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宣戦布告

 ついにカレン編も佳境です。

 僕はデビッド学園で異世界学園生活をスタートした。ルームメートのカレンは、クラスのキザ貴族のフェザーにガールフレンドになれと言われるが、これを拒否する。

 カレンと、そして仲裁に入った僕も、フェザーとその取り巻きガールズにロックオンされてしまった。どうなる、僕の異世界学園生活――。


 そんなカレンが、一緒にお風呂に入ってデレてから数日が経った。僕は相変わらずフェザーたちに一方的な暴行に等しき待遇を受けていた。

 『格闘術』の授業ではボコボコにぶちのめされ、『念動魔法』の授業では隙あらば僕の体の自由を奪って見世物にされた。

 反撃したいのは山々だけれど、相手は圧倒的な数でやってくるから、反抗したところで多勢に無勢だ。それに、僕は『格闘術』や『念動魔法』はもちろん、『自己回復魔法』など他のあらゆる授業でも、かなり成績が悪いのだ。


 『格闘術』は一向に上達しないし、『念動魔法』ではこの前やっと誰も座ってない椅子を数ミリだけ動かせた。『自己回復魔法』は抜いた髪の毛1本すら回復させられないし、『肉体強化魔法』と『感覚鈍化魔法』も、全く修得できる兆しが見えない。カレンが親身になって教えてくれる『護身術』さえも、落第点ギリギリという崖っぷちなのだ。

 唯一、『輝望皇』の授業だけは順調だ。女神の力『ホープ・ライト』は今までに比べ格段に使いこなせるし、戦闘の幅を広げる新たな応用も利いてきて、他の授業にも回したいくらいの好調ぶりである。


「でもユキオ、あんた本当にヤバいよ」


 カレンが僕の机に教科書をドサッと置き、言った。


「授業全体の半分以上が最低評価――このままだと留年だよ」

「りゅりゅりゅ、留年ー!?」


 聞きたくない! 僕は聞きたくないぞ、そんな言葉! 僕は現実逃避して、両耳を塞いだ。


「こら」


 しかし、それをカレンがこじ開けてしまう。


「しかも多分、このままじゃ挽回は出来ないよ。期間的にも、最低評価を覆せるくらい大きな採点の場がないし。こうなったら――」


 カレンは口をつぐんだ。フェザーが僕たちの方へ近づいてきたのだ。


「カレンさん。まだそんな落ちこぼれのクズに構ってあげてるのかい? 優しいなあ。けれどナンセンスだ。キミが優しさを向ける相手は彼じゃない、ボクだ。キミの優しさはボクが独り占めにしてあげるよ。だから、そんなゴミになど手を差し伸べる必要はないんだよ」

「ウチらに話しかけないで」


 カレンは強気だった。しかし、それでもフェザーは怯まない。


「まったく、物好きなんだな、キミは……まあ、いいさ。なら、そのクズを絶望のどん底に叩き落とした後で、キミをボクのモノにするとしよう」


 フェザーは陰湿な笑い声をあげ、僕に視線を移した。


「バカなキミは知らないだろうが、近々この学園で生徒たちが実際に戦闘して、成績に最後の項目の数字を埋める『デモ・バトル・カーニバル』――通称DBCが開かれる」

「DBC……?」

「そこで、正式にキミとの決闘を申し込むよ。DBCでの決闘は、成績で他のあらゆる授業よりも重視される『実戦』の評価をつけると同時に、通常の決闘の規則も適用されるんだ」

「通常の規則……?」

「そう。主に現代では、強制的に相手と婚約の誓いを結ぶ用途が多い決闘だけれど、決闘とは本来、負かした相手に無条件で何かを命令できるという、男の名誉と威信をかけた戦いの場だった」

「名誉と威信……?」

「つまり、対決して負けた方は、勝った方の言うことを何でも聞くってことさ」

「なっ、何でも……?」

「キミにとっても悪い話ではないだろう? どうだい、乗るかい?」


 フェザーはニタリと笑って僕に問う。それは、自分の勝利を確信し切っている顔だ。けれど、好都合だ。危ない賭けだけれど、これで勝てば、カレンにつきまとわせないようにすることが出来る。


「いいだろう……受けて立つよ」

「ククク……予想した通り、キミは正真正銘の大バカだ。この賭けにキミが勝つ可能性はゼロだ。どの教科でもボクに勝てないキミが、決闘で勝てるわけがないんだよ。キミは今この瞬間、カレンさんの目の前で無様に敗北し、あげく留年するという史上最低の末路を辿ることが決定したってことなんだよ!」


 僕は、あえて何も言い返さなかった。


「安心してよ。キミがいない教室で、ボクとカレンさんはキミのことなんかサッパリ忘れ、最良の夫と妻として愛し合うんだからさぁ……クッハハハ!」


 フェザーは声高に笑って去った。隣で、カレンは申し訳なさそうに僕を見ていた。


「ごめん……全部ウチが――」

「これはチャンスだよ」


 僕はカレンの言葉を遮った――この決闘、もちろんカレンのためというのもあるけど、それだけじゃない。


「DBC――デモ・バトル・カーニバルで、僕は勝ってみせる。勝てば今の成績でも留年を回避できるかもしれない。フェザーに勝てばカレンも救えるし、一石二鳥だ」


 僕は決意した――これまでは成り行きだったり、あるいは何かを守るために戦ってきた。これもまた、カレンを守るための戦いだけれど。

 今回は、勝つために戦う。

 カレン編の決着をつける時が迫って参りました。


 同時連載中の『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』もよろしくどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/

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