本心!? 長老の野望!
ついに明かされる、長老の陰謀とは!?
テトラと結婚するのは自分だと長老は言う。初めは冗談かと思ったが、違う。その目は本気だ。
「小僧も見たじゃろぅ? テトラの治癒士としての才能は本物じゃ。こんな片田舎の小さい村でくすぶるより、都会へ出て技術を磨けば、必ずや相当な実力を身につけるじゃろう。その時、テトラの隣にいるのはワシじゃ。
ワシは治癒士テトラの夫となり、その治癒魔法の効力で永遠の若さを手に入れるのじゃ。テトラには、それを成すだけの素質がある。こんな惨めな老いぼれの姿など懲り懲りじゃわい。
ワシは全財産を叩いてでもテトラと結婚し、再び全盛期のような若々しい肉体と精神を手に入れるのじゃ。そうなれば、年の差などないも同然なのじゃ」
……なるほど。要するに、このジジイはテトラを利用しようとしてるのか。若さを手に入れるため、テトラの治癒士としての力を利用する。ただそれだけのために。テトラが望むかどうかなど関係なしに、長老は画策しているのだ。
――なんだよ、正真正銘のクソ野郎じゃねえか。
「……お断りします」
「なんじゃと!?」
長老は明らかにうろたえている。
「さっきまで、僕はテトラさんと決闘する意志は希薄でした……でもたった今、事情が変わりました」
「どういうことじゃ!?」
「あなたにテトラさんを渡すわけにはいかない」
僕は言い放った。長老は今にも激昂しそうな様子で、残り少ない歯をカチカチ鳴らした。
「なぜなんじゃ!? 前金が足らないか!? なら300万ジュエル出そう! そのあと、ワシとテトラが正式に結婚してから900万ジュエル出す! 合計1200万ジュエル! ワシの全財産じゃ! 頼む! これで手打ちにしてくれぇ!」
「どんな条件を提示されようと、引き受けるつもりはありません」
断言すると、長老は土下座して禿げた頭を地面に擦りつけた。
「こんな老いぼれにここまでさせるかぁ! じゃがいとわん! ワシはいとわんぞ! 恥! 外聞! 全てかなぐり捨てて懇願するのじゃ! ワシは若さがほしい! テトラがほしい! 頼む! 哀れなジジイの余生に、僅かばかりの希望と自由をぉ!」
「いい加減にしろ!」
僕は怒鳴った……先に激昂してしまったのは、どうやら僕だ。
「テトラはあんたの私利私欲を満たすための道具じゃない! 自分の意思を……テトラだけの自由を持ってるんだ! それを踏みにじるような真似は、誰にも許されない!」
僕は叫びながら、一つの決心を固めた。
「あんたの企みは僕が阻止する――戦ってやる。僕はテトラと決闘する。テトラを、あんたみたいな奴の好きにさせるわけにはいかないんだよ!」
僕は息も絶え絶えになっていた。ここまで叫んだのは……怒ったのは、随分と久しぶりだ。長老は顔を上げ、立ち上がった。
長老は笑っていた。それは悪意のこもった笑みではなく、どこか満足げだ。
「――よくぞ言うたのぅ」
「え?」
一体どういうことだ?
次回、長老の真意が語られる――!
現在、同時進行で連載中の『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』という別作品もありますので、こちらもよろしければどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/