第二話:入学式は暇ですね
「やばいやばいっ……!リオン様がユズ様が居る……っ」
教室に入室した後、1人で興奮しながら他人には見えないグリムとの携帯上の会話をする。
「セナは何時も楽しそうだよね。でも、漫画の中のキャラだけじゃないのがこの世界の面白い所さ」
「セナぁあ!」
「えっ!?シユカ!?」
「良かったぁ……そのマスクで分かったよぉ……。セナが居なかったら私もう生きてけなかった……」
「成程、あのゲームの中には鹿田紫優香も参加してたんだね」
グリムは私が言ってない事まで全てを知っている謎。
此処で私がシユカの目の前でグリムに話し掛けたらアウトだ……。
「セナ、この学校って桜ヶ丘だよね……? 私、次元超えちゃったの……?」
シユカ、震えてる……。
やっぱりいきなりこんな所連れてこられて怖かったよね。辛かったよね。
どうにか……シユカを帰せる方法を…………。
「最高じゃん! ずっとずっと来たかった学はるの世界だよ!? ……これであいつらが居なきゃ最高だったんだけど」
最後だけ嫌そうな顔をしながらも言葉は私の望む事を言っていた。
……流石親友だよね。
「ほら、噂をすればなんとやら」
気配を察知したのか何なのか勢い良くドアが開く。
「何か知らない所来ちゃったのかなぁ?」
「さぁねー。何にしろ綺麗な校舎だしイケメン居るしオールオッケー!」
「それもそうだね!」
「何かあれば紫娜ちゃんに頼めば解決しちゃうね!」
仲良く話しながら入室。私達を見掛けた途端、鼻で笑う4人。
私から直々に一言……苛つく。
まぁ、直接的なイジメとかはされてないから良いんだけど。
「貝塚紫娜、宮入雅、赤井麗沙、安芸胡桃……の4人ね。何でそんな人達が人狼ゲームしてんのさ……」
面倒臭そうにそう呟く彼に携帯のメモ欄で返す。
『知らないよ……どうにか出来ない?』
相手からの返事は少し間があった。
それでもしっかり返してくれる。
「そうだな、あと数十分でチャイムが鳴る。それをズラして全員を体育館に行かせるのはどう?」
『それだ』
気がついたら私達は体育館に行く為、整列をした。
入学式が行われたが大してやる事は無い。
新入生代表挨拶だけ真剣に聞いたけどね。
「あぁ、そうか。ミヅキだもんね」
「入試1位の蒼井翠希様だわ……」
「凄い……。美形で勉強も出来るのね……」
「聞いた話だと剣道で全国……らしいわ」
……とまぁ、作品中のモブとか漫画と同じ軸に乗っ取って居るんだが……なかなか入学式はつまらない……。
というか普通なら此処で主人公が聞いてるんだけど……男性なら親友に、女性なら恋人になる為のルートが用意されている筈……。
でも、それらしき人物は見当たらない。
「そりゃそうでしょ。君の世界なのに君の分身が居たら可笑しいし」
でも、主人公と親友になるとかそういうイベント起こしてもいいじゃん!
……私の為の世界ならその夢も叶うかもしれないけどね。
というか今更だけど心の中読むのやめてくれない?
「安心して。君が僕に話し掛けてるのしか聞いてないから」
それ、聞こうと思えば聞けるって事じゃん……。
「……では、新入生の皆さんは教室に戻り、説明を聞いて下さい」
そう教師から言われ、1年は全員起立。
先ほどまで居た教室へ戻っていった。