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バーサスイーツ物語  作者: 明日やるから
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1 - 1

 惑星デリシアース・デリシャス歴133年。世界は“甘党”と“辛党”による戦争の業火に包まれていた。

 この世から甘いものを根絶し、世界を辛いもので埋め尽くそうとするカラミ帝国と


 それを阻止すべく立ち向かうアマト王国。両国の激突は激しさを増し、やがてはニガラシ村、シブキ村と、他国にまで戦火が広がっていくと予想されている。


  「・・・とんだ時代に生まれちまったもんだな。ワシらも」


 そう言いつつ黒髭の小太りなおじさんがノイズ混じりの音声で世界情勢を流すラジオに手を伸ばし、電源を捻った。


 喫茶シュガー。そこはアマト王国の城下町にある人々のたまり場。早朝から深夜ギリギリまで開店しており、出勤前の職人から帰宅途中の王国兵士まで色々な人種が絶えず集まる。

 店主はラジオのチャンネルを弄くり、陽気な音楽を流す番組へと切り替えた。


 「何も朝っぱらから暗いもん聞く必要ねぇわな?ボウズ」


 店主が声を斜め下に落とす目先のカウンターに座っていたのは一人の少年だった。


 頭を緑のバンダナで覆っており、髪が長いのか髪を後ろで縛り、前髪はバンダナからはみ出している。どこかの職人らしく服装は作業着のようなラフな格好で、彼の座るカウンターには一回り大きい手袋が置かれていた。

 少年は頼んだホットミルクを店主の話を聞いているのか聞いていないのか分からない顔でじっと飲んでいた。

 

「ボウズ、よく見たらそれ作業服か?その歳で何か仕事してんのか、偉いなぁ」


 パッと見、約13歳くらいの見た目であったので店主も少年の着る作業着に一瞬目を凝らしたが、昨今甘いものが消されようとしている時代では人手不足や人数確保のために年端もいかぬ少年少女が戦争や技術開発などあらゆる仕事に駆り出されることも珍しくは無かった。


 「おっちゃんがガキの時はそういう事が無かった時代だったから…戦争なんて物騒な事考えもしなかったな」


 店主が腕を組み昔話をし始めた頃、少年はホットミルクを飲み尽いて足元に転がっていた荷物をまとめ始めた。


 「おいおいなんだボウズ、もう時間か」


 店主は不満そうに眉をハの字にしながら少年のグラスを流し台に運ぶ。少年はカウンターに飲料代を置き、店主に一言投げかけた。


 「私、女だから」


 カランコロンと鈴の音が鳴り揺れる店のドア。それを店主は唖然とした表情で見つめたまま、暫く動けなかった。

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