23話 住所
「あの、紅蓮さん、どうやっていくの?もしかして歩いていくの?」
レンカはちょっと心配しそうな顔をしている。
この子、体力が弱そうだし、そんな心配があってもおかしくはないか。
「ふふ、そうですよ。決まっているじゃないですか。でもそんあに遠くはないです。桜花町は」
「えぇぇ?!歩いていくんだ…」
「旧都は初めてですか?」
「うん、そうなの」
「では歩きながら、旧都の景色を見ましょう」
「いいね!」
レンカはまた元気いっぱいになった。
「おいおいまじかよ。そういう場合じゃねな」
「別にいいじゃないか。兄さんも旧都に来たことないでしょ。邪魔にならないから」
「いいけどさ、やるべきことは忘れないで」
「もちろんのことなの!」
旅館から出て、紅蓮について行って、僕たちは葵姉さんの住所のある旧都の桜花町へ向かっていく。
旅館から出たところ、ある広い路地に着いた。
ここでは、夜中で八門の陣を作られた場所かな。
少し雰囲気が違う。
夜中には一人もいなかったのに、今は活気があふれて、賑やかな街に変わった。
もしかしたら、今回葵姉さんの誘いにも関係があるのか?
葵姉さんの安否を自らが確かめないとやはり不安だ。
落ち着けることができなくなってしまう。
正直、旧都に来る前、葵姉さんからのメッセージを受けた時、どのような状況なのかまったく把握できない。
ただ一つ。葵姉さんが助けを求めるのは確かなことだ。
しかし、それは別に急ぎのことではなさそう。
それより、他人に知らせたくないということのほうが、葵姉さんにとって重要性が高そうだ。
だったら、こっちもできるだけほかの人には知られないか。
でも今詩音の居場所がわからない。
詩音の行方と安否も重要だが、まあ、あいつは大丈夫だろう。
とりあえず今は紅蓮についていて、葵姉さんのところに行こう。
そういえば、この紙切れに書いてある住所は、一般的な住所の書き方ではなさそうだ。
ナビでは見つからない住所だ。
何かの暗号とか使っているのか。
「この住所はなぜナビでは探せないだろうかな?」
一応紅蓮に聞いてみた。
「それは、旧都ならではの住所の表記の書き方です。うん、多分旧都出身でなければ分からないでしょう」
「そっか。ありがとうな」
道理で詩音はこの紙切れに書いてある住所が分かる。
詩音は旧都出身だから。
少なくとも、彼女がそう言った。
…
改めて見ると、旧都の街並みはやはりきれいだ。




