23話 その手を
「このケージ、霊体にも効くのです!」
「君も脱出できないってことかよ?」
「霊力を吸収する術が中断された以上、霊体の妾には難しいですね」
「じゃ、もう一度僕の体に!頼む!早くレンカちゃんと合流しないと、レンカちゃんが危ないかも!」
「だめです。こんな頻繁に憑依されたら、主の体は耐えられないです」
「今はやるしかない!レンカちゃんがきっと僕を待ってるから!」
「主がそう言うなら、やってみましょう」
「ああ、頼むぞ!」
詩音は何度も僕にぶつかってきて、僕の体に入ろうとするが…
うまくできないようだ。
「だめっ、主の体に戻れないです。どうやらこの魂のゲージはスキルを無効化させる能力があるようです」
「じゃどうすれば… レンカちゃんを守らなきゃ… そう約束したのに…」
「セシリアを待つしかありませんね。…そんな目で見ないで、冗談ですよ。今は、主自身の力しか頼れないようです」
「僕の力?でも、僕には何の特殊な能力はない…」
「うむ、主は一応身体がありますから、なんとか…」
「素手でこの鳥籠を壊すってこと?無理だろ!」
「試しで妾の霊力を主の体に少しだけ注入してみますか?」
「いいけど、君は大丈夫かな。先から何度も霊術を使っただろ」
「妾は大丈夫です!むしろ主のほうが…」
「うん?」
「…何でもないです!」
「僕に何か隠してることはあるかい?」
「今はそういう場合ではないです!さて、霊力を注入しますね」
「は、はい」
冷たい。
詩音はその手で僕の額に当てて、霊力を注入しようとする。
その手が、冷たい。
霊体のはずなのに、なんだか詩音を体温が感じられる。
…
暖かい。
先の冷たい感触は、暖かくなってきた。
霊力が流れてくる… そのはずだったがのに…
あつっ!
詩音が急いで手を離れた。
だが、額が感じた熱さは減っていない。
詩音の手も霊力の反噬を受けたようだ。
「妾の手が、熱いです!主の額には何かの霊術をかけられました?!」
「そんなことはないはずだが… そうだ、今は霊視を使ってる!視力を失ったから… 使わないと見えない」
「道理で主の体に憑依する時、なんか違和感をありました」
「見えなくなるわけじゃなくて、ただの違和感?」
「そうです。主の体に憑依して、五感の一つーー視力を借りる時、何かのものに遮断されました。うまく憑依できてないということは原因だと思いましたのに」
「じゃその時、どうやって見えるかい?」
「妾自身の目をしか使わかったです。そのせいで、力も充分に使えません」
「それより、その手、大丈夫か?霊力の反噬を受けたその手」
思わず詩音に手を伸ばして、その手を握ろうとする。
「どうして…ですか?」
霊体のはずなのに、触れないはずだったのに…
その手を握った。
僕の右手で、霊体である詩音の手を握った。
その時、右手の暗くなった刻印は、再び光ってきた。




