17話 約束
「君!何をした!?」
できるだけ怒りを抑えて、狐面の少女に質問した。
この人を怒らせないために。
「さき、言ったはず。刻印の持ち主の同行者二名、転移させた」
「そんなこと、認めない!どこへ転移させたか?教えろ!」
「刻印の持ち主よ。我々の陣法に侵入した者とする立場から、もう否定してくれる資格はない。一つだけ教えてあげる」
我々っていうことは、もしかして目の前にいる狐面の少女は、何らかの組織の人なのか?
「実は、刻印の持ち主及びその同行者ではなければ、この八門の陣に入ると、出ることは不可能だ。もちろん、その場合はわれも助けてあげない。同行者のお二人はとりあえず安全なところに転移させた。ご安心を」
「助けなんて必要ない。先はもう少しで陣法が破壊できたから。それよりレンカたちはどこ?」
「おもしろいね。同行者のお二人は。一人は幽霊、もう一人は… うん…、あっ、あり得ることか?それ」
狐面の少女からの目線を感じた。
「どういうことかよ?まあいい、だったら僕をそこへ転移させてください。助けてくれるだろう。でないとこの場で八門の陣を破壊する」
「刻印の持ち主ならばこの鼎が破壊できるかもしれないが、でもよ、もしこの鼎が強引に破壊されたら、この八門の陣はすぐからになるよ」
「困陣、殺陣って何なんだ?」
「困陣はモノゴトを閉じ込める陣法。殺陣は、わかるでしょ。いきものを殲滅する陣法。何もかもすべて殺せる」
「それは本当なのか?」
「当然のこと。考えてみよう」
「どういうこと?」
「鼎が破壊されたら、幽霊や妖怪たちがこの陣法の中をあちこちうろついてることになる。これらの存在の怨恨によって、攻撃の行為がなくても、いきものには大きなダメージを与える。肉体的にも精神的にも」
「じゃなんでこんな陣法を作るか?君らは何者か?」
「なぜ、教えないといけないのか?刻印の持ち主よ、自分で考えて」
「こっちは君らのせいでめちゃくちゃになったじゃないか。まあいい、レンカたちの居場所を教えてくれればいい、自分で探すから。でないと…」
「でないと?」
「……」
「いいよ。でも、条件がある」
「何の条件?」
「今はまだ言えないが、ちょっとその刻印を借りる必要があること」
「どんなことまで分からない以上、約束するはずがないだろ」
「心配しないでください。難しいことではないから。当然、悪いことでもない」
「…ああ、一応、約束する」
狐面の少女のそのひらめきの姿に、僕のこころがさざ波が出たように惚れてしまったかもしれない。
思わず、その幻のお願いに約束した。




