2話 骨董屋
「兄さん?どうしたの?早く行こうよ」
「あっ、ああ…。何でもない。行こうか」
レンカちゃんと二人で洋服屋に入ったら、店員さんが迎えてきた。
「いらっしゃいませ」
と店員さんに声をかけられて、僕は返事した。
「こんにちは」
「こ、こんにちは…」
そしてレンカちゃんは僕の後ろで小さい声であいさつした…
この女性向けの洋服屋に興味のない僕は、どこかよそに行ってみたくなってしまった。特にさっき見かけた新しくオープンしたアンティーク店に行ってみたい。
店内を見回し、服を選んでいる葵姉が見つけた。
「葵姉さん、レンカのことはしばらく任せるよ」
「え、どうしたの?なにかあったの?」
「少し気になる場所があってさ、ちょっと見に行ってくる」
「もうー、早く戻ってきてよ。朔夜君」
「兄さん、どこへ?」
レンカちゃんは僕の服の裾を引っ張っている。
「もしかして兄さんが私を捨てる気?嫌なのよ!」
「さっきのところにある骨董屋に行ってみただけだ。心配しないでくれ」
「一人にしないで…」
なぜか分からないが、彼女の目には涙があふれてきた。
「急にどうしたんかい?」
「…怖い、もうあんなことを体験したくないの…、もうあんな思いはしたくないの…」
…何事を?
「安心して、そんなことは起こらないよ」
「本当に見っともないわ」
葵姉さんに言われて、会話は中断された。
「では、また後でな」
キメ顔でそう言って、僕は逃げるように洋服屋を出ていった。
…
なんか既視感がある、さっきのシーン。
ちょっと離れるに過ぎないのに…
昏睡状態に陥った時見たあの夢のためか。でも、レンカちゃんは…?
あの子はいったいどんなことを経験したか。
……
この骨董屋の前の場所にはほとんど人がいない、このあたりと鮮やかなコントラス。
店の前から店の中を覗くと、中には人はいないようだ。
骨董屋では役に立てるものがいくつか見つけられるかもしれないので、ときどき辺りの骨董屋に行ってみた。
この新しくオープンした骨董屋にも入ってみたいのは当然だろう。
この骨董屋では時の狭間の存在が感じられるみたいだ。
だが、店にそろっている品物は意外に少ない。
残念なことに、この大きくない骨董屋には役に立てるものはあまりなかったけど…
骨董屋を出て行くところ、壁には掛けてある1枚の絵に気付いた。




