32話 滅裂の剣
ドカーン!
ゴオォォー!
「大変です!我々の結界が…」
外から結界の爆発音と龍の叫び声が聞こえる。
「主、平気ですか?」
「レンカが…」
「彼女は大丈夫です。霊力を吸い取られて疲れすぎて寝ただけです」
「ああああああああああああ!!」
「主!もう!しっかりしてください!」
青い光が黒赤の光に飲み込まれた。
その黒赤の光が集まって、剣の形になった。
「それは、もしかして、滅裂の剣…ですか」
「そこの小娘、よく知ってますね」
「名前だけ聞いたことあるけど、なんで滅裂の剣っていいます?おかしいでしょ。って、誰か小娘ですよ!」
「小娘は小娘です。だってさ、エルフの司祭ーーセシリアまで、妾の後輩ですよ」
「ぐっ」
「その剣は、ん、滅裂の剣です。その名の通り、バラバラになっている剣ですが、なんと実体化しましたか」
…
左腕でレンカを抱きしめて、右手がレンカの手を放して、僕はその黒赤の剣を手に入れた。
剣を握った瞬間、右手の手のひらが強く燃やされているような感じがする。
それにもかかわらず、力に対する欲望で頭がいっぱいだ。
右手の刻印が僕の心音を聞き取ったように、眩しく光っている。
「殺す!!」
レンカを抱いたまま、矢のように結界の果てまで飛んでいく。
破壊された結界はバラバラになって、ガラスのように、欠片が飛び散る。
割れた結界の欠片が、封印の地のあちこちに飛び散っていく。
「セシリア!」
「司祭様!」
「そなた!よくできたじゃ。リリヌも。…し、詩音!なっ、なんでその女が今更じゃ」
青龍の霊が空をぐるぐる回っている。
「二宮君、輪廻の糸を吸収した!?それはわしのものだ!お前ら、まさかわしを勝てると思う?」
ゴオォォー!
あいつの守護霊である青龍の霊が狂っている。
「ああああああああああああ!!死ね!」
左腕でレンカを抱いているが、片手でその青龍の霊を殺してやる!
右手で剣を握って、目の前の青龍の霊を見据える。
レンカを抱いたまま、空を飛んでいく。
斬る!
キーン!
青龍の霊の爪と僕の剣とぶつかる。
剣の柄だけ残って、剣がバラバラになった…
ところが、ただ一瞬だけ、バラバラになった剣は欠片が自動的に集まって元に戻った。
おかげで、不思議な角度から斬ることができるようになった。
今度こそ、本気で敵の霊体を斬る!
斬っ!
青龍の霊の腹が僕の剣に斬られた。
ゴオォォー!
右手の刻印が剣を通して青龍の霊を飲み込んでいる。
青龍の霊の霊体が明らかに薄くなった。
刻印からの力が溢れてくる。
「ば、馬鹿な!その刻印は!どこで!?」
その長老の叫びを無視して、僕は殺戮の快感に落ちている。




