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14話 噂の妖精

「…兄さん」


辛そうな顔をしているレンカちゃん。


白髪が風に吹かれて少し乱れているレンカちゃん。


見つめてくるキラキラの瞳。


鈴を転がすような澄んだ声。


僕の見た灰色の世界に、ほんの少しの色彩を与えてくれた。


「レンカちゃん、体調は?」


「私は、大丈夫…」 


「大丈夫なわけがないだろ。ここで少し休めば?」


「空が、暗くなってきたの。早く行かなきゃ」


「そっか。こっちの状態ではあんまり見にくいけど… とにかく、君の体調は優先的だ。この竹林は相当な広さがありそうだから、先の駅に一旦戻ろう!」


「ううん、いいの。私なんかより、兄さんのほうが… 私なんてどうでもいいの」


レンカちゃんの言葉には、絶望がある。


「そんな言い方、僕は認めんぞ!」


目の前にいるヒト、この手で守らないと。


これができなければ、前へ進むことさえ意味がなくなる。


僕は、決めた。


レンカちゃんの過去を探し出すことにした。


例えそれは辛くて暗いことだとしても…


今までずっと逃げてきたのだ。


一族のやつらにいじられていた時も… 家から逃げ出した時も…


なんだか失ってしまったものがあるような心。


心の影は、だんだん広がってきた。


だが、レンカちゃんに出会った頃から、心の欠片を一つ見つけ出した。


そうだ。これは妹からの贈り物だ。


なぜ僕の妹と名乗っているのが分からないが、間違いなくそれに近い存在。


レンカちゃんは今、頼れる人は僕しかいない。


僕が守らなきゃ。


しかし、今でも、心を満たすには探さなければいけないことがある。


それは、レンカちゃんの過去だが、僕の過去とも言えるのだろう。


なんだか昔からすでに繋がっているような気がする。


といっても、僕はそのような記憶がない。


レンカちゃんに詳しいことを聞きたいが、これ以上刺激したら霊力の暴走どころか、精神的ダメージを受けさせることまで…


だったら、自分の手で探し出してみせる!


レンカちゃんを抱き上げて、竹林の道を沿って帰っていくことにした。


そんなつもりだったが…



「あなたたち、よくも我々の結界を通り抜けましたのね」


後ろから女の子の空っぽな声が耳に入った。


まるで耳で聞いたのではなく、直接頭に入ったような声。


「あっ、キレイな人」


「フフ、可愛い子ですね」


レンカちゃんの褒め言葉に、その声の持ち主は軽く微笑んだのが聞こえた。


振り向いたら、確かにきれいな女の子がいた。


視界が灰色になっている僕にも、その美しさが感られる。


えっ、なんと背中には翼がある!この女の子はもしかして噂の妖精ということか?

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