13話 竹林の道
竹林の道にて、僕とレンカちゃんが二人で歩いている。
しばらく歩いたら、強くて青い光が僕の霊視の中に映った。
「兄さん、前に大きな壁があるの。霊力の壁みたい」
「ああ、見えたぞ」
それは恐らくこの竹林の結界の一つだ。
僕が先にその結界を越えてみようとするが、万が一のために、レンカちゃんを後ろに下がらせた。
まずは結界の属性を確かめよう。
左手を挙げて、人差し指一本でこの霊力の壁に触ってみた。
まるで本物の壁に触ったような感触だった。
どうやらこれは防御用の霊力結界のようだ。
ってことは、人に通させられないことか。
これじゃここを通り過ぎることはなかなか難しいそうだ。
結界に触ったところ、霊視状態のまま、右手から眩しい光が見えてくる。
「兄さんの右手が…」
レンカちゃんが左手で僕の右手を絡めてきて、霊力の壁へ手を伸ばす。
なんと、この結界を通り抜けている。
僕とレンカちゃん、繋いでいる二人の手。
手を始めて、腕、体まで、僕たちは霊力の結界を通り抜けた。
「どうして君は知っているかい?結界を通り抜ける方法を」
「…なんとなく、結界が兄さんの刻印と何らかの繋がりがあるみたいなの」
…
霊視というスキルのおかげで、僕は一応これからの道が分かるようになったが、光景がぼんやりするのはもちろん、いままでの視覚というものとはまったく異なるのだ。そう、具体的に言えば、灰色の世界だ。白黒の世界とも言えるだろうが。
僕の見た世界は、灰色になった。
それに、ここは竹林だが、僕が見えたのは竹だけでなく、魂のような霊力の形だ。
ってことは、ここの竹には霊力が宿っている。
レンカちゃんも見えるだろう。
「そういえばさ、あの長老のことを知ってるか?」
「ううん、ただあの声聞き覚えがあるみたいけど、嫌な思い出なの」
「僕に会う前のことだったか?」
「ううん、それは兄さんと別れてからの話なの」
「別れるって、この前会ってからずっと一緒じゃない?」
「ううん、違う。昔のことだったの。まだ子供の頃の話だったの」
「子供の頃?会ったことがあるか?」
「何言ってんの?私達は兄弟なのよ。会うどころか、一緒に暮らしたこともあるの」
「そ、そっか。じゃ、その後なぜ離れたのか?」
「あの時は…。こ、怖い…」
見える。レンカちゃんの霊力が、波動しているように見える。
「レンカちゃん!大丈夫か?」
それは感情的な動揺ではなさそうで、霊力の波動のはずだ。
「…怖い、闇が…。お願い!もうこれ以上…」
「やはり無理か」
このままじゃヤバそう。
右手の刻印で抑えてみるか。あの時みたいに。
でも、どうやって刻印を活かせるのか?
一応、レンカちゃんの額へ右手を伸ばしてみる。
すると、刻印が眩しく光って、レンカちゃんの霊力は安定状態に戻った。
…




