7話 列車強盗
獣の列車は駅に到着した。
この駅は終点駅だから、列車はここにしばらく止まるはず。
ちょうどいい、このような列車の正体を見張っていこう。
レンカちゃんは僕と一緒に列車に乗った。
「兄さん、ちょっと前に行ってみたい」
「いいよ、僕も付いて行く」
列車の先端の窓から前へ、レンカちゃんが見つめている。
「兄さん、なんか違うのー」
「ん?どういうことかい?」
「前に二匹の霊がいるのー」
レンカちゃんの指が列車の先端部分の前のところへ差している。
よく見ると、そこに確かに獣の霊がいる。少し薄く見えるが。
しかし、別におかしいことではない。
獣の列車であれば、獣の霊がいるのも何の問題はない。
「霊が引く列車だから、霊がいるのは当然だろう」
「…でも」
「心配するな。僕たちだけが乗るわけじゃないし」
「別に、怖くなんてないよ」
…
他におかしいと思うことはあるのだろう。
例えば、運転士がいないということ。列車内に。
そう、どうやらこの列車は獣の霊だけで運行しているようだ。
「あっ」
突然、列車が動き始めた。
レンカちゃんは足が滑って、転んでしまいそうな時。僕は急いで前に出てレンカちゃんを支えた。
「兄さん、ありがとう」
「礼を言うな。君は一応僕の妹なんだからさ」
「もうー、一応ってなんなのよ。妹は妹なのー」
「はいはい」
…
列車が発車する時、なんと知らせがないとは思わなかった。
とにかく席に座ろうか。
って、僕とレンカちゃん以外、一人しか乗っていないのか。この列車は2両編成で、乗客が少ないが、こういうことになるとは思わなかった。
レンカちゃんは慌てて近くの席に座ったが、僕もそのまま隣の席に座っていることになった…
「ゴーゴー~」
レンカちゃんはなんか興味津々だな。
…結局、この列車に乗る人は僕とレンカちゃんを含めて、三人しかいない。
その乗客は、全身真っ黒な格好をしている男の人だ。僕の向かい側の席に座っている。
だが、その男はこっちに見てない。列車の先端部分、すなわち獣の霊のいるところへ見ているようだ。
…
そういえば、僕はなんと獣の霊が見える。ちょっと薄く見えるだけだが…
僕は霊力がないので、霊を見るのは不可能なはずだが。
あの時レンカちゃんの霊力暴走による影響か、それとも、僕の体の中に眠っている詩音という画霊の女の子のおかげか…
そう思った時、僕がもう一度列車の前へ見ると、つい気付いたんだ。
この列車を引いている獣の霊が縛られているのは首ではなく、直接獣の霊の本体から、霊の糸を抜き出され、列車に繋がられる。これで列車を引くことが可能になる。
どうやらこの二匹の獣の霊は、ある動物の霊というわけではない。いくつかの大きな動物の霊で合成され、作り出されたより強い霊ということ。
これが霊能術においては禁忌だが、霊能者一族のある偉いさんが強引に実験を行ったようだ。
…
ドカン、ドカーンッ!
不意打ちの爆発音が僕の回想を切れた。
気がついた時、何人かの人が列車の窓から飛び入った。
「我々は強盗だ!大人しくお金をよこせ!財物をよこせ!」
と、僕たちはそう命令された。




