29話 輪廻の紋様
ずたずた、ずたずた、ずたずた…
青龍の霊に攻撃され続ける結界がもうすぐ破壊されそうだ。
ガラスのように、裂け目が広がっていく。
「ここは任せて頂戴じゃ。そなたたち、早く輪廻の糸を取りに行くのじゃ」
「セシリア、何ならここで手伝ってあげようか?」
「気持ちだけは受け取ったが、輪廻の糸と共鳴できるのは、そなたが持ってる紋様だけじゃ」
「この刻印かよ?」
右手の刻印をセシリアに見せた。
「そうじゃ。それは輪廻の紋様なのじゃ」
「この刻印は、輪廻の紋様って呼ぶかよ」
「ほら、さっさと行きな。あ、それと、あの女にもよろしく。あのっ、詩音って女じゃ」
「…ああ、分かった」
…
この封印の地には、存在するものは一つしかない。
封印の地の真ん中には、大きな扉がある。
「その扉は、何千年経っても痕跡が残さなかったですよ」
リリヌがそう語った。
「何千年?妖精さん、ホントなの?」
「本当ですよ。レンカさん」
…
「お二人さん、準備はいいですか?」
リリヌは転移術を駆動しようとする。
「リリヌさん、準備オッケーなの」
「頼む!」
「それじゃ、行きますよ!」
…
「この場所は、この前言ったその紋様の元ですよ」
「ってことは、最初から僕らをここに連れてきてもらうつもり?」
「そういうことです。だって、これはアルフヘイムの伝説です」
「どんな伝説なの?気になるの」
「時間が惜しいですので、簡単に言うと、輪廻の紋様の持ち主が、アルフヘイムを救うという伝説です」
…
「人間!輪廻の紋様の持ち主よ。今ここで千年封印された輪廻の糸を与えます!」
「はい!輪廻の糸、受け取る!」
右手を上げて、手の甲をそこに向けている。
そこから、五つの糸が伸びってきた。
赤い糸。
おかしい。
僕は視力を失って、霊視を使っているはずなのに。
見たものはすべて白黒のはずなのに。
どうして、輪廻の糸が赤く見えるのか?
分からない。
確かその時、視力を失ったその時。
この竹林から映ってきた赤色を見た。
その後、視力を失った。
もしかして、ここに封印された輪廻の糸には関係があるのか?
赤い輪廻の糸が右手の甲まで伸びってきた。
右手の刻印が急に眩しく光り始めた。
逆五芒星の紋様が明らかになって、輪廻の糸との共鳴が始まった。
五つの赤い糸が、それぞれ逆五芒星の五つの角に接触してきた。
結びつけた。
刻印を繋いでいる輪廻の糸が、再び動き始めた。




