10話 八門の陣
目の前に現れたのは、知らない広い場所だった。
満月の下、照らされている闇が追い散らされた。
いつの間にか、こんなところに来たか?
「詩音、ここはどこだと知ってる?」
「知りませんよ。この町にはこんなところがありますなんて…」
その真ん中には大きな鼎が置いてある。
それだけでなく、その鼎の周りには、それぞれ違う八つの方角に八つの図案が書いてある。
それは…八卦の図案?!
八卦図の真ん中に鼎を置いてあるのは、何のためだろうか?
何かの陣を張っているようだが…
この場所は、本当に現実に存在するのか?
信じられない。
「主、こ、これは、八門の陣です!」
「八門の陣?!」
「八門遁甲って知ってますよね」
「まさか…!ああ、知ってる」
それは、恐らく百年前、いえ、千年前、霊能者が目覚めるずっと前の話だった。
大昔、奇門遁甲という術式が存在したそうだ。
その中には、八門遁甲という技がある。
八門といえば、休門、生門、傷門、杜門、景門、死門、驚門、開門。
八門には陽遁と陰遁があり、開門、休門、生門、傷門は陽遁になり、杜門、景門、死門、驚門は陰遁になる。
この八門はそれぞれ違う方位を表している。
休門は北、生門は北東、傷門は東、杜門は南東、景門は南、死門は南西、驚門は西、開門は北西。
だが、これはただ、理想的な状態に過ぎない。
なぜなら、八門の方位は刻々変換しているから。
すなわち、八門の陣の付け方は年月日時によって変化する。
誰が何のためにこの陣を張ったのは知らないが、その中に迷い込んだら、出られなくなってしまった。
そして、先の死霊兵士が倒され、陣の正体が僕たちの目の前にバレた。
きっと誰かが陣を張り、八門の陣を利用し、人に言えない目的を実現させるだろう。
そして、この八門の陣が僕たちに何気なく入り込まれた。
もし、陣を張る者に気づかれたら、やばいことになる。
殺される恐れがある。
あるいは、永遠にこの陣に迷い込むことになる。
「レンカ、詩音。僕たちは一刻も早くここから脱出しないと」
「兄さん、分かったの」
「はい、主」
八門の陣から脱出するには、生門を見つけ出さないと…




