22話 鳥籠
「ずるいのじゃ!気が狂った者たち、よくも我が村の霊力を!」
見える。
その瞳は怒りに満ちている。
エルフの司祭たる者、セシリアはそれなりに尊厳を持っているだろう。
詩音とセシリアの過去については、僕は知らないが…
一体どんな過去があったのだろう。
気になる。
…
この時、天井から光が差し込んでくる。
僅かな光だが。
もしかして、夜が明けたのか?
そもそも、この審判の間という空間は、現実に存在する場所なのか?
天井から差し込んでくる白い光のおかげで、審判の間はどういう空間だと、大体把握できた。
ここはホールのような広い部屋だ。
審判の間にいるセシリアは、エルフの翼を激しく震わせている。
その足は床には立っていない。
床から一定の高さを離れて、宙に浮かんでいる。
急に、ガラスが割れた音が聞こえた。
耳が、痛っ!
「また新たな侵入者じゃのか?!」
セシリアは慌ただしくなりそうに細かい動きをしている。
「主、心の準備をしておきましょ。セシリアの技が来ますよ」
果たして、数秒後、数えきれないほどの荊棘が地面から出てくる。
今度は幻術ではなさそうだ。
本物の荊棘が、僕の身の周りに咲いてくる。
眩しい日差しと伴い、荊棘がどんどん伸びていく。
やがて、荊棘が僕の頭から少し上のところまで伸びて、重なるようになっている。
つまり、周りの荊棘が大きな鳥籠になって、僕を閉じ込めた。
そして、荊棘に、薔薇が咲いている。
鳥籠が構築されて、僕が閉じ込められた瞬間。
詩音が僕の体を通して行われている術は、強引に中断されたみたい。
霊力の吸収は中断された。
吸収したばかりの不安定な霊力が体から外へ滲み出ると。
僕はそう感じている。
「これが、魂のゲージですか」
詩音の霊体が僕の体から出て、荊棘の鳥籠を通り抜けようとする。
だが、上手くできないようだ。
「そんな禁固の術を使いますなんて、どうするつもりですの?」
詩音の声から怒りが聞こえた。
「申し訳ないのじゃ。ほかの侵入者が潜り込んできてるみたいじゃから、君たちとの勝負は後にするのじゃ」
セシリアがそう言って、階段の上に消えた。
…
「詩音、この鳥籠が破壊できるかい?」
体を取り戻した僕は、自由を奪われた…




