25話 貴族の街
そう言われても、ここは…
本当に旧都の貴族たちが住んでいる町なのか?
少なくとも、住宅は外から見ると特に広くて華やかな家ではない。
普通にしか見えない家。
普通にしか見えない道。
何か違うことがあるかというなら、その中には広い庭のある大きな家が一軒あるということだ。
そう、目立ちすぎるのだ。あの建築は。
旧都の都心部とは違い、旧都の北にあるこの小さい街は人が少ない。
いえ、適切に言えば、いま街には一人もいない。
道を通る人がいない。
少し異常だ。
「あれ、おかしいですね」
紅蓮が困惑しそうな表情をした。
「普段は人少ないですけれど、今日みたいに人にもいませんとは」
「珍しいことか?それは」
「珍しいというか、街全体には一人の通行人もいないとはあり得ないでしょう」
「貴族だから、あまり外に出かけないじゃないかな」
「そんなことあるの?兄さん」
「だよな、はは」
もしかして、ここでは何かあったのか?
何か異変が起こったのか?
恐ろしく感じられるくらいの静かさ。
とりあえず、葵姉さんの住所を探そう。
よく見ると、この街には桜の木がたくさん点在していることに気づいた。
道理で桜花街というのだ。この街は。
春になると、ここではたくさんの桜が咲くだろう。
…
人足の絶えたこの町に、小御門という名字が書いてある門札を見つけた。
でもすぐには、僕は自分の目を疑わずにはいられない。
すでに心の準備ができたが、目の前にあるその和風豪邸に驚かされた。
まさか葵姉さんの実家の住所はこの桜花町では一番華やかとは思わなかった。
「わぁ、ここ、葵お姉さんの家なの?」
「そうみたいだ」
「きれい!」
「ふふ、お二人さん、ここはお探しのところには間違いないでしょうか」
「ああ、ありがとな」
「紅蓮さんはもう帰るの?」
「ふふ、もし必要あったら、もう少し付き合わせてもらってもいいですけれど…」
…
「ん?誰もいないみたいだな」
チャイムを鳴らしたが、返事はない。
まさか本当に何かあったのか?
くそ!強引に侵入するのもだめだし、どうすればいいのか。
やはり葵姉さんにメールを送ってみるか。
…
一応メールを送ったが、まだ返事が来ない。
これは一体どういうことなのだ?




