27話 休戦
レンカちゃんが喜びのあまり僕の胸に飛び込んだ。
「兄さん…」
温もりが感じれらる。
レンカちゃんから伝わってくる温もり。
「レンカちゃん!大丈夫か?ごめん… 僕が…」
「ううん、兄さんは謝らなくてもいいの。私、分かってるよ。兄さんが頑張ってきたから」
襟が濡れた。
溢れ出す涙が、僕の襟を濡らした。
レンカちゃんのこぼれる涙だ。
「レンカさんの言った通り、悪いのは司祭様でしょ」
リリヌがそばに不機嫌そうな声で囁いた。
「リリヌ、何を言っておるじゃ?」
「何でもないで~す」
「確認しとくが、封印の地に侵入したやつはそなたたちの仲間じゃの?」
セシリアは僕に見てくる。
「侵入された?!誰に?ここに来てるのは、レンカちゃんと僕、二人だけだぞ」
「知らないということじゃ?」
「当然だ。知ってるわけないだろ!」
僕に抱きしめられているレンカちゃんは少し震えている。
「あの女はどこに隠れたのじゃ?」
「誰?詩音のことか?…彼女は再び眠りに落ちった」
「ずるいやつっ… その話は後じゃ!リリヌ、もう一度結界の構築に協力してくれるのじゃ!」
「かしこまりました!司祭様」
「そなたたち、協力してもらうとは求めないが、今は休戦してもらえるじゃのか?」
「はい、はい。分かったよ」
…
封印の地。
ここは現実なのか?
封印の地は巨大な竹の頂上にあるはずだが、ここはそうには見えないところだ。
ここは、あまりにも広い。
広くて広くて、果てがない。
ここの地面には、踏んだ度に波紋をえがく。
接触すると、輪を描いて広がる波の模様。
「侵入者!よくもわがエルフの封印の地に侵入したじゃの!許せない!」
「何の封印の地だ。そのぐらいもんか」
「なんだって!くッ、どうやって結界を破壊したのじゃ?」
「それは二宮君を感謝しないとな。おかけでわしがここまで入り込んできたな。ハハハ」
その声は、霊視を教えてくれたあの長老。
一族の長老だったあの人。
間違いない。
なぜ、あの人はここに?
あの人が、セシリアが言っていた侵入者ってことか?!
「どうことなのだ!?わけわからん」
「その霊視使いやすいだろう。実はわしがそれを利用して、アルフヘイムの結界の弱点を見つけた」
「そなた…」
「その霊視が使われるあの瞬間から、汝の目に映ったものがわしは全部見える。おかげで結界の隙間だけでなく、アルフヘイムの様子も大体把握できたな」
「…僕は、ただの道具で、利用されたのか…?嘘だ!あり得ない。僕は何も…してなかった…許せない!」
信じられない。
霊視をもらったあの時から、僕はすでに道具になった。
いや、おそらくもっと前から、僕の取った行動は、やつらの計画通りだろうか…




