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31話 予感

「では、お休み」


一言を残し、葵姉さんが部屋を出た。


事情は教えてもらうつもりみたいだが、詳しいことはレンカに知らせたくないのか。


仕方がない。


後で、葵姉さんに聞くか。


あまり教えたくなければ、こっちも無理矢理にしてはいけない。


ただ、この旧都に来たのは、葵姉さんのためだった。


葵姉さんに助けを求められたから、ここに来たのだ。


そのことについても、本人に否定されていない。



「兄さん、何を考えてるの?」


振り返ると、レンカは僕を見ているのではなく、窓の外を見ているのを見た。


まるで虚無を見つめているようだ。



「ちょっと今日のこと考えただけ。それより、何見てる?」


この部屋は一階にあるので、ここから窓の外を見ても、庭しか見えないだろう。


見てみると、外は真っ暗で何も見えない。




突然、レンカが後ろから抱きしめてくれた。


「っ!」


レンカのその動きには驚かされた。


「知ってるよ。お姉ちゃんは何があったでしょ。だからここに来たんだよね」


「なぜそれを!?」


後ろからレンカが囁いた声。


「ごめん。そのつもりじゃ…」


「ううん、分かってるの。兄さんは私に心配させたくないでしょ」


「ごめん… この件が終わったら、もう二度と依頼を受けない」


「約束してくれるの?」


「ああ、約束する。用事終わったら、レンカの好きなところに連れてあげる」



「うん、もう一つだけ、約束してくれるの?」


「なに?」


「自分に無理をしないで…」





レンカがすやすや眠っている。


葵姉さんの家に訪ねてから間もなく… もう寝てしまったのか。


今日も結構大変だった。


きっとすごく疲れただろう。



その寝顔を見ると、初めてこの子に会ったあの夜ことを思い出した。




あの時、レンカの寝顔もそうだった。


疲れそうな寝顔だった。



僕は確信した。


これからどのようなことをしても、どのようなことがあっても、ただ一つ、やらなければならないことがある。



この子を守らないと…



眠れない僕は、こっそりと部屋を出て、引き戸を閉めた。


これから葵姉さんに相談に乗るつもりことにした。


あの時、送ってくれたメッセージは、本当に助けを求めるのか。


普段、葵姉さんのやり方すれば、きっと何か大切なことがあったからこそ、他人に助けを求めるだろう。


だが、今回は何か今までのこととは全然違う予感がする。


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