30話 回復した視力
頭が、痛い。
心が、痛い。
目が、痛い。
右手が、痛い。
輪廻の糸から感じられてきたヒリヒリする痛み。
本能的に右手を引っ込めようとするが…
手を引っ込めることができない。
動けない。
右手だけでなく、全身が動けなくなった。
この体、ボロボロになっている。
詩音の言った通り、この体は、この僕が、もうすぐ使い切るだろうか。
息がつまる。
輪廻の糸にしっかりと結びつけられたこの右手。
そこから変な力が流れ込んでくる。
霊力ではない。
確信できないが、
この輪廻の糸っていうやつは、命があるのか?
命があるように、糸は刻印に入り込んだ。
あまりにも痛い。
右手には燃やされているような痛みが感じられる。
輪廻の糸が右手に融合して、逆五芒星の刻印とは一つになった。
体が、割れそう…
右手から、全身まで、燃やされているような痛みが感じられる
…
目がまるで燃やされているような…
目玉が割れそうな痛みを感じた…
痛くて痛くて目を閉じた。
目を閉じても、痛みが止まらない。
苦しい。
霊視が、消された。
予想外なのは、この前は止められない霊視が強引に消された。
痛みがだんだん消え去った。
目を開けると、見えるようになった!
色彩が戻ってくれた。
霊視で見るものではなく、正真正銘、僕の目で見たもの。
目に映ったこの世界が、色とりどりの存在になった。
視力が、回復した!?
戻ってきた?
ような感じだが、なんか違う。
目に映ったものは、急に赤くなった。
熱い。
頭が熱い。
何かが浮かんできた。
笑顔。
レンカの笑顔。
頭の中に、レンカの笑顔が浮かんできた。
それは決して嬉しい顔ではなさそうだった。
涙がこぼれている。
苦しそうな笑顔。
切ない顔。
僕の意識の中に、レンカの姿がだんだん遠ざかる。
「兄さん、私のこと、忘れないで…」
…
目が、熱い。
涙が出でいる。
これは涙なのか?
血の匂いがする。
両目から、血が出ている。
涙、いや、血が止まらない。
止まらない。
目の前。
レンカから、目が離せなくなる。
「兄さん!め、目から、ち、血が出てるの!」




