25話 妖精の道
その時、後から霊力を駆動される感じが伝わってくる。
「主の体、いただきます!」
聞き覚えのある話。
体の支配権がすでに奪われてしまった僕は、この前のことを思い出した。
そう、レンカちゃんは霊力暴走のあの時、同じような言葉を告げてくれた。
それは、何のおまじないってことか…
分からない。
詩音はもう一度僕の体に戻った。
鳥籠から逃げ出したので、霊力の制限も解除されたのだろう。
「詩音、早く外へ逃げよう!」
この審判の間から、一刻も早く脱出したい。
早くレンカちゃんに会いたい。
「主、その壁に何か裏があるみたいです!」
詩音が僕の手を勝手に前へ伸ばした。
僕の右手の人差し指が、先セシリアが消えた場所へ指している。
何だよ!これっ。
「おいおい、僕の体におかしいことしないでくれ!」
「へへ、これはサービスですよ。元々は説明なしで行動を取りますけれど」
「そう、あ、ありがとな」
「主は礼を言わなくてもいいです」
…
僕と詩音は二人で、ではなく、もし他人から見れば僕一人の身体だけです。
あっという間に階段の上に着いた。
ここは、先ほど司祭のセシリアが消えた場所。
だが、この先は壁しかない。
一体、どうやって、どこへ行ってしまったのか?
「この審判の間から脱出する方法はあるかい?」
詩音は今まで通り、僕の考えを知って、返事してくれた。
「妖精の道… みたいです」
「妖精の道って、何だい?」
「妖精は自身の領域での転移スキルってことです。一般的にはレベルの高いエルフしか使えないです」
「それより、どうやってここから逃げ出せる?」
「今はセシリアが霊力を駆動する痕跡を沿って行ってみましょう!」
「できるのか?」
「うん、多分出来ますよ」
「多分って… まあ、僕はどうすればいい?」
「主は心の準備をしておけばいいですよ」
「心の準備?…ちょっと!僕を殺す気か?!」
僕は詩音に操られて、目の前の壁へぶつかっていく。
壁にぶつかるかと思ったら…
身体がまるごとこの壁を通り抜けた。
…
廊下?
壁を通り抜けた後、目に映ったのは、不思議そうな廊下だ。
「ここは…?」
「ここはセシリアが使った霊能術の痕跡です」
「この廊下は…痕跡?」
「そうです。どうやらここは現実に存在しない空間です」
「君はとっくに知ったのか?ここの秘密」
「大昔のことです。あの時、妾にはまだ体があります…」
「ストップ!その話は後だ!まずはここから脱出すべき」
「もう、主は根気がないですね。いいですわ。この回廊に沿って行けば外へ出られますよ。この幻の回廊に」




