Act.9-153 高難易度クエスト【ボスバトルメドレー】の8rd roundへの挑戦 scene.2
<一人称視点・エミリア=ソピアーナーヴァ>
リーリエが二人だと紛らわしい、あんまり使っていなかったエミリアのアカウントを久しぶりに使おうとアカウントを切り変えたら、エリカにガッカリされた。
「てっきり、リーリエさんだと思っていましたから」
「エミリアのアカウントもそこそこ強いんだけどねぇ。必要な職業は取得済みで、真聖なる神々の種族持っているし、古代竜と神祖の龍人で竜の力も使えるし。……まあ、リーリエに比べたら弱いけど、でも、リーリエ二人いるとどっちがどっちか分からなくならない?」
別に「守る」って言葉に嘘はないんだけどねぇ。どれだけリーリエの実力を信頼し切っているの!? いや、リーリエは文句無しの最強だけどさぁ。
なんとか、エリカを納得させてクエストルームに入る。
敵はリーリエと青薔薇のローザ。搭載したのはいずれもボクの思考を九十九パーセントトレースした高性能AI。どんな状況にも対応できる柔軟性を持ち、常に最適解を導き続ける。
クエストでは具体的に誰が出てくるか示されていないから、初見で出てきたらきっと絶望必至だろうねぇ。
「アイオーンの神域」
勿論、先手で一気に仕掛ける。じゃないとボクでも苦戦が免れないっていうか、場合によっては負ける相手だからねぇ。しかも高確率で。
発動したのは時空から隔絶された特殊な結界を構築するアイオーンの専用技。実は発動されるだけで実際に使われたことはないんだけど、思考を実体化させる万物創造の究極能力で、実はかなり強い技なんだよ。
この「アイオーンの神域」で無数の弾丸を創り出してリーリエに向けて放つ。
弾丸にはホーミングシステムを組み込み、更に命中した地点に消滅属性魔法ダメージを与える物理魔法を付与している。つまり、「天地終焉の崩滅剣」の弾丸バージョンだねぇ。
……この技があれば新技の開発も可能なんだけど、真聖なる神々ってなんでしないんだろうねぇ。まあ、されたらされたで厄介さが際限なくなるからやらないで欲しいんだけど。
「過剰殺傷を付与する者!」
「圓さん、あの技って攻撃を無効化して自己強化する技ですよね! あれ使われたら攻撃が無駄になってしまうんじゃ……」
「エリカさん、勘違いしているよ。あれは自身のHPを上回る大規模な物理以外の攻撃を一度だけ無効化し、その威力分攻撃力を上昇させる付与術師系四次元職の極大付加術師の奥義だ。だから、一撃で死ぬような攻撃を浴びなければ効果は発揮されない。相手の強力な攻撃を受けそうな場合にあの技を使うように設定されているけど、死なない程度の攻撃を浴びせれば無効化できずにダメージを受け、更に再使用規制時間が発生する。そして、リーリエは時計を生み出して破ることで再使用規制時間を帳消しにするボクの戦法を使うようには設定されていない」
見気の未来視と紙躱を使って必死に躱し続ける。どうやら、リーリエのAIは回避で十分と判断したようだけど、ホーミング攻撃だし回避行動を取っていたらジリ貧になると思うんだけどなぁ。
「ブラックホール・フラグメント」
ローザが小さなブラックホールの断片を複数同時に出現させる闇属性フェイク魔法で弾丸のいくつかを消滅させたけど、ボクの放った弾丸は二発だけ生き残り、リーリエの両腕を吹き飛ばした。
武装闘気を纏って無効化しようとしたようだけど、武装闘気ではまず消滅攻撃は防ぎきれないからねぇ。この攻撃で腕を落とせたのは結構大きい。
リーリエのメインウェポンは双剣だからねぇ。剣術技も多いし。
「聖究極治癒術式」
勿論、回復魔法を使われるのは想定内。神官系四次元職の施療帝と聖女が習得可能な最高ランクの回復魔法で失われた腕が修復される。
「回復魔法まで……一撃で倒さないと勝てないんじゃないですか!」
「回復魔法は一試合で合計三回までと決められている。先に回復潰しておくのは鉄則だよ」
「虚空ヨリ降リ注グ真ナル神意ノ劒」
「ダークマター」
「降らせた光の剣で相手の動きをある程度制御し、追い込んだところでトドメのダークマターか。やっぱりいい連携しているねぇ」
エリカをお姫様抱っこして降り注ぐ光の剣を避け続ける。作戦はなかなか練られているけど、狙いは見え見え。見気の未来視で予測し、「ダークマター」の発動地点を避けて回避しつつ、「火竜帝の咆哮」と「白氷竜の咆哮」を両掌から放ってリーリエとローザを狙う。
「雷光の颱渦」
ここでようやくエリカが動いた。ボクにお姫様抱っこされながら、雷の竜巻を生み出してローザに向かって放つ。
なかなかの規模と破壊力の魔法だ。ただ、雷属性吸収のプリンセス・エクレールには効果がないけど……って、それは他の雷属性魔法や攻撃にも言えることか。
大量の武装闘気が練り込まれた雷製の竜巻から四方八方に青い雷撃が枝のように伸びる。この放電もなかなかの威力で高い貫通力を持つ上に武装闘気で強化されているから並の耐久力では防ぎきれない。
「刃雷飛斬」
「雷光の颱渦」を展開しつつ、更に雷の刃を連続で放つエリカ。これもまたなかなかの威力だ。
「ブラックホール・フラグメント」で防がれなければローザの腕を切り落としつつ黒焦げにする程度のダメージは与えられたんじゃないかな?
「ダーク・アロー」を連続で放って動きを制限させつつ、圓式の斬撃を放ってくるローザの攻撃を「アイオーンの神域」で実体化させたバリアで受け止める。流石に裏武装闘気で作り出した双剣から繰り出される圓式を片腕だけじゃ防ぎきれない。一刀流と二刀流じゃ手数の多さが変わってくるし。
「時空の神と虚空の神、今交わりて一つとなり、全ての破滅へと導く終焉の一振りを繰り出せ! 虚空にして時空なる終焉の斬撃」
ここまで近づいてくれたら攻撃を当てるのは容易い。バリアを消滅させてから時空連続体を切り裂くように無数の亀裂のような斬撃が伸ばし、奔った亀裂に当たったものを完全に消滅させる時空・虚空・消滅属性複合魔法を発動し、ローザを消滅させる。
流石に消滅魔法を浴びたら蘇生はできないからねぇ。
「回復は残り二回。回復使われる前に倒し切るのがベストだけど……衆生地ニ伏ス神龍ノ劔」
俊身を使って肉薄し、竜属性の光を纏った剣で三十回連続で神速の飛斬撃を放つイベント職の神竜騎士が習得する奥義を放つも「吸血姫の翼」で飛翔されて躱された。
お返しとばかりに頭上からまやかしや残像ではない実体のある分裂した八つの剣先を降り注がせる「天降八枝刃」……やることが本当にえげつないねぇ。
「アイオーンの神域」で思考を実現させたバリアを張って防ぎつつ、創り出した剣を媒介に「ジャガーノート・ソード」を発動してクリティカルダメージを与える。
ボクに発生したダメージを即座に回復魔法で回復させるけど、敵のリーリエも回復魔法を使って生存。回復は残り一回だねぇ。
「氷武創造! 殺戮者の一太刀」
氷の剣を創り出し、膨大な覇王の霸気を纏わせて放つ暗殺者系四次元職の暗殺帝の奥義。
リーリエは攻撃の範囲内に入っているし、これで撃破できるか、仮にできなくても高確率の即死効果で撃破できるかと思ったけど、武装闘気と覇王の霸気を分厚く纏うことで辛うじて生存。そして、最後の回復魔法が発動され、リーリエが全回復する。
「殺戮者の一太刀-圓式-!!」
あっ、これ、ちょっとマズイかも。覇王の霸気を纏わせているから光化しても実体にダメージが入る。このレベルだと「アイオーンの神域」でバリアを張ってもバリアごと粉砕されそうだし……。
「だ、大丈夫なんですか!?」
「……大丈夫じゃ、ないねぇ」
「アイオーンの神域」の思考実体化を利用して瞬間移動を行い、「神の怒りで灰燼に帰せ」と「天網恢恢疎にして漏らさず」を同時発動してリーリエに浴びせる。流石にリーリエでも「過剰殺傷を付与する者」が無ければ耐えきれない。事前に使わせておいて良かった。
◆
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
戦闘を終えてバトル・クエストの受付に戻る。
その後、景品交換所に移動して新星劇場のミッテルロージェを一回分プレゼントした。
「あの……これって結局、圓さん一人で勝てたのではありませんか? ただただ、怖い思いをしただけだと思いますが。お荷物になっただけですし」
「エリカさんが戦っているところ見たことがないから見てみたいっていう思惑は達成できたし、ボク的には満足なんだけどねぇ。まあ、ミッテルロージェの席も手に入って良かったんじゃない?」
「初日公演の特等席を取れたのは良かったですが。……失ったものの方が大きいような」
そんなことないと思うけどねぇ。エリカの方法だと入手までかなりの時間が掛かるものだし。
若干腑に落ちない表情のエリカとは景品交換所で別れ、バトル・クエストに戻る。
さて、残る九つのラウンドも実際に挑戦して確認しよう。後、他の追加クエストの確認もあるけど……それはぼちぼち時間作って進めていけばいいか。まだ実装したところで挑戦できる人いないだろうし。




