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3話 名字を失ったこの子


「兄さん、朝だよ、起きてー」


少女の声が耳に入り、起こされた僕はやむをえず目が覚めた。


目が覚めたら、可憐な少女が傍にいる。


その目が、灯りのように瞬きしている。


なぜか、白髪の少女はじっと僕を見つめている。


僕は立ち上がり、改めて少女を姿を見た。


一見、少女には何も変わらないように見えるんだが…


まさか、夜中のことは夢だったのか。


だけど、刻印をもらったことは確かなことだが…


「兄さん、おはよう!っちょ、じろじろ見ないでよ。恥ずかしいから!」


「おはよう、どうやら元気になったみたいだな」


「兄さんのおかげなの。久しぶりに兄さんに会えて、とても安心した」


「そっか、よかったじゃないか。って、君の兄さんじゃないよ。僕は」


「でも、兄さんは、私の兄さんなのよ。生まれてからずっと、私の兄さん… 兄さんは私のもの、私だけのもの」


「怖い、なんか怖い。でも…」


そういうの嫌いじゃない。


「私のこと、怖い?」


目の前にいる少女は首を傾げて、聞いてくれた。


「そういうわけじゃない… 怖いなんかじゃないよ。むしろ可愛いなぁと思って…」


「やっぱり兄さんは私のこと好きだよね」


「まぁ、可愛い子だからさ」


「結局、可愛い女の子だったら誰でもいいの?」


「そ、そりゃ… なんか君に親切感を感じるよ」


「だって、妹だもん!」


「だからっ… まあいいか…」


なんか夜中に少女を包まれていた青い光が気になる。


「そ、そうだ!君、夜中に光ってただろう。それ、どういうこと?」


うとうとしながらそれとなく聞く。


「光ってた?知らないけどー」


少女は僕をじっと見つめ、真面目そうに答えてくれた。


実は、それより、この少女の身元はもっと気にする。


そういうところから手をつけるしかないだろうか…


「まあいいや。っていうか、君の名前は?」


「忘れちゃったの?妹の名前」


「そりゃ、忘れたっていうより、もともと妹なんていないっていったほうが正しいだろう」


「またそんなことを言う~」


少女は口をとがらす。


恥ずかしく感じられ、僕は少女の視線を避けたら、僕の右手の甲に気付いた。


そうだ、確か、右手の甲も刻印が現れて光っていた。夢かどうか分からないけど…


ふとあの仮面を被っていたやつの言ったことを思い出した。


この子はこの刻印とは何か繋がりがあるのか。


どうしてその光に包まれている時、この刻印も同時に光っていた?


よく見たら、いま右手の甲には刻印が現れていなく、特に変わりはないけど…


そういえば、あの仮面のやつからもらってから、この刻印は昨日の夜まで現れることは一度もなかったが、その用途がずっと見つからなかった。


確か、あの仮面のやつはレンカっていう名前を言ったが…


「…レンカ?」


「はい~、どうしたの?兄さん」


「…君は、レンカっていうのか?」


「うん、やっと思い出したの?」


「…いや、たまたまこの名前聞いたことあるけど…」


この子は本当に僕と何か繋がりがあるのか。


「そんな…」


「じゃ、名字は?」


「みょう、じ?そんな覚えは、ない…」


「やぁ、妹っていえば、僕の名字と同じはずじゃないか」


「みょうじ、ないよ。レンカちゃんって呼んで」


レンカという名の少女が不満げな顔をする。


「そういえばさ、家まで送ってあげようか?どこに住んでるのか?」


雰囲気を和らげるために早速話をそらした。


「……家、嫌だ…、…怖い、真っ暗な、闇…」


目の前のレンカちゃんは急に怖そうに縮こまっており、膝を抱え、体がぶるぶる震えている。


「そ、その、別に帰らせるわけじゃないから…、ちょっと聞いただけ、と、とにかく、落ち着いて…」


慰めるのが苦手な僕は、レンカちゃんをどうやって慰めたらいいのだろうか、まったく分からない。すごく困って焦っている。もしこの子の頭を撫でたら…役に立てるのか…レンカちゃんは頭なでなでされるのが好きなのか…


でも、どうしてこの子は家という言葉にこんなに大きな反応があるのか。もしかしたら、何か事情があるのだろうか…


幸いに、しばらくして、レンカちゃんはだんだん落ち着いた。


「レンカちゃん、平気平気。これからずっと僕の傍にいてもいいんだ。」


かっこつける僕は、それが未来の自分を後悔させるかもしれない一言だと思わなかった…


「嬉しい~」


レンカちゃんの気持ちが晴れそうになった。



「これからバイトに行くから、おとなしく家で待ってくれてもいいかな」


「兄さん…行かないで。私を離さないで、一人にしないで… 怖いの、また一人になって、また離れて、嫌、絶対嫌なの!」


「困ったな。これからバイトに行かなきゃ」


「兄さんがどこへ行っても私はついていくの」


「仕方ないよな。僕と一緒にバイト先の花屋さんに寄ってく?気分転換とするほかに、ちょうど休みを取ることについて店長さんに言っとかないと」


「それはいいね。言っとくけど、兄さんは私だけのものよ。私も、兄さんだけのもの。もう逃げられないから」


「はいはい、分かった。じゃ、行こうか」


「…待って、兄さん、…行きたいーーー」


レンカちゃんは変な顔をしている。


「どこへ?」


「トイレ行きたい~!」


「……」



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