デビッド学園
デイビッドにするかデビッドにするか迷いました。
テトラ、アンナ、マリアの3人は、それぞれ新たな生活をスタートさせていた。僕もこの異世界の住人として適応すべく――そして邪神リョウゼンとの決戦に備えるべく――デビッド学園への入学を決意した。
デビッド学園は6つのロールの観念に縛られない授業体制が特徴で、僕もその『広く浅く』精神が気に入って、入学を志望したというわけだ。
僕は学園に連絡を入れ、輝望皇である証拠に空へ閃光を打ち上げると、早々に面接を行うことを約束された。やっぱり、女神の力って万能だわ。
そして当日。僕はデビッド学園へ赴いた。敷地は広くて、学生の雰囲気もいい感じだ。面接の日時と一緒に聞いた、学園長室のある棟に入る。10階建ての巨大施設だ。
そして僕は学園長室に辿り着き、ドアをノックした。
「いらっしゃい」
女性の声が言った――連絡した時に聞いたよりも、なんだか大人の色気が伝わってくるようだった。
「失礼します」
僕は中へ入って一礼した。顔を上げると、背が高くスタイル抜群の美女が立っていた。服は結構大胆で、足や太ももがモロに見えてしまう。部屋の照明と窓から射す陽光が反射して、とても艶美だ。
「あら、あなたが現代の輝望皇――タジマ ユキオくん?」
「は、はいっ、そうです……」
「ふーん……声の感じより可愛いのね」
「はい?」
僕、可愛いなんて言われたことないんだけど。『くん』付けしてるから、少なくとも男だってことは分かってるはずだけど。
「改めまして、私はデビッド学園の学園長ジーンよ。早速だけど面接を始めるわね。掛けて頂戴」
「はい、失礼します」
僕は学園長のデスクの対面に置かれた椅子に座った。
「まず、このデビッド学園を志望した理由を聞かせてもらえるかしら?」
「はい。貴学ではロールの概念に縛られない、柔軟な授業形態が特徴であり、個々人が最も自分の望む能力を得られる、非常に高い自由度のカリキュラムを組めます。僕は、そのシステムにとても親和性を感じ、貴学への入学を志望した次第です」
「それは、つまりこの学園が器用貧乏な人材ではなく、どんな相性の敵にも臨機応変に対抗して確実に勝利できる人材を求めているということなんだけれど、それも理解しているわね?」
「はい。僕は輝望皇として、必ず邪神リョウゼンを倒さなければなりません。そのために、デビッド学園のポリシーは最適だと思うんです」
「そう……可愛い上に芯がガッチリしてるのね。好きよ、そういうコ」
「あの……僕、あんまり可愛くはないと思いますけれど……」
「あらそう?」
学園長は意外そうに聞き返した。僕が頷くと、少し何か考えるように黙りこくって、それから微かに笑みを溢してから、彼女は続けた。
「ところで……彼女さんはいるのかしら?」
「え?」
突拍子もない質問だ――面接と関係あるのか?
「えーっと……彼女というか、妻が3人……」
「あら、既婚なの! しかも、その若さで3人なんて……モテモテねぇ」
「いや、なんというか……成り行きだったり偶然が重なったりしてこうなったわけで――」
「いいわぁ……私も、あなたと結婚してみたいわぁ……」
「え!?」
学園長は長い足をデスクの上で組んだ。艶かしいラインが、まるで僕の視線を吸い込むようだ……。
「その若さで3人……相当イイのね、あなた……」
「あの……『イイ』とは……」
「イケないわぁ……あなたのこと、欲しくなっちゃった……」
ヤバい。これ絶対に面接がどこかへ行っている。顔が真っ赤っ赤になっているのが自分でもよく分かる。今なら火とか吹けそうだ。
破裂してしまいそうになって俯いていると、急に学園長が笑い出した。
「そういうウブなところが可愛いって言ったのよ、おませさん」
なんだ……冗談、だったのか?
「でも確かに、この学園は近隣の各ロール専門学校に入学できなかった人が代わりに入ってくるケースも多いし、色々なタイプの敵を想定した訓練が出来るのは強みね――いいわ、合格。あなたは今から、デビッド学園の学生よ」
学園長は引き出しから色々な書類を渡してくれた。諸々の費用、選択できる授業の一覧、学園の地図などだ。
「明日から授業にも参加してもらうわ。配属するクラスや寮の部屋は、明日の全日程が終了した後に教えるから、とりあえず荷物を持って、またここへ早めに来てちょうだい」
「は……はい!」
「入学おめでとう」
やったあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
転校生――ありがち!
同時連載中の『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』もよろしくどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/




