6話 忍び寄るピンチ
…気のせいか。
それとも、誰かに狙われているのか。
あたりを見回し、怪しげな人はいないみたいだけど…
「レンカちゃん、何か変な気配を感じた?」
念のため、レンカちゃんに聞いてみた。
レンカちゃん霊力があるので、もし幽霊のような存在がいれば、感じられるはず。
いや、霊力の強い人には、幽霊だけでなく、霊力のある物事が近くにあれば、おそらく感知できる。
例えば、近くにほかの霊能者がいれば、その気配が感じられるかもしれない。
「…うーん、よく分からない。強かったり弱かったり、あったりなかったりするの」
レンカちゃんは困ったような顔をしている。
「…そっか。分かった」
やはり、近くに霊能者や霊などの存在がいるのか。
たまたまここにいるかもしれないが、警戒しなければいけない。
僕にはあまり価値のあるものがないはずなんだが…
もし誰かに狙われたら、目標とされたのは、僕じゃなく、この子のことか…。何と言っても、この子はかなり強い霊力を持っているはず。この子を知っている可能性もある。
……
家までしばらく歩いたところ、急にレンカちゃんが耳元で囁いてくれた。
「兄さん、先の霊が前にいるよ」
レンカちゃんは僕の袖を引っ張った。
あの霊はなぜここに…
何なら、あいつの後ろをついてみようか。
本来、あいつの目的については、正直、僕たちにはあまり関係がないはずだが…
「レンカちゃん、こっそりあいつの跡をつけてくれないかな」
「ホント?危ないかもよ」
「いいから、早く」
「…分かった。そんなことを兄さんひどいの…」
「何言ってるかよ。変な言い方すんな」
レンカちゃんは僕の手を引いて、あの霊にこっそりとついていく。
……
付いて歩いているうちに。
「兄さん、あの霊、いなくなったみたいの…」
「ナニッ!」
ここは…
あたりを見回して確かめた。
ここはスラムの辺鄙な所、廃工場の近くに。
まさか、あの霊を操る霊能者がここ近くにいるのか…
「レンカちゃん、もう一度確認してみてくれないかな」
「はい、兄さん。…うーん、やっぱりもういないみたい」
「あー、手がかりはまったくつかめなかった。仕方ない、帰ろうか」
…
家に帰ったらもう夕方になった。
今日は仕事してなかったが、いろいろあって疲れた。
特にレンカちゃんに心理的な負担をかけたくはない。
さて、この子をどうすればいいのか。正直、困った。
一族に連れて帰るわけにもいかないし。
突然、右手がかすかな光で輝いている。
なんだ?急に…
僕は右手の甲で輝いているこの青い光を見つめている。
「兄さん、なにしてるの~?その光は?」
「そうだ、レンカちゃん。逆五芒星みたいな刻印などのものを知っている?」
「それ?うーん、覚えがないけど…、何か大切なものなの?」
「いや、そういうわけじゃないんだが…」
レンカちゃんは青く光に包まれていたとき、右手の甲にある刻印も光っていた。この中には何か繋がりがあるはずだ。レンカちゃんは知っていると思ったが…。
何だか右手の刻印から輝く光がだんだん強くなってくる。
「兄さん、外に霊がいるの。しかも、霊力のある人もいるみたい」
「なんだと!」
…