16話 アルフヘイム
僕の見た白黒の世界で、灰色の世界で、目に映った非常識なもの。
この世界の光景には見えない。
思いも付かない巨大な竹が、目の前に、竹林の中にある。
巨大なビルのような一本の竹が、まるで竹林の王様のように立っている。
その高さについては、少なくとも僕は頂上が見えない。
しかも霊視状態では、その巨大な竹は強い霊力の光が眩しく光っている。
それだけではなさそうだ。
その一本の竹の周りに、たくさんの小さな竹で橋のような支柱が一定の高さごとに設置されている。
それぞれの支柱にはいくつかの小さな木屋が建てられている。
「ここは…」
そんな不思議そうな光景を見たら、疑惑を抱く僕はリリヌのほうに振り向いた。
「ここは私の村ーーアルフヘイムなのよ」
「その大きな竹はなんだ?」
「失礼ですね。こちらは我々エルフの神の竹ですよ。聖名はアルフヘイムのバンブーです」
「レンカちゃん、竹林に入る前、中にこんな大きな竹があるだっけ?」
「ううん、確か…ないと思うの」
「エルフの結界のおかげで、外の人はここの状況はわからないよ。もちろん、このアルフヘイムのこともバレてないな。多分…」
「結界はリリヌさんが作ったじゃないの?なのに…」
「そうだ。なんか迷ってるみたいだな」
「えっと、エルフの結界は私が作ったことって、一言も言ってないよ」
「えっ、そうなの~」
「はぁ、確かに言ってないみたいだが…」
「とりあえず、私の家で1晩休みましょうか?空も暗くなってきましたから」
「良かったの!リリヌさん!よろしくっ」
無防備すぎるだろ!
「キミは?」
「…じゃ、よろしく頼む」
「よし、決まりね。私についてきてね」
…突然、そのアルフヘイムのバンブーという巨大な竹から直接に魂までのような声が聞こえてきた。
「侵入者ども、大人しくしろ!」
その声と伴って、僕とレンカちゃんは衛兵みたいな人、ではないか、衛兵みたいな妖精たちに捕まった…
「司祭様、侵入者2名、確保しました!」
「うん、よろしい。」
「おい!間違えたんだろう!僕らが侵入者じゃない!」
大声を叫んだが、その神の竹から聞こえてくる司祭という妖精の声は、返事をしてくれなかった。
「兄さん… 怖いの。どうすれば…」
「心配するな!僕はなんとかするから、今は落ち着け!」
「司祭様、一体何が起こったのですか?この二人は悪い人ではないですよ!」
リリヌが庇ってくれてみたが。
「その二人が結界を通り抜けた。それは許されざる罪だ」
妖精の司祭は容赦なく判断したようだ。
「…けど」
「もういい!その二人を牢獄の間に投げ込め!」
「はい!司祭様」
僕とレンカちゃんは、司祭の命令に従う衛兵たちに引致された。
…




