13話 「ねぇ、兄さんの体、頂戴」
これは――
刻印のきらめきとともに、レンカちゃんの苦しさは少し軽くなったようだ。
間もなくその青い光も弱くなり、星のようにキラキラまわりで輝いている。
もしかして、この刻印は霊力の暴走を止められる?
でも、それだけのようだ。特別な力なんて、何でも手に入らない。
って、今こういう場合じゃない。なぜかというと、僕の体が動けなくなった。
っち、やられたのか。
目の前のおっさんはもうだんだん体調が立ち直るように見える。
殺意を帯び,ゆっくりと、歩いてくる。
僕はもう、できないのか…
この時、右手の刻印が強く光っている。この強烈な青い光とともに…
「…ねぇ、兄さんの体、頂戴…」
急に頭の中に、こういう声が響いた。
レンカちゃんの声?!
振り返って見ようと思ったが、頭さえ動けない。聞きたいと思ったが、口もきけない。
そして、僕の体が勝手に動き始めた… まるで誰かに体を操られている感覚…
なんだ!?何で体が…
「兄さん、大丈夫。私がいるから。」
再び頭の中に響いたレンカちゃんの声。
この言葉に従って、思わず体に対する支配を諦めた。とは言っても、すでに支配できなくなった。
僕の行動に応じるように、体内に妙な力が湧いてきた。
これは、霊力?
いや、違う。似たようなものだが、これは霊力じゃない。
「こうなった以上、お前らを始末するしかないな。」
おっさんはそう言いながら、野獣のように襲い掛かってくる。
「ガオー!!」
その鳴き声に伴い、おっさんの身の前に現れたライオンのゴーストが視界に飛び込んでくる。
僕は、このまま死ぬのか?
…こう思った時、僕の右手が勝手に、いや、操られているように前に手を伸ばし、手のひらを広げて…
僕はすでに死を迎える準備ができた…
「がおー!!!」
予想通り…じゃない!
目の前に、そのライオンのゴーストが、なんとその場に止まって動かなくなった。
いや、動かないじゃなく、動けないのだ。
そのゴーストの攻撃で、周りに大量の煙が出来ている。
よく見たら、そいつが僕の右手に押されている。そんな…バカな!しかも、右手には何の感覚もない。
「兄さん、一緒に、害虫を駆除してね。」
今度は、レンカちゃんの声は頭の中に響かなく、耳元で囁いたように聞こえた。
感じられる。後ろからレンカちゃんに抱きしめられている。
だけど、抱きしめられているのは、体じゃなく、心だ。
僕の体が、完全にレンカちゃんに操られ、支配された…




