Act.9-151 ヴァルムト宮中伯領の危機 scene.6
<一人称視点・リーリエ>
ラインヴェルド達を待たずにリステルカと共に迷宮の最奥部に移動する。
言うまでもないとは思うけど、従魔にしたリステルカの名前はリステルカ・ζ・ラビュリントと元々の名前をそのまま採用しているよ。
名前:リステルカ・ζ・ラビュリント
種族:戦舞の舞闘家、迷宮統括者
所有:リーリエ
HP:50,000,000
MP:50,000,000
STR:22,000,000
DEX:5,000,000
VIT:59,000,000
MND:59,000,000
INT:52,000,000
AGI:8,000,000
LUK:30,000,000
CRI:30,000,000
▼
『ところで、ここにはお一人で挑戦されたのですか?』
「いや、ボクは最下層に転送させてもらって美味しいところだけもらった。今回は色々と試したいことがあって、迷宮を実験場にさせてもらったからねぇ。三十三人の精鋭達と一国の国王陛下が来たんだけど、現在三十二人の精鋭を束ねるリーダーさんと国王陛下は今頃九百層辺りで勝負しているんじゃないかな? まあ、仮にボク一人だけでも一日で突破できたら、あんまり大差のない話だけどねぇ」
『あれほどのお力を持っているなら確かに魔物達相手でも苦戦はしないと思いますが……流石に一日での攻略は不可能なのではありませんか?』
「こういうタイプの迷宮は構造上攻略が容易いんだよ。床ぶち抜いて下の階層に進めばいいだけだし。横に広いと五日くらいは掛かるけどねぇ。勿論、最短距離で進んで、だよ」
『……そう言った攻略方法も、あるのですね』
リステルカにとっては信じたくない話か。でも、高難易度大迷宮の脅威は突如、理不尽に出現するものだ。だから、理不尽に攻略されても致し方ないと思うのだけど。
最下層で財宝を獲得した後、迷宮のシステムを弄って魔物が外に溢れないようにしてから、リステルカと共にラピスラズリ公爵邸に転移し、ジーノに教育を依頼した。
一通り終わったところで【ゼータの深淵迷宮】に戻ってくると、ラインヴェルドとプリンセス・エクレールのJOKERはまだ戦っている。
「ラインヴェルド陛下、そろそろ戻りますよ」
「ちぇ、折角いいところだったのに」
「……ヴァルムト宮中伯家で厨房借りて料理を作らせてもらったけど、陛下だけ食事抜きでそのまま今日の午前中に転移させればいいんだねぇ?」
「圓の料理!? プリンセス・エクレール、今回のところは引き分けだ。だが、次は負けねぇぞ!!」
「なんかごめんねぇ、面倒な子守をさせちゃって」
「いえ、私にとってもとても為になる戦いでしたので問題ありませんわ。えぇ、次こそは勝たせて頂きます」
「おい、俺は子供扱いかよ!!」
プリンセス・エクレールを屋敷に転移させてから、ラインヴェルドと共にヴァルムト宮中伯邸に転移する。ちなみに、ボクが戻ってきたタイミングでJOKER以外のプリンセス・エクレールはプリンセス・エクレールが作り出した特殊な異次元空間に転移させ終わっていたようだ。
一度召喚したプリンセス・エクレールはJOKERの力を使っても消すことはできない。そこで考え出されたのがこの方法なんだけど、異次元空間に留めておくことで、どこからでも軍勢を召喚できるというのはかなりのアドバンテージになるんだよねぇ。相手に人数を誤認させることも可能だし。
戻すと丁度夕餉の時間だった。ちなみに、レイリアはヴァルムト宮中伯家を破滅させる恐れがあるということであの後クラインリヒの指示を受けた執事によってヴァルムト宮中伯邸を追い出され、領地の中でも辺境に位置する屋敷に送られたらしい。
レイリアが任されていた屋敷よりも更に領地のヴァルムト宮中伯邸から遠いところにある場所だから、レイリアにとっては最悪な左遷だねぇ。アルベルトにも接触禁止命令が出ているし、流石にもう関わってくることはないだろう。
屋敷から追い出された時のレイリアはボクに対する呪詛のような言葉をひたすら口にしていたらしい。とても恐ろしい形相だった……そうだけど、一応、ボクも呪術の心得あるからねぇ、呪い返しって知っている?
「ヴァルムト宮中伯家の皆様のお口に合うかは分かりませんが、コース料理をご用意させて頂きました。料理の毒味は料理長にして頂きましたので問題無いと思います」
「まあ、その料理長は食べて卒倒していたみたいだけどな。美味過ぎて」
「これでも本気で作ってはいないけどねぇ。もし、ボクの今の本気を味わいたいのであれば、完全予約制のクラブ『クラブ・アスセーナ』へどうぞ」
「どうぞって言ってもなぁ、ポイント交換所では一千万ポイント……高過ぎるぜ。ってか、おかしくないか? 銀シンボルを手に入れるだけでもかなり苦戦するし、金シンボルに到達する前に毎回負けるんだけど」
「確かに、バトル・ライブラリー、バトル・サブウェイ、バトル・ダンジョン、バトル・ルーレットでは不思議と普段よりも戦いにくい感触がありますね。これまでは気のせいかと思っていましたが……」
「そうだねぇ……ルークディーンさんは冒険譚を好んで読んでいると思うけど、その作品の主人公って基本的には死なないよね?」
「そうですね……死ぬとしても最終話で命を落とすくらいで死ぬことはないと思います。死んでしまったらそこで終わりですから」
「こういった『死なない』、『負けない』というのも一つ。仮に負けても強くなってリベンジして勝つとかもあるねぇ。他に『敵がどんなに攻撃をしても当たらない』とか、『逆に主人公が一発でも攻撃を当てると敵が倒れる』とか、『成功率の低い技や作戦を成功させる』とか、『当人にその気が皆無でも無駄にモテる』とか、『特殊な能力や才能の持ち主である』とか……まあ挙げたらキリがないけど、主人公に『設定・物理法則その他諸々を一切無視した謎の補正』が入ることがある。これを、俗に主人公補正と呼ぶんだけど、これがアルベルトさんが指摘した施設では挑戦するレベルによって程度は違うものの基本的に敵側に入っている状況だと思ってもらえばいい。これを、ボク達は俗にアイランドクオリティと呼んでいる。施設内での戦闘で不自然さを感じたなら十中八九これだよ。でも、バトル・アイランドは基本的にバトルジャンキー達を満足させるための戦闘娯楽施設だからねぇ。ちゃんと補正込みでも勝てることを実証済みだし、別に攻略できないって訳でもないんだよ。寧ろ、それくらいの難易度ないとつまんないって絶対に言うでしょ? 特にラインヴェルド陛下とオルパタータダ陛下は」
「まあ、それもそうだな」
その補正込みでもラインヴェルド達はそう遠くないうちに金のシンボルを集め終えるだろう。
ラインヴェルドと約束したクエストの追加は急務だねぇ。……新年祭の準備をしつつ、並行してそっちも進めていかないとねぇ。そろそろ、時期だし。
「さて、ラインヴェルド陛下。レイドに迷宮探索、もう十分楽しんだよねぇ。確実に知っていると思うんだけど、新年祭という大きな行事が迫っている。当日は姫殿下のご好意でオルゲルト執事長が随伴に選ばれたから仕事が少ないとはいえ、それまでの準備はボク達侍女も進めないといけない。勿論、王族で、更に国王陛下でもあるラインヴェルド陛下も進めないといけない仕事が沢山あると思うんだ。新年祭自体はボクの園遊会での活躍の件があって参加免除、折角時間もあるし、当日の午後からはスティーリア、ソフィスさん、ネスト、ルーネス殿下、サレム殿下、アインス殿下とデートの予定があるけど、重要人物でもなんでもないボクと違って陛下は忙しいでしょう? その前に今年の仕事は今年中に仕事納めをしないといけないし、来年は臨時班の再始動もあるからねぇ。ってことで、働け。死に物狂いで」
「……まあ、言いたいことは分かるけどさぁ。もうちょっと気遣ってくれてもいいんじゃないか? 親友なんだし」
「親しい仲だからこそだよ。ダメな時はダメとしっかりと言えるのが親友だとボクは思うんだよねぇ」
「分かっているよ。流石に来年まで今年の仕事持ち越したくねぇし、そろそろ真面目に働くよ」
「いつもそうしてくれるとありがたいんだけどねぇ」
「……圓殿、新年祭の午後からデートをするのですか?」
ラインヴェルドから言質を取ったタイミングでアルベルトが若干不満そうな表情で尋ねてきた。
「ボクの方から誘ったんだよ。まあ、婚約者候補達だしねぇ。三千世界の烏を殺して均等に時間配分するから問題ないよ。……若干不満そうな顔しているけど、アルベルトさんは今のところ婚約者候補ですらないからねぇ。でも、好感度稼ぐにはデートは丁度いい機会なんじゃないかな? ボクからは誘わないってだけだし」
「つまり、今からデートのお誘いをすれば当日、デートをして頂けるということですか?」
「まあ、そうだねぇ。……アルベルトさん狙いの女子達に聞かれたら何様だって言われそうな話だけど。……デートのコースはどうします? ボクの方で決めてもいいですが」
「私の方でコースは考えておきます。圓殿を喜ばせられるコースを考えておきますね」
甘々な空気感出て二人だけの世界(?)を創り出して若干疎外感っぽいの出ているけど、別に二人だけの世界じゃないからねぇ。
クラインリヒとサフランが「デートの約束って普通は二人きりのところで内密に決めるものじゃないのかな?」って思っているみたいだけど、別に他の人がいてもボクは気にしないタイプだからねぇ。茶化されても事実だから嫌な気持ちはしないし。
コース料理を食べ終えてからアルベルトを現在時刻の近衛の寮に送り届け、ボクはラインヴェルドを連れて元の時間軸に戻った。
さて、予定外のことがあったけど、いつも通りビオラの仕事に向かいますか。
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