20話 目覚め!画霊
詩音のおかげで、司祭の幻術は破られた。
「お久しぶりです、主。そっちも、お久しぶりです、セシリア、今はエルフの司祭ですか」
先と同じように、僕の体が詩音に操られて、詩音の声は僕の口から出てきた。
おい、これは何なんだよ。僕の体をかえしてくれ!
そう言いたいけど、体が操られている状態では、僕は話すことさえできない…
そういえば、この二人、互いに知っているのか?
「主の考えてることは分かりますよ。今は少し待ってて、後で説明しますから」
質問しようとする僕は詩音に止められた。
いや、そもそも操られている状態では、話そうとしても話せない。
驚いた顔をする司祭ーーセシリアは、不思議そうな声で叫んだ。
「そ、その声は、あり得ない!き、君、死んだはずじゃ?!」
「残念ですよね。妾はまだ生きてますよ」
「ち、違うのじゃ!今君の形では、生きるとは言えないのじゃ!」
「そうですね。霊体だけ残ってますけれど…」
詩音が僕の体から抜け出して、霊体の形で浮かんでいる。
初めて会った時と比べたら、霊体が濃く見える。
天使のような画霊の女の子は、まとっている白装束の下、真っ白な肌がちらりと見える。
その長い黒髪が彼女の動きによって、なびいている。
彼女は、まるで煉獄のそこから生まれ変わって、数えきれないほどの試練を経って、ここに辿り着いた天使のようだ。
僕の見た白黒のこの世界に、ほんの少しの慰めを与えてくれた。
…気がついたら、異常を感じた。
ようやく体を取り戻した僕は、全身の力が入らない。
「詩音、僕に何をした?!」
「主、勘違いしないでください。敵はそっちですよ。」
「じゃ何で僕の力が抜けたかよ?」
「もー、主のバカ!そいつの幻術を破れたのは誰のおかげ?代償としてちょっと力を吸い込んだだけです」
「それは… そうだけど…」
「お二人さん、雑談はそこまでなのじゃ。いくら昔の君はどんなに強くても、霊体だけじゃ無理じゃろう」
「フフ、どうでしょう」
詩音は再び僕の体に戻ろうとする。
「だめだ!やめっ」
「ちょっと体を貸してもらうだけですけれど。いいじゃないですか?どうせ主のその体がもうボロボロになっちゃいましたよね」
「僕の体がボロボロ?ちゃんとした身体じゃないかい?」
「フフ、いずれ分かりますよ」
「何が…?」
「そのボロボロな体は、霊体にとって宿りやすいところですよ」
「確か君は僕に取り憑く時、同じようなことを言ったよな」
「そうですね。主は意外にそんなにバカじゃなさそうですか」
「じゃ・か・ら… お二人さん、雑談はやめてください。まったく、緊張感はないのじゃ」
「ごめんなさいね、セシリア。つい… 主、体をちょっと貸してもらいますね」
「おい、ちょっ…」
詩音は僕の異議を無視して、無理矢理僕の体に戻った。




