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セラピー犬

作者: ミュウ吉

最近では老人専門の診療所もあるようです。

 正式な名前はセラピードッグと言うらしいのだけれど。どうも食い意地の張っていたころの名残でこの名前だとどうしても食べ物を想像してしまうのであえてセラピー犬とさせて頂きました。


 外出もほとんどせず、隠遁生活を送っている私だけれど高齢の身内を抱えていると全く外出しないわけにもいかないのです。


 母を新しくできた診療所に連れて行った時にこの犬に遭遇したのです。どうも癒しの効果が望めると言うことらしいのね。そもそも訓練された犬なんて盲導犬も見たことがないのだけれど、癒し効果のために特別に訓練された犬らしいのです。しかし盲導犬、警察犬はともかくこれはどのように訓練するのだろう。


 とにかく愛くるしいことこの上ない。本当にぬいぐるみよ。私は精巧なロボットなのではないかと思ってしまった。黒い瞳で見つめられて顔をペロペロされると、いや癒される癒されること。


 これはね、姿良し頭良し性格良しと非の打ちどころがなかった今は亡き飼い猫のミュウ吉だってこのような偉業は成し遂げられないだろう。


 でもミュウ吉は私のことしか考えなかった。私の為だけに生きていた。ところがこれを言うと家族から大反撃に合う。みんなそれぞれ自分が一番だと思っているのだ。そう考えると家族が揃っているときは高いところに登ってガンとして降りてこなかったような気がする。考えてやっていたとすればそれはそれですごいことではないか。


 話を戻そう。セラピー犬は鳴かない。鳴かないと言われると向田邦子さんのアパートの一室でライオンを飼っていた男の人の話を思い出してしまう。これ実話です。そんな時代もあったのですよ。


 病気をした後性格がひねくれたので、この子を抱っこして他の人に聞かれないように小さな声で言ってみた。「私の前では鳴いていいんだよ」


 黒い瞳で私をみつめてひたすら私の顔を舐めるだけだった。ああ、これは強制的にしつけられたのでも、訓練の賜物でもないんだなと思った。ひたすら私のひねくれた心を癒そうとしている。


 本当に頭が下がります。


 ところでこの子、私には他の人に比べて態度が違っているような気がしたのだけれど気のせいかしら。


全く医療機関らしくない快適な空間でした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 犬は善い! [一言] 私も愛犬をセラピードッグ(温かいドッグです。熱くはありません)にしようと考えていました。 誰にも吼えない、鳴かない、悪さをしない。それに、されるがままにしていられ…
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