4話 旅館
葵姉さんの住所が書いてある紙切れを取り出して、もう一度確認する。
ここに書いてある住所はどこ?
旧都にはあまり詳しくない僕には、道が分かるはずがない。
ナビを使ってみたいが、この住所は分かりやすくない暗号ようなものだから、うまくできない。
とりあえず、旧都出身の詩音を頼んでみるか。
「詩音、起きてくれ!」
先に返事をしてくれるのは、詩音ではなく、隣のレンカだった。
「兄さん、またその幽霊を呼び出すの?最低!」
「そういうじゃねぇ。詩音に道を聞くだけさ」
「ちぇー、兄さんのこと知らないの」
「ごめん、レンカ。どうしたら僕を許すかい?」
「私と旧都を散策するなら…、許してあげてもいいよ」
「用事が終わったら、一緒に旧都を散策すればどう?」
「約束するの。兄さん」
「ああ、約束する」
詩音の霊体が急に現れる。
「主、もう旧都に着きましたか?」
「遅いな、詩音。もしかして寝坊したかい?」
「っ!ち、違います!そんなことありません」
「ずるい!きっと兄さんと私の会話をこっそりと聞いたでしょ」
「そんなつもりじゃ…、ごめんなさいね、レンカちゃん」
詩音は霊体がようやく現れた。
一般人には霊体が見えないが、僕とレンカは見える。
輪廻の刻印は目覚めて以来、何だか霊力のない僕にも幽霊が見えるようになった。
「幽霊さん、兄さんの体から離れてください」
「断らせてもらいます。妾はもう居場所がないですから」
「そんなこと、私には関係ないの。ただ兄さんを邪魔するやつは排除しないと」
「まあまあ、詩音はを助けてくれたことがあるから、とにかく落ち着いて!今は葵姉さんの住所を探すべきだ!」
「でも… 分かった。兄さん、ごめん」
「わかりました、主。その紙切れを見せてください」
「詩音、この住所は知ってる?」
葵姉さんの住所が書いてある紙切れを詩音に見せた。
「どれどれ…ん、妾も知らないです」
「今の顔…、嘘だ。何か知ってるだろう!」
「え、バレましたか。でも、もうすぐ日が暮れますよ。宿泊するところを探したほうがいいです」
「それは… 今は葵姉さんのところに行ったほうがいいと思うけど」
もともと葵姉さんを助けにこの旧都に来たから、そんな宿泊する暇がない。
「私も同感、ここではなんか夜になると悪いことがある、こんな予感がするの」
「レンカまで… まあいい、ホテルとか探そう」
二人に内訳を教えたほうがいいかもしれないが、レンカを心配させないために、内緒しておこう。
葵姉さんのほうはしばらく大丈夫だろう。
明日は必ず助けに行くから、待ってろ!葵姉さん。
…
結局、ホテルではなく、旅館に泊まることになった。
駅近くにある温泉旅館。




