7話 画霊の女の子
そのもう一人の僕は、寝ているレンカちゃんをお姫様だっこしている。
彼がそのまま僕に後ろを向けてたたずんでいた。
もしかすると、ここは幻の世界ではなく、想い出の世界なのか。
だからこそ、母が見える、もう一人の僕が見えるのだ。
でも、ここの光景は僕の思い出とは食い違っている。
最も明らかなのは、あの二階の収納部屋が女の子の部屋になってしまった。
それに、今目の前にお姫様だっこされているレンカちゃん。そのレンカちゃんは本物か?
では、そのもう一人の僕は…
幻の世界だったら、彼も僕が見えないはず。
思いがけないのは、突然彼は後ろ振り返って、怪しげに笑ってくれた。
「お、お前は、何者だ?!」
目の前のその顔――何度も鏡に映った時現れる顔を見ると、非常に気分が悪い。その怪しげな微笑にも気味悪い。僕は急に心細くなってしまった。
「レンカはどうした!ここは、どこ?」
彼はゆっくり立てひざをついて、レンカちゃんを傍らの芝生にのろのろと置いた。
「僕は二宮朔夜、ここは僕の家。」
その彼――もう一人の僕は表情を表に出さないまま答えてくれた。
「レンカはただ寝ているだけ。」
「クソ、この偽物!!レンカに何をした?!レンカ!」
声の限り叫んだ。しかし、レンカちゃんが少しも動かない。
「お前、今自分のことを心配したほうがいいぞ。」
そう言った後、彼が稲妻のようなスピードで打ってくる。
やりつけた技…
僕はその鋒鋩を避けるため、跳ね退ける。
本当にもう一人の僕と戦うのか?なんか変な感じがして…
そして、まだ反応ができていないうちに、またげんこつが飛んでくる。
痛っっ!!
ボディーを打たれ、口から水が噴き出した。
これ以上耐えられない!
そういう相手に、後ろを見せるわけにいかないだろう!
体勢を立て直し、こぶしを握りしめる。
攻撃を避け続け、反撃し、二の矢三の矢を放つ。
「ああああああああーーーーーーーーーー!!」
なぜだ?!
彼を攻撃する度に、僕の体は同じ程度の痛みを受ける。
目の前にいるもう一人の僕は、本物の僕?
じゃ僕は誰…?
もうどうでもいい、レンカちゃんを助け出すためなら何でもやるから。
絶対レンカちゃんを助けて見せる。
痛みと苦しみを堪え忍び、一撃で勝負しよう!
こういう場合は…
全身の力を込め、相手に体当たりをくらわす!
僕の体の前に風で形成された巨大な風の刃は、体当たりをくわせると伴い、その偽物の体を切り刻んだ。
偽物の体は煙になって空に上がっていった…
これで終わったかな…
おかしい、僕はどうして怪我をしなかったのか?
やはり瞬殺するしかなかったか。
…
「レンカ!無事か!って、君は、誰?」
寝ていた女の子が立ち上がった。でも、その女の子はレンカちゃんではない。今目の前にいるその子は、もらったばかりのあの絵に描かれている女の子だ。
「さっきのは、やはり君の仕業か。」
正体を見せてくれる以上、本気でやるつもりか。
この時、女の子は僕に言ってくれた。
「妾はこの絵の画霊でございます。主は今この絵の世界にいらっしゃいます。」




