゲームには途轍もない拘りを見せていたそうだから、来世でゲームデザイナーに転生した縁を感じるよねぇ。ちなみに、クリストフォロスから瀬島奈留美の前世であるベアトリーチェに関する記憶を奪ったのもベネトナシュだよ。まあ、クリストフォロスの頼みを受けて記憶を奪ったんだけど。まあ、これは神界経由で掴んだ話で、高槻さんには聞いていない。でも、彼は確実に前世の記憶を持っていると思うよ」


「まあ、絶対に普通じゃないとは思っていたが……圓の前世の関係者だったか。しかし、なんで記憶を……そういうことか。愛していた人をこの手で殺さないといけなかった……最後は殺さず逃した訳だが、大きな傷を心に残すことになった。それを忘れるために。……その一方で、ベアトリーチェはその記憶を、恨みを、憎しみを継承し続けた。忘れたお前と、忘れずに煮詰めた瀬島奈留美……本当に対照的だな」


「記憶を取り戻すことはできたけど、そのつもりはないよ。クリストフォロスとベアトリーチェの悲劇はあの時、確かに終わったんだ。ボクはクリストフォロスの転生者ではなく百合薗圓として、ボクの大切な人を守るためにボクの大切を脅かす瀬島奈留美とその仲間達を殺そうと思っている。ボクと瀬島奈留美の関係は歪んでいるんだ……取り返しのつかないくらいにねぇ。どちらかが死ぬ瞬間が、それの終わりだと思う。今度はボクの手で確実に終わらせる……過去を消し去らなければ、百合薗圓の本当の人生は始まらない」


「……悲しいですね」


「結局、時代が生んだ歪みだよ。誰が悪いって訳でないんだ」


 まあ、記憶があってもなくても、瀬島奈留美を倒すまでボクは本当の意味では進めないと思う。結局、記憶がなくてもベアトリーチェの転生者と繋がりが生まれたように、逃れることはできないんだと思う。

 これが運命というものの面白さであり、同時に憎らしいところでもあるんだよねぇ。



 ボク、アルベルト、バルトロメオの三人はスターチス親子のいる応接室……の隣にある控室の方に入った。

 実はノクトから「二人の様子を見に来たかったら見に来ていいよ(意訳)」とボクを含む筆頭侍女達に話があったんだけど、その条件は隣室からそっと覗くことだった。「今日だけで色々な人間と会うのに、更に直接的に関わるかどうか分からない筆頭侍女達まで来ては彼らの負担になるだろう」という配慮だねぇ。


 この部屋は本来、メイドがお茶やお菓子を準備したり、秘書官達が書類を整頓したりと色々な縁の下の力持ちが控える場所なんだ。……用途が違っているような気がしないでもないけど、小さく続きの応接室へと続く扉がうっすらと開いていて「どうぞ見てください」ってお膳立てされているし、トルソーとドレスで目隠しされていてこっち側から見えにくい代わりにあちらからも見えにくいようになっているし……もう、これ、覗くしかないよねぇ!! って完璧に準備がされているねぇ。


 ノクトと幾人かの年嵩な侍女が居て、針子が数人居て、文官が数人背を向けていて……普通の平民ならこれだけで緊張しそうだねぇ。

 そして彼らの視線の先に、豪奢な王城の一室にちょっと似つかわしくない超緊張した面持ちのちょっとだけ仕立ての良さそうな服を着た男と美少女が座っている。


 中肉中背のがっしりした体格の男がオートリアス=スターチス。人懐っこい笑顔の酒が好きな普通の壮年男性で妻に先立たれて娘と二人、力を合わせて冒険者家業で食い繋いできたらしい。……こっちは普通のおっさんだねぇ。恐らく白だと思う。


 もう一人は鮮やかな薄紅色の艶やかな髪に碧玉(エメラルド)を彷彿させるキラキラとした瞳を持つ美少女。背丈はさほど高くなく、華奢で色白、スタイル良し、性格良し、声は鈴のように愛らしい……っていう感じかな? 彼女がマリエッタ=スターチス。……そして、そんなマリエッタに重なるようにうっすらと唇に笑みを浮かべるもう一人のマリエッタの姿が透けて見える。髪も瞳も、唇までが黒く、肌だけが雪のように白い。


「親友、見えたか? 俺には何も見えなかったが」


「……見えた。黒いマリエッタがマリエッタに重なるように透けて見える。……流石にローザの姿までは見えないけど、魔力波形はボクの闇属性の魔力と同じ」


「つまり、圓様の予想は当たっていたということですね」


「そういうことになるねぇ」


「で、どうするんだ?」


「どうするって? 放置だけど。今はまだその時じゃない。……ずっと考えていたんだけど、マリエッタの目的はアルベルトさんだと思う。そこは絶対に動かない。でも、ローザ=ラピスラズリが隠し攻略対象のアルベルトに恋心を抱いたっていうのは可能性としては低そうなんだよねぇ。だったら、そんなまどろっこしい方法を取らずに直接行動に移ると思うし。普通に考えてローザの狙いはボクだ。……最終的にマリエッタとボクを敵対させる方向には持っていくとは思う。ボクってマリエッタにとっては邪魔でしかない悪役令嬢だし、前世の記憶を持っていたら仲良くなろうとする方が珍しいだろうし、その上、アルベルトさんはボクに想いを寄せているから彼女にも敵対の理由はあるし。……でも、それだけじゃ足りない気がするだよねぇ。……もう一人くらいボクに恨みを持つ人間が必要だって考えそうだけど、現状だとあんまり関係が良くないのは第三王子殿下くらいだし……気を付けておいた方がいいのはそれくらいか」


「寧ろ、わざとヘンリーと敵対するように仕向けていたところあるよな? 親友って」


「あれ? バレてた? 隙を作っておくと、相手の行動をある程度制御できる。ちょっとしたテクニックを使っただけだよ。それに、油断を誘っておけば、それだけどんでん返しがやりやすくなるからねぇ」


「……ヘンリーとマリエッタ。主人公とメイン攻略対象が囮ねぇ。……随分と豪華な囮だなぁ」


「挙句、二人を操っているローザも囮の可能性があるからねぇ。ローザ=ラピスラズリは裏ボス令嬢だけど、策士タイプじゃない。……この件、『憂鬱』が裏でコソコソ手薬煉を引いて漁夫の利を狙っている可能性の方が高い気がする。……アレは策士だからねぇ。ローザを黒幕だと思わせておいて、最後の最後に美味しいところを持っていこうと企んでいても別段不思議じゃない」


 『憂鬱』はかなり厄介な奴だ。

 そもそも、『魔界教』の中枢は七つの玉座と空の玉座に構成されていて、空の玉座には誰も座らない、つまり『魔界教』にトップはいないとされているんだけど、それも『憂鬱』のメランコリーが流した噂なんだよねぇ。自分に関する情報をひた隠しにして、同僚の枢機司教達を嗾しかけてくる。自分が正体を現すのは枢機司教達が全て倒されてから……それまでは尻尾すら掴ませてくれない。

 強大な力を持っていながら、その力を過信し過ぎない。……ゲームの知識を持っているか、或いは『八つの枢要罪』について知らない限りは彼が表立って動き出す瞬間まで暗躍に気づけないと思う。この辺りは前世のゲーム知識あって良かったと思うよ。


 ……まあ、「存在するだけで世界を汚し、自然を、生態系を破壊し、資源を空費し、無尽蔵に増殖する人間こそが悪そのものであると考え、人間を皆殺しにすることで世界を憂鬱から解放することができる」という彼の思想のヤバさはさておき、策士のレベルとしてはアポニャソーレーペテップに劣ると思っている。まあ、比較対象がヤバ過ぎるんだけどねぇ。正直、ヒロインとかローザとかより現在進行形で二人も人質を取られてしまっている『這い寄る混沌の蛇』の方がボクに取っては懸案事項なんだよねぇ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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