9話 微妙な変化
「おい、やめろ!」
「やっぱり、主の体には住みやすく感じます」
画霊の女の子が直接脳内に語りかける。
「僕の体を何としているのかよ!」
「今から主の体に慣れる必要があります。そのために、妾はもうすぐ眠りに陥りますから、邪魔しないでほしいです」
「おい、勝手に決めるな!」
「主の体ほど住みやすい体に会ったことがないですね」
「っち、何やってるんだ!」
体が熱い!熱い!熱い!
体は燃えそう。燃えるほど熱い!
「心配しないでください。それは正常な現象です」
「これはどこが正常かよ!」
「主の体の中に住ませてもらうことは、普通の憑依とは違いますから、安心してください。それに、妾は主の助けになるかもしれませんよ。…さて、これからしばらく休眠します」
「いつ目が覚めるか?」
「本気で妾に助けを求める時まで眠ります」
「…君の名前は?」
「…詩音…」
突然、まわりの光景がぼやけてしまった…
…
ここは、アパートの部屋?現実に戻ったのか。
「兄さん、どうしたの?頭いっぱい汗をかいているよ。」
僕はレンカちゃんに見向きし、慌てて質問する。
「レンカちゃん、さっきからどのくらい経ったのか?」
「さっき?さっきっていつ?」
「僕が気を失った後…」
「変な質問なの。兄さんは別に気を失わなかったよ」
「そんな…ばかな…」
「ホントなの。ただ急に汗をかいてたように見えるけど…」
問い方を変えようか。
「じゃ、さっき…だよね。レンカと二人で遊びに行くっていう約束してから、どのくらい経った?」
「…十数秒か?多分…」
「まじかっ」
「兄さん、なにかあったの?」
「いや、何でもないよ。心配するな」
ありえない。絵の世界でこんな長い時間を過ごしていたのに、現実の時間は現実の時間は完全に流れていなかった…
もしかしたら、二つの世界の時間の流れは異なるということか。
そうだ!さっきの画霊――詩音は?僕に憑依している?
「詩音?」
一応詩音ちゃんに声をかけてみたが、返事はない。
本当に眠っているのか。それとも、先のことは全て幻象なのか。
「シ、オンって誰なの?女の子?兄さんの知り合った女の子は多いね。」
「え、えっと、そうじゃなくて、きっと空耳だよな、空耳」
「もう!兄さんってば… 別に責めているわけじゃないの」
「ハハ、そっか、そっか。って、この絵に何か変化があるときづいたか」
「へん、か… へんかって、この絵の霊力が消えたみたい… っえええええええ!絵の女の子は?!」
レンカちゃんの話を聞くと、急いでその絵を見てみた。




