第三話:自己紹介怖い
「さぁ、自己紹介するぞー! 席順にな!」
入学式が終わり、教室に戻って来た私達。
自己紹介が始まる……。1番苦手な奴だ……。
「よーし、まずは先生からな。下崎康裕だ」
「せんせー、彼女居るんですかー?」
新年度あるあるの先生に彼女聞くやつね、知ってる知ってる。
またシナだよ……、と隣のシユカから聞こえてくる。
「居ないぞ、悪いか!」
先生のこの言葉でクラスに笑いが起こる。
流石2次元。あの4人以外は皆良い人だ。
……私もこんな毛嫌いしてるんだから悪い人かもしれないけど……。
「蒼井翠希です。宜しく御願いします」
爽やかに微笑む新入生代表者。
イケメンだ。周りの女子が騒いでる。主にあの4人。
「神宮寺柚! 女の子の髪弄るの得意なんだー!」
「東雲麗音です。……えっと、人と喋るのはあんまり得意ではありません……」
学はる名物カップルのユズリオ……。もう大好き、結婚しろ。
さっき見掛けた時サインねだりそうだった、危ない危ない……。
「白石聖奈です。……絵を描くのが好きです」
うっわ、あの4人から笑い声聞こえるよ。
でも私気にしないよ、いい子だから。…………すいません。
苛ついたのかシユカが勢い良く立ち上がってこう言った。
「鹿田紫優香。セナに手ェ出したら……ね?」
うん、普通に怖いよ。シユカ怒らせたらアウトだからうん。
静かになったなぁ……。弱い、と感じたのは此処だけの話。
勿論、オフレコで。
「私は貝塚紫娜! フリーなので彼氏募集中でーす!」
初っ端の自己紹介でぶっ飛んだ発言をしますね貴方は。
皆苦笑いしてますよ。
「セナ、君はこのクラスだったら誰と付き合いたい?」
……はい? 何でそんな事聞くんすか……。
「僕が本体に戻るには君の恋を叶えなきゃいけないからね」
何故!? というか、皆好きだし……、それに恋愛的にはいきなりは見れない……。
「じゃあ、セナが最推しだったミヅキはどう?」
どう? って聞かれましても……。
あんなモテモテの人好きになったら辛いだけでは?
「大丈夫でしょ。向こうにもセナの事好きになって貰うから」
あのねぇ……、只の冴えないオタクを彼女にしたいって思う人は余程の物好きしか居ないと思うけど!?
悲しい事言わせんなよ……。
「そう? 少なくとも僕はセナの良い所沢山知ってるよ、恋人にしたいくらいにね」
相手はからかう様に笑いながらそう言ってくる。
……というかからかわれている……。
じゃあ……
「よし、これで全員終わったな、今日はもう帰って良いぞ。明日からは授業や部活についてやるからな」
「っ、私……何考えて……」
一言小さく呟く。
じゃあ、グリムが私の恋人になってよ。
……なんて……。