12話 霊魂
おかしい。
百鬼夜行とはいえ、それらの妖怪や幽霊はどうしてその鼎に飛び込むのか?
わけ分からない。
ん?よく見ると、幽霊や妖怪たちは同じ方向から来たようだ。
もしかして、そこは…
「主、その鼎、なんか怪しいです」
「どういうこと?」
「その鼎には幽霊などを惹きつけるものがあるみたいです。妾まで惹きつけられたような感じがします」
いえ、違う。
鼎に飛び込むというより、鼎に吸い込まれるように見える。
「兄さん!助けて!苦しい!体が引っ張られてるの!」
この考えが浮かんできた途端に、レンカの助け求めの叫び声が聞こえた。
レンカはまるで誰かに引っ張られてるように、鼎のところへ向かっている。
だが、引っ張っている人がいない。幽霊さえもいない。
急いでレンカを抱きしめた。
これ以上、鼎のところに行かせないために。
もし、その鼎に近づいだら、大変なことが起こる気がする。
何か悪いことが起こる気がする。
「レンカ、大丈夫か?!」
「兄さん!体中から何か抜かれてる感じなの!」
よく見ると、レンカの体から何かの虚影のようなものが出てくる。
「主!レンカちゃんの魂は抜かれてますよ!」
詩音の声が僕の頭の中に直接に響いた。
なるほど!
ってことは、幽霊や妖怪と同じように、レンカの魂が鼎に吸い込まれそう。
僕の目の前に、レンカの魂がだんだん体から離れている。
このままでは大変!
っ!
霊魂のそこから抜かれている感じがした。
僕も、同じことになるのか?
何だかこのシーンを見たことがある。
「ああああああああああ!」
頭が痛い!
なんとなく昔は同じようなことを経験したことがある気がする。
レンカの霊魂…
僕の霊魂… 僕の霊力…
体から何かが抜かれている感じ。
魂なのか?
僕の体からも虚影のようなものが出てくる。
そこは、僕の魂なのか?
あれ?ではなんで僕の意識はまだこの体に存在する?
「主!妾も!」
体から抜かれている虚影は喋った。
そう、詩音だったのか。
僕の体から抜かれてくるのは、僕の魂ではなく、詩音だった。
なぜ僕だけが…
「兄さん…寒いの」
「安心しろ!絶対助けてやるから!」
「うん… 兄さんを、信じてるの…」
…今はそういうことを考える場合ではない!
レンカの身体がだんだん寒くなってきた。
初めてこの子に会った時、同じぐらいの寒さ。いえ、それ以上か。
どうやら全ての元凶がその鼎だ。
八門の陣の真ん中にある鼎を破壊すれば…
「詩音、まだ動けるよな」
「今はまだ何とか… 主!早くその鼎を…」
「レンカの幽体離脱は何とか抑えてくれ!頼む!」
「分かりました。主は…」
「僕はその鼎を破壊に行く!」




